年長なのに毎朝登園で泣く子ども。小学校が心配です【高濱正伸】

年長なのに毎朝登園で泣く子ども。小学校が心配です【高濱正伸】

2021.08.03

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

【お悩み】毎朝、保育園でのお別れで泣き叫ぶ6歳。小学生になったら登校拒否になる?

6歳男児のママ
6歳男児のママ

現在年長ですが、一年ほど前からほぼ毎朝登園拒否をします。どれだけ気持ちよく起きられても、家を出るまで機嫌がよくても、保育園の前についた途端スイッチが入ったかのように嫌がります。

時間があるときは「今日は帰ったら何して遊ぶ?」「保育園でどんなことするかな?」など5分ほど会話するのですが、それで気持ちが切り替わるわけでもなく、別れ際に「まだお話あるのに!」と泣いて先生に連れていかれます。

保育園の先生には「自分で気持ちを切り替えられなかったら、預かっちゃいます」と言ってもらっているのですが、乳児の頃ならまだしも、年長ともなると逃げまわる子どもを追いかけるだけでタイムリミットに。毎日のことなので慣れたとはいえ、泣き叫ぶ我が子を見ると、後ろ髪をひかれます。

園に入ってしばらくすると、けろっとしていて楽しく過ごしているようですし、帰り際には「まだ帰りたくない!」と言うこともあるので、保育園が嫌いなわけではないようです。家庭では私も夫も甘やかしすぎな自覚があるので、それが原因なのかも?などと思います。

来年は小学生になり、自分で家を出て、自分の足で登校しなければならないのに、今この状態で大丈夫か……と今から登校拒否が心配です。なんとか今年中に自分で気持ちを切り替えられるようになってほしいです。


【高濱先生の回答】子どもはママの不安を感じ取って心配になっているだけ

これは保育園あるあるですね。通常は年少で入っても半年くらい経つと泣かなくなり、ニコニコして通うようになるので、年長になっても行き渋りが続くことはあまりありません。今回の相談者さんのお子さんは6歳ですから、きょうだいが生まれるなどの環境の変化があったか、親の気持ちを感じ取って別れるのを嫌がっているパターンが考えられます。

特に幼児期の子どもの心とお母さんの心はテレパシーのように通じ合い、共鳴しています。お母さんがニコニコなら子どももニコニコになるし、不安なら子どももそれを敏感に感じ、同じように不安になります。

つまり、お子さんは本当は安心してお別れしたいのに、お母さんが過剰に心配しているのを察知して、(お母さんの)心が不安なまま離れ離れになるのがとても嫌なんですね。

お母さんが子どもを心配しているつもりが、逆に子どもに心配されているともいえますね。

「このままだと小学校で登校拒否になってしまうのではないか」とのことですが、お母さん自身の根本的な不安が癒えなければ、その可能性もないとはいえません。

たとえば、「親がずっと自分のことを心配している」と感じている子よりも、「親は絶対に無条件で自分のことを信じてくれている」と思える子のほうが、長期間、親元を離れる留学や進学といった大きなチャレンジができるものなのです。

そう考えると、相談者さんのお子さんは0歳からずっとではなく、コロナ禍になってからの行き渋りで、行けばけろっとしているなら、ある種の強い部分はちゃんと育っています。親側は動じず、どんと構えて預けましょう。

そのためにはお母さん自身が変わらなければいけません。

今、「子どもと大きな愛情をもってつながっている」と安心できていますか?

パートナーでも友だちもいいので、親身に話を聞いてもらったり、「大丈夫だよ」と言ってもらったり、いつもがんばっていることを認めてもらい、肩を抱いてもらうような時間を持つようにしましょう。

働いているお母さんの場合、子どもと一緒にいられる時間が少ないことが原因と考えがちですが、お子さんの対応はしっかりされているので、無理に子どもとの時間を増やす必要はありません。

たいていの子どもは、一日5分でもお母さんとくっついてしっかり話ができれば、残りの23時間55分はがんばり抜けるもの。逆に、すべて子ども中心というお母さんは肩に力が入りすぎて、子どもは居心地が悪くなってしまいます。

私の経験上、お母さんが登園時に「大丈夫?」「行けないの?」とあれこれ手をつくすほど行き渋りは長引ききます。チヤホヤされて、真剣に構ってもらえる時間が嬉しくてそうしているパターンもありますからね。

親として寂しい気持ちもあるかもしれませんが、元気に「いってらっしゃい!」と言い、すっきりとお別れしたほうが子どもは安心してくれますよ。

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1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数
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