【アメリカ留学】伝統と革新が融合した「Fay School」

【アメリカ留学】伝統と革新が融合した「Fay School」

フリーランス教育コンサルタントの萩原麻友さんが、短期・長期で小学生から入学できる世界各国の学校をセレクトする「世界の学校ガイド」。インターナショナルスクールやボーディングスクール、国際バカロレア認定校など、グローバルな環境に身を置いて子どもに学んでほしいと思う保護者に向け、特徴的なカリキュラムや費用などをご紹介します。第1回は、アメリカのFay School(フェイスクール)です。

全米のみならず世界中の保護者が競うようにして我が子を通わせたがる、アメリカの小中一貫校をご存知でしょうか。

アメリカ・マサチューセッツ州にあるフェイ・スクール(Fay School, 以下フェイ)は、1866年に二人のアメリカ人女性によって創られた国内最古のジュニアボーディングスクールです。

ジュニアボーディングスクールには確立された定義はありませんが、一般的には北米の「寮がある私立の小学校または中学校」を指します。

ボストンから車で40分ほどの郊外に東京ドームのグラウンド20個分のキャンパスを構えるフェイでは、Kindergarten(幼稚園年長)から9th grade(中学3年)までの475名の子女が通っており、そのうち7th grade(中学1年)から9th grade(中学3年)の約半数の150名がキャンパス内の7つの学生寮で生活しています。

もし日本から入学する場合は、学生ビザを取得して中学生から寮に入る方法が一般的です。

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語学や勉強だけではない、フェイ・スクール人気の真髄

毎年20カ国以上から子どもたちが学びにくるフェイでは、王族のご子息と机を並べることも珍しくありません。なぜこれほどまでに世界中の保護者に支持されているのでしょうか?

まず若いうちに外国語圏で学ぶことは、その国の言語(今回の場合は英語)を比較的苦労せずに習得でき、その後の選択肢を広げてくれるというメリットは想像しやすいでしょう。

また、ジュニアボーディングでは語学力や生活力に自信がなくてもサポート体制がしっかりしているので、高校大学での留学よりも危険やリスクを小さく防げるのでは、という保護者の思惑もあるかもしれません。

そして特にフェイのような名門校においては、勉強内容が一流なだけではなくスポーツ・文化系活動をたくさん試せるようなカリキュラムになっています。こんな学校に通ったら、一般的な学校では物足りなく感じてしまうほど充実しています。

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フェイの人気はコロナが収束していない今も衰えておらず、なんと新規の出願問い合わせの数は例年通りだそうです。


学年ごとの必修科目

フェイでは年長から外国語、音楽・芸術、パブリック・スピーキング(演説や弁論)などが始まり、卒業まで続くのが特徴で、小1からはキャンパス内外で社会貢献活動やフィールドワークも組み込まれています。

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またカリキュラムのいたるところで、社会に出てからもコミュニティに貢献しつづけるための準備が意識されています。

パブリック・スピーキングは、人前で論理的に話す力を育てると同時に、よい聞き手であろうとする姿勢や責任感も培います。

生徒会活動も盛んで、なんと2020年度の生徒会会長と副会長は、いずれも日本人の生徒が投票で選ばれたそうです。

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シーズンごとに異なるチームスポーツ

小学5年生から中学3年生は、20種目57チームあるいずれかのスポーツに参加して他の学校と競います(コロナ禍は対外試合を休止中)。所属するチームがシーズンごとに変わることや、その種目からもアメリカらしさを感じられますね。

例えば、中1のときにサッカー、バスケ、テニスをして、中2のときはゴルフ、アイスホッケー、ダンスをすると、2年の間に競技レベルで6種目のスポーツが体験できます。

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学校の敷地内には屋外フィールドが10面、テニスコート8面、バスケットボールコート4面、屋外プール、フィットネスジム、ロッククライミング場などが整備され、大変充実した施設です

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放課後プログラムやクラブ活動

授業やチームスポーツ以外にも、放課後の学童に似たプログラムがあります。提供ジャンルもスポーツ、科学、音楽、芸術、野外活動など様々です。

もしやりたいことがなくても、生徒が主体的に周りを巻き込んで活動を立ち上げることも歓迎されます

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週末アクティビティ

長期休暇以外はずっとキャンパス内で暮らしている寮生向けには、週末のアクティビティも用意されています。

またキャンパス内外でのスポーツイベント、文化芸術イベント、野外活動、社会貢献活動などが毎週企画されています。

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フェイが融合する伝統と革新

アメリカで一番古い学校としての矜持があるフェイでは、伝統を大事にしつつも時代に合わせて進化を続けます。


伝統を継承する

フェイには決まった制服はありませんが、服装規定があります。授業日はブレザーを(男子はタイも)必着。

また、フェイの伝統でもあるファミリースタイルでの食事を大事にしています。食堂では先生と生徒が決められた席に着いて円卓を囲みます。小3から給仕当番が始まり、中3ではキッチンのボランティアもします(コロナ禍は休止中)。

服装や伝統行事は学校の価値観の継承の形でもあり、また礼儀やマナーの学習体験でもあります。

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伝統を守りながら時代や社会背景に適応していく

ただし、ここでは古き良きものを守っていくだけではありません。常に今よりもっと良くなれないか、学校も生徒も一緒に問い続ける文化があります。

フェイでは多様性を財産ととらえ、カリキュラムやコミュニティに多様な視点を意識的に取り入れています。それはダイバーシティ、エクイティ(公平性)、インクルージョンを意識することは一人ひとりの視点、言動、人生体験に関わることです。だからフェイではどんな文化や言語も、出身地や民族も、性的志向や宗教も、どんな社会経済レベルや家族構成も、ジェンダーやアイデンティティ、障害や年齢や発達段階などによる個性を尊重しています。

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また、従来型の授業スタイルも大事ですが、テクノロジーや実践教育も積極的に取り入れており、たとえば約340平方メートルほどのイノベーション・ラボでは、映像制作、プログラミング、ロボティクス、デザインや設計、造形、電気工作などの実践を通して創造力、思考力、問題解決力などを育みます。

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変わらない価値観

フェイでは、授業、スポーツ、放課後、週末アクティビティなど、ありとあらゆる学習体験が一つのキャンパスで提供されています。それらに共通しているメッセージは、フェイの核となる価値観(コア・バリュー)です。


  • Academic Excellence 優れた学業
  • Earnest Effort ひたむきな努力
  • Honorable Conduct 尊敬に値する言動
  • Dedicated Service 献身的な行い
  • Wellness of Mind, Body, and Spirit 心/体/精神の健康
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世界中からフェイに集った子どもたちは、挑戦と経験を繰り返しながら多感な学児童期を過ごします。しかも、出身や背景や母国語言語の異なる子どもたちと一緒です。

生徒たちは、いろんな場面に置かれることで自分を知り、育み、失敗を重ねては立ち上がり、もっと挑戦するというプロセスを何度も繰り返します。学校が大切にしている価値観は少しずつ根付いていきます。

個人の家庭でここまでの多様で濃密な体験を積み重ねるのは難しいでしょう。ここまでの環境や機会を用意できるのは、やはりジュニアボーディングスクールならではです。

フェイを卒業した生徒たちは、たくさんの自信と経験を身につけて各地の優秀な高校に進学していきます。幼い頃から良質な教育を受けた子どもたちは、きっとどこへ行ってもやっていけることでしょう。

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フェイ・スクールをすすめるとしたらこんな親子

どんな学校にも、子どもの向き不向きがあります。フェイも例外ではありません。学校を選ぶときは、学校と家族と子どものことをそれぞれよく知る時間をたっぷり取ってベストフィットを見つけましょう。

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もしフェイをおすすめするとしたら、例えばこのような子(親)です。


  • 優秀で献身的な教師陣のもとで、いろんな国の子たちと切磋琢磨したい。
  • すでにできることをより深めるだけでなく、新しい体験にも積極的に挑戦したい。
  • 子ども自身のポテンシャルを発見し、それを幅広くバランス良く試して伸ばしたい。
  • 自分の頭で考え、それを人前で表現することに価値をおきたい。ただし、自分よがりではなく、あくまで社会やコミュニティに健全でポジティブな変化をもたらすために。
  • 勉強も好きだけど、型にはまった勉強だけでは物足りない。
  • 寮生活で自立の練習をしたい。
  • 努力することをいとわない

ちなみに、英語力は入学時にできるだけあった方がいいです。中学部には留学生向けのEnglish Language Program(語学補講コース)がありますが、入学時点ですでに英語4技能の基礎ができている方向けです。幼稚園・初等部には語学補講はありません。

Fayでは、毎年夏休みにサマープログラムが開催されているので、学校の下見や寮生活のお試しにおすすめです。ただし、2020年度はやむを得ずオンライン開催でしたし、来年(2021年度)はどうなるかまだ発表されていません。

学校の詳細情報

名称

  • Fay School(フェイ・スクール)

創立年

  • 1866年(日本はまだ江戸時代) アメリカで一番古いジュニアボーディングスクールです。

学年

  • Primary School:年長から小2
  • Lower School:小3から小6
  • Upper School:中1から中3

児童数

  • 475名 うち寮生(中1から中3)は150名

学費

通学生(2020年度)

年長: $26,200/小1: $28,070/小2: $29,930/小3: $31,780、

小4: $33,640/小5: $37,200/小6: $39,060

中1: $40,910/中2: $42,770/中3: $44,630

寮生(2020年度)※英語補講は別料金

中1: $72,250/中2: $74,100/中3: $75,960

※学費補助制度は一応ありますが、国内生が優先されます。


所在地

  • ボストンから車で40分ほどの郊外にある自然豊かな住宅街です。

48 Main Street, Southborough, MA 01772


執筆者

Profile

萩原麻友

萩原麻友

学校見学と図書館が好きなフリーランスの教育コンサルタント。元留学カウンセラー。東京大学教育学部卒。二児の母。インター歴7年、アメリカに4年単身留学していた帰国子女。子どもが自分より英語をできるようになった保護者から進路・教育相談をよく受けます。

2020.10.30

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