「ADHD」かもしれないわが子を叱りすぎて自己嫌悪【高濱正伸】

「ADHD」かもしれないわが子を叱りすぎて自己嫌悪【高濱正伸】

2021.12.07

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は花まる学習会代表の高濱正伸先生が、「叱られてばかりのわが子」への接し方を不安に思うママの相談にお答えします。お悩みはオンラインで随時受付中。

【お悩み】いつも叱られてばかりの5歳児にどう接するべき?

5歳男子・1歳娘のママ
5歳男子・1歳娘のママ

あきらかに同学年の子たちとは違った行動をする息子は、家でも幼稚園でも習い事でも、叱られることが多いです。もしかするとADHD(注意欠如・多動症)の傾向があるのかなとも思います。

先日叱ったとき、いつも数秒後にはケロッとしている息子が、「僕は小学校に行ってもみんなに叱られるんだ」と悔しそうに泣いていたのを見て、どうにかしてあげなきゃと思いました。

周りに相談しても「子どもらしくていいね」「男の子はそんなもの」と言われ、私の我慢が足りないのかとも悩み、「今まで叱りすぎてしまったのでは」と思ったら胸が苦しくなります。

この先、息子の自己肯定感を下げないよう、「君はそのままでいいんだよ」ということを伝えて私が変わっていきたいのですがどのような対策をすればよいですか。

【高濱先生の回答】人目を気にして叱る必要なし。自分の子育てに自信を持って

ここ最近、コロナ禍という社会状況もあいまって、多くのお母さんが子育てにおいて必要以上に不安になり、「答え」や「正解」を求めているのを感じます。

まず、「お子さんを叱りすぎてしまう」ことに関してですが、多くの保護者のみなさんは、本当は子どもを叱りたくなくて、叱りすぎないほうがよいことも分かっているんです。

ところが、世間は子どもの言動に寛容ではありません。

子どもが問題行動をしたとき、本当はお母さん自身は許せることでも、世間から「放任している」「ちゃんと子育てしていない」と非難されるのではないかと考え、周囲の目を気にして「強く言わなければ」というプレッシャーもあるのでしょう。

一方、叱りすぎれば「虐待ではないか」と世間は言ってくるのですから、人目を気にして必要以上に叱っても誰も幸せになれません。

だからこそ、大切なことは周囲にどう思われるかではなく、あくまで自分の基準で考えること。「外ではそういうことを絶対やらない」というルールだけ伝え、あとは自分の子育てに自信を持って、ある程度開き直るくらいの気持ちでいればいいんです。

また、お子さんがADHDかもしれないと思うのであれば、児童精神科、小児神経科などを受診してみるのもひとつの方法です。ADHDであった場合、簡単に自分で抑えられるものでありません。

もし診断がつけば、症状を軽減する薬の処方や、接し方のアドバイスなど、治療をおこなうことができます。原因が分かれば腹を括ることもできて、少しは楽になるかもしれません。

病院を受診する前に、まずは幼稚園の先生に相談してみるのもよいですね。先生たちは多くの子どもをみていますから、お子さんがほかのお子さんと比べてどの程度症状が強いか、客観的に判断してくれるでしょう。

いずれにしても、落ち着きがない子というのはどのクラスにもいますから、ある程度の年齢になるまで、親は覚悟するしかありません。

私がこれまで見てきた子どもたちの中にもたくさんいましたが、それまで大声を出して叫んでいた子も、小学5、6年生頃から、遅くても中学2、3年生くらいになれば、「自分は少し落ち着きがないタイプだ」「みんなにはないけれど、自分はここを抑制しないといけないんだ」とメタ認知でき、調整できるようになっていきます。

相談者さんの「今、苦しい気持ち」はとても分かりますが、お子さんは自分の気持ちや弱みをすべてお母さんに話せているということは、親子関係は良好ですから大丈夫ですよ。

あなたはもう、子どもにとって何が大事かに気づき、しっかりできています。

あとは、「あなた自身がどれだけ周囲に悩みを受け止めてもらえているか」です。本来、母親同士のネットワークがしっかりあれば、その中で消化されていく悩みだと思いますが、つながりが希薄な時代ですから、それも難しいのかもしれませんね。

いちばん身近な存在である夫は、あなたの悩みや一生懸命さを理解して「大丈夫だよ」と言ってくれていますか?

今回は私が代わりに言いますが、あなたはめちゃくちゃ頑張っている、いい母親です!自信をもって今日一日を頑張ってください。

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1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数
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