「子ども哲学」に5年ほど取り組んでいる、佐賀県のおへそ保育園。吉村直記園長に「子ども哲学」とはなにか、その実践方法や家でできることについて書いてもらいました。ぜひ、親子で一緒に「大切なこと」について思いをめぐらせてみてはどうでしょうか。
1985年8月11日佐賀市生まれ。
社会福祉法人みずものがたり 理事
小規模認可園「おへそ保育園」・幼保連携型認定こども園「おへそこども園」・放課後学童クラブ「おへそ学道場」 統括園長。
自ら考え、学び、行動し、情熱を持って社会に貢献できる人づくりを日々研究している。
執筆、講演活動、空手指導、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。
当園では子どもたちと「哲学」に取り組んでいます。哲学と言っても難しいことではなく、何気ない子どもたちの不思議や疑問をテーマとして取り上げ、子どもたちが自由に対話する時間です。初めて子どもたちが哲学する「こども哲学」の存在を知ったのは、フランスのドキュメンタリー映画「小さな哲学者たち」を観たときです。フランスの幼稚園に通う3歳~5歳児の子どもたちが「愛とは何か」とか「生きるとは何か」という子どもにとってみれば難しいと思えるテーマについて思い思いに意見を言い合っている姿を見て、日本の教育の中でどのくらい自由に意見を言い合える時間が確保できているのだろう、と思ったのがきっかけでした。調べてみると、日本にも「こども哲学」を研究されている方々がいて、その方たちのご助言、ご指導をいただきながら、取り組み始め、早いものでもう5年ほど経ちました。
「哲学しよう」と初めて子どもたちを誘い、最初に投げかけてみたテーマは「優しいって何?」というものでした。『映画で見たフランスの子どもたちくらいに活発に発言し、意見し合えるようになるまでには数年はかかるだろう』との想定していたのですが、それは覆され、「優しいっていうのはね、赤ちゃんの頭をよしよしすることだよ」とか、「優しいって、人が嬉しくなるってことだよ」とか、「怒ることも優しさだってお母さんが言っていた」とか、子どもたちからは思いもよらぬ言葉が次から次に出てきました。
子どもたちは大人が思っている以上に色んなことを考えていて、親の話、先生の話を聴いていて、自分の言葉を持っている。実は、子どもたちが成長していないのではなく、大人の私たちが耳を傾ける機会が少なかったのだと衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。
それからは職員一丸となって対話のファシリテーターとしてのスキルを学び、子どもたちの言葉をさらに引き出せるように取り組んできました。今では、自分たちから「先生、今日はさ、人間はどうやって創られたかを話そうよ」とか、「好きな色があるのはなぜ?」とか、私自身考えつきもしないようなテーマが子どもたちからあがってきます。そんな何気ない不思議、疑問を子どもたちが意欲的に主体的に考える習慣は、子どもたちの未来を創る、素晴らしい取り組みだと確信しています。
「こども哲学」は、決して特別なものではなく、お母さん、お父さんと一緒にご自宅でも実践できるものです。絵本を読んだ後にどう感じたかを聴くのも良いと思いますし、大人が感じている何気ない疑問を子どもたちに投げかけても大人が思いつきもしないような面白い返答が返ってくるかもしれません。
一つポイントとしてお伝えするとすれば、子どもたちの発言を否定したり、褒めたり、評価しないことです。否定されれば、「その答えは大人の前では言ってはいけないこと」になってしまいますし、極端に褒めることも「こういう答えが求められるのか」と感じて、大人に喜ばれる答えを見つけようとしてしまいます。
「こども哲学」の時間は、もちろん人を傷つける言葉を口にしたり、人の話を聴かなかったりする時はある程度の指導は必要ですが、基本的に否定されることなく、ジャッジされることのない子どもの思いを自由に発言できる場所でなければいけません。
わが子に幸せになって欲しいとすべての親御さんが望まれるのではないでしょうか。
しかし、幸せの基準は人によって違いますし、いくら血の繋がった親子でも本人にしか分かりません。「私は何を幸せと感じるのか?」とその子が自分自身に問い、答えを模索し、試行錯誤を重ね、時には挫折を味わいながら幸せに向かって歩んでいくことが大切になります。
他にも、人間関係を築くためには「どうやったらお互いが心地よい付き合い方ができるのか?」と考える必要がありますし、仕事では「どうやったらお客様の為に貢献できるのか?」と考え行動に移さなければいけません。問うということは自分の心や、人生と積極的に向き合うことに繋がります。
「将来やりたいことが見つかりません」とか「何をしても楽しいと思えません」というのは自分自身と十分に対話することができていないからかもしれません。自分が何を大切にしているのかを「問う」ことはきっと子どもたちの人生を豊かにします。「問う」という習慣は子どもの財産として将来必ず役に立つはずです。難しく考えず、親子一緒に「問う」ことを始めてみませんか。
吉村直記
社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。
1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。
25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。
2017年02月06日
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