「自己主張」と「わがまま」。コミュニケーション力を育む接し方

「自己主張」と「わがまま」。コミュニケーション力を育む接し方

子どもが自己主張をし始め、親としてその気持ちを尊重したいものの、自己主張とかわがままの見極めが難しいと感じるときもあるかもしれません。おへそグループ統括園長の吉村直記さんに、自己主張をコミュニケーション力へと育む方法について教えていただきました。

子どもの自己主張

2歳を越えてくると子どもたちは、自己主張が強くなり、自分でいろいろなことをやってみたいという気持ちが強くなっていきます。

食べたいもの、着たい服をハッキリ言うようになり、大人が手出しをしようとすると「じぶんで」という機会が増え、同時に、親からすると「あぶないな」と思うことや「わがままだな」と感じる機会も増えていきます。

そんな主張を「わがまま」という一つの捉え方だけで接してしまうと、せっかくの子どもの意欲や主張の機会を奪ってしまうかもしれません。


自己主張とわがままの違い

自己主張とわがまま

あくまで「自己主張」というのは、自分自身がしたいこと、言いたいことを伝えることです。「わがまま」は、相手が否定していたり、嫌がっているにも関わらず、「自己主張」を推し進めていくことでしょう。

子どもには「自己主張」を十分にさせ、話をさせ、それに対し親がしっかり耳を傾けた上で、それが難しいこと、親として許せないこと、社会で許されないことを対話的に伝えていくプロセスがとても重要です。

子どもは自分の主張がなぜ通らないのか、なぜそれが「わがまま」であるのかを少しずつ認知し、その子の価値観として確立されていきます。

対話的に話しを進め、子どもの主張を聞くことで、どんな思いでその主張をしているのか、行動しようとしているのかの背景を知ることができます。

それにより「それなら、やってみてもいいよ」というふうに、親の考えが変わっていく場合もあるかもしれません。


「わがまま」は提案力向上のチャンス

自己主張とわがまま

大人の私たちも自分がやりたいことを達成すべく、会社で自分の考えた企画を通そうと頑張ったり、欲しい物を買うために貯金をしたりと、色々な策を考えます。

子どものわがままも同じように「これを買いたいんだ~!」、「まだ、遊びたいんだ~!」と自己主張し、提案をしていると捉えてみましょう。その提案を即座に却下するのではなく、子どもの声に耳を傾け「なるほどね、じゃあどうしたら達成できると思う?」と聞き返してあげてください。

以前、息子が3、4歳くらいの時におもちゃ売り場で「おもちゃ、買いたい、買いたい」と駄々をこねたことがありました。「“わがまま”はやめてくれよ~」と心の中で思いながらも、「なるほど、じゃあどうしたら買えるだろうね?」と聞き返すと、「誕生日の時まで待ったら」と息子なりに答えを出してくれました。

「わがまま」に蓋をして抑え込むだけではなく、「自己主張」を促すことで、考える力、提案する力の向上にもつながります。

自己主張を育みコミュニュケーション力に活かそう

自己主張とわがまま

「自己主張」はあくまで、その人の考えを主張する、伝えるということです。

「自己主張」の段階では「わがまま」ではないと捉えることで、子ども自身のコミュニケーション力や、提案する力を育てる機会に変わっていきます。

主張をし、相手と議論すれば結果に関わらず納得できたかもしれないものを、議論する機会を奪ってしまうのは、避けたいものです。

何も言わないからお人好し、何も主張しないから相手は不満に思っていない。コミュニケーションはそんなに簡単なものではありません。

家庭の中でしっかりと議論する機会をつくることで、時にはぶつかりながら、少しずつ他者理解が進み、社会で通用するコミュニケーション力が育っていきます。

Profile

吉村直記

吉村直記

社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。 1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。 25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

2018年11月05日

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