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2017年01月30日

「あこがれによって人は育つ」。グローバル教育コンクール最高賞を受賞した保育園の園長が語る、子どもとの向き合い方

佐賀県に「おへそ保育園」というユニークな名前の保育園があります。そこでの教育方針や考え方は、日々の子育てにも活かせそうなものばかりです。そこで今回は、おへそ保育園の吉村直記園長に記事を書いていただきました。

吉村直記(おへそ保育園園長)

著者:吉村直記

1985年8月11日佐賀市生まれ。七賢人の里 おへそ保育園園長、社会福祉法人みずものがたり 理事、平成29年4月より、小規模認可園「おへそ保育園」・幼保連携型認定こども園「おへそこども園」・放課後学童クラブ「おへそ学道場」の運営開始予定。

自ら考え、学び、行動し、情熱を持って社会に貢献できる人づくりを日々研究している。執筆、講演活動、空手指導、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

はじめに

みなさん、はじめまして。九州の佐賀県にある「おへそ保育園」園長を務めております吉村直記(31)と申します。おへそ保育園は、2011年に開園した60名定員の小さな認可外保育施設です。

園名である「おへそ」は佐賀の街の真ん中にある保育園であることと、母と子のつながりである「おへそ」が由来。園に通う子どもたちにつながっている命の大切さを感じてほしいという想いが込められています。「おへそ?ですか…」と聞き返されることがよくある一方で「一度聞いたら忘れない名前」とも言っていただくことも多いですね。

園児6名、職員6名からスタートした開園当初、園長である私は25歳。がむしゃらに突っ走ってきたあっという間の6年間でした。おへそ保育園を大切に想ってくださる多くの保護者さん、子どもたち、そして熱心に子どもたちに向き合う職員に恵まれ、少しずつ理想の園へと成長してきたように思います。

そして、2017年4月からは社会福祉法人での運営に移行し、定員146名の幼保連携型認定こども園、定員18名の小規模保育所、定員50名の放課後学童クラブの3施設の運営を開始します。

子ども達との日々の中で感じていること、当園の教育に対する考え方などをご紹介させていただくことになりました。「乳幼児期の子ども達と関わる園長先生ってどんなことを考えているの?」と興味をもって頂けると幸いです。

「育てる」ではなく、「育つ」保育

当園では「育てる」より「育つ」という子ども主体の保育を目指しています。例えば、子どもに「あいさつ」を教え込もうとして「ほら、あいさつは?なんであいさつしないのよ」と言ってしまいがちです。でも、子どもというのは、あいさつをしたら気持ちが良いとか、相手から良い反応が返ってくるとか、そういう経験を自らが感じることで習慣化され、自分のものにしていくものです。

そもそも人というのは生まれた時からコミュニケーションを楽しむ能力を持ち合わせています。ですから、子どもたちに頭ごなしに教えようと思わなくとも、親や保育者があいさつ上手であれば、自然とそれを模倣し、学んでいくもの。子どもたちは私たちが想っている以上に周りの大人をよく観察しています。あいさつの大切さを伝えるにしても、どう教えるかというテクニックより、教える親や保育者がどういう姿勢であいさつに取り組んでいるかいうことが大切だと思います。

子どもたちが主体であるというのは、子どもたちの意欲が先にあり、子どもたちが自ら育とうとしている状況を指しています。当園では「保育者が子どもたちを育てる」という意識から「自ら育っていく子どもたちを応援しよう」という意識に変えて取り組んでいくことが、真に子どもたちのためであると考えて子どもたちと接するようにしています。

私自身の話をすると、5歳の頃に父親を交通事故で亡くし、母から兄弟三人、女手一つで育てられました。母は辛い顔をほとんど見せることなく、仕事をしながらも、料理も家事も育児も何でもこなすスーパー母ちゃんでした。そんな「母の背中」から、小さいことでくよくよなんかしてられないとか、辛いことがあろうと前向きに人生を歩む姿勢など多くのことを学んできたような気がします。やはり、どんな保育・教育・子育てであろうと、その与える者の姿勢がどうあるかということが大切なのだと気づかされた経験です。

当園には、「あこがれによって人は育つ」という教育・保育指針があります。「子どもをどう育てるかではなく、接する大人がどうあるか」大人があこがれる生き方をして、はじめて子どもたちは大人になりたい。という単純な意欲を持つようになっていきます。そんなあこがれる保育者を目指して日々職員一同精進しています。

おへそ保育園の特色ある保育「国際理解教育」

みなさん、突然ですが、「いじめ」は何故起こるのでしょうか。様々な要因はあるかと思いますが、きっかけはちょっとした「違い」というものによって起こるのではないかと思うのです。ちょっと容姿が違うとか、ちょっと方言が違うとか、ちょっとみんなと違うとか。そんなちょっとの違いを認められないことによって、大きないじめに繋がってしまいます。

当園のカリキュラムに「国際理解教育」があります。世界の文化を子どもの頃から経験することで、たくさんの「違い」に触れることが目的です。世界には肌の色も、髪の色も、目の色も、そして様々な文化の違いがあります。そんな「違い」を嫌うのではなく、楽しく、面白く、そして、それが一人一人の個性であり、魅力であることを子どもたちに伝えたいのです。

世界の文化を学ぶ他にも、韓国であれば韓国のりと日本ののりを食べ比べしたり、給食でビビンバを食べたり、ハワイであればフラダンスの講師を招いて手作りのレイ(首飾り)を作り本格フラダンスをしたり、と様々なアプローチで子どもたちに世界を学ぶ機会を手探りで作ってきました。インターネットや本を使い外国について調べたことをレポートにまとめたり、みんなの前でプレゼンテーションしたりもします。そんなことを積み重ねているからでしょうか。当園では海外から来たお友達を子どもたちが自然と受け入れるので、保護者さんたちからよく驚かれます。

この「国際理解」の取り組みは、世界にどんどん興味を持っていく子どもたちの変化とともに、少しずつ評価していただけるようになり、2015年には、JICAが主催するグローバルな人材を育てる教育に取り組んでいる教育機関などを対象にした「グローバル教育コンクール」にて幼児部門では初めて最高賞を受賞しました。

違いを認め合い、それを楽しむような心を育むことができれば、子どもたちがさらに魅力的な人に成長し、そして素晴らしい国になることと思います。ご家庭でも、子どもが日々の生活の中で「違い」を発見した時に、一緒になって違いを認めて楽しんでみてはいかがでしょうか。

著者:吉村直記

1985年8月11日佐賀市生まれ。七賢人の里 おへそ保育園園長、社会福祉法人みずものがたり 理事、平成29年4月より、小規模認可園「おへそ保育園」・幼保連携型認定こども園「おへそこども園」・放課後学童クラブ「おへそ学道場」の運営開始予定。

自ら考え、学び、行動し、情熱を持って社会に貢献できる人づくりを日々研究している。執筆、講演活動、空手指導、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

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