子育ては「人も制度もフルで頼って」追い詰められない方法を【大山加奈さん#4】

子育ては「人も制度もフルで頼って」追い詰められない方法を【大山加奈さん#4】

不妊治療の助成拡充に続き、2022年4月から、保険適用が決定。子を持つための選択肢が広がった今、長きにわたる不妊治療の末に双子のお子さんを授かった大山加奈さんに、ご自身の多胎児育児についてお話いただきました。

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不妊治療を終え、今度は「今日も生きていてくれるか」という不安との戦いが始まった

――多胎児妊娠について、不安はありましたか。
お医者さんには、双子に限らず妊娠期間は何が起こるかわからないとは言われたのですが、やっぱり双子の場合はリスクがすごく高くなるので、その不安はずっと抱えていて。

妊娠した喜びと、ちゃんと生きているんだろうかっていうことが、毎日不安でした。

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自宅で心音が聞ける機械みたいなものも買いましたが、検診に行く度に、処刑台に上がる気持ちでした。ここでもし「心臓止まってます」とか言われたらどうしようっていう怖さの方が大きくって。検診に行くのが、毎回怖かったですね。

「大丈夫、順調ですよ」といわれると涙が出るほど安心して……その繰り返しでしたね。

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「夫婦だけでは育てられない」周りのサポ―トを受けたことで、強く感じたこと

――初めての育児、そして双子の育児が始まって、もうすぐ1年ですね。
まずこの1年、まったく記憶がないんですよね。

せっかくの0歳の可愛い時期なのに全然記憶がないのが悲しいんですが、そのくらい毎日必死にバタバタで過ごして来たんだなと思ってます。最初のころは一日中授乳……二人なので、本当に授乳しかしていない毎日でした。

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うちの子たちは夜泣きも全然なくて、「もう助けて!」となるようなことはなかったんですが、最初のころは、二人同時に泣いたときに両方を抱っこしてあやしてあげられないことに対して、すごく申し訳ない気持ちがありましたね。

100%ずつの愛情を注いでいるつもりですが、やっぱりできることが分散しちゃうっていうことに対しては、歯がゆさはあります。

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でもありがたいことに、サポートしてくださる方が本当にたくさんいて。最初は、私の実母が亡くなっていて頼ることもできない中、双子を育てることなんてできるんだろうかと不安だったんですけど、みなさんに一緒に育てていただいているような感じなんです。

自分がそうやって助けてもらったことで、子育ては「夫婦だけじゃ絶対できないな」っていうのを感じて。子どもは社会全体で育てなきゃいけないということをとても強く実感しましたね。

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――大人二人の手で全く追いつかない、全てが同時進行の多胎児育児の大変さが伺えました。行政の子育てサポートは利用されましたか。
ものすごく使っています!産後ドゥ―ラさんの存在にはめちゃくちゃ助けられていて、最初の頃は多いと週二、今は週一で来てもらっています。

私の住んでいる品川区は、産後ドゥ―ラに対する助成がとても手厚いんです。多胎児は特になのですが、多胎児に対しての助成が増えたのは私が二人を産んだ今年度からだったので、すごいタイミングでした。
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※写真はイメージ(iStock.com/kohei_hara)
――手厚いサポートや子育て支援の施設などもありますが、例えば支援センターなどに行くにしても外出は大変ですね。
外出はすごくハードルが高いですね。両方泣いてしまったときに同時に抱っこはしてあげられないので、泣いたらどうしようという思いもありますし、ベビーカーはかさばって人の邪魔になりますし。そこはとても厳しい現実だと思っています。

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「助けて」と言える環境が欲しい

――追い詰められてしまうお母さんもいますよね。
その末に我が子を手にかけるといった悲しい事件を見て、誰にも「助けて」って言えなかったんだろうなっていう、お母さんの気持ちを思うと……本当に苦しいです。そういう方は、がんばりやさんなんでしょうね。「自分がやらなきゃ」と思ってしまって。

子育てって、周りがみんな当たり前にやっているように見えるから、あの人もこの人もできているのに、なんで自分は……ってすごく追い込んじゃう部分があると思いますし。そうした、なかなか助けを求められない方を救うにはどうしたらいいかということは、すごく考えてしまいますね。
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※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)
私の場合は、ご近所さんがすごく助けてくれるんですよ、昭和の時代みたいに。

それもだいずのおかげなのですが、お散歩で友達になって、その輪ができて。そうして、だいずつながりで出会った人たちが、双子のことも見てくれるんです。

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何かそういうコミュニティー作りができれば良いのですが、今の時代は難しいですよね……。コロナ禍もあって、人との接点がもてなかったじゃないですか。助けを求められない状況が重なっているのかもしれませんね。

うちも近所にないんですが、支援センターみたいなものがもっと欲しいなとは感じます。公園もなかなかなくて、そうなると同じ子育て世代との出会いがないじゃないですか。気軽に行ける、そういった場所がもっと増えればいいなと思います。
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※写真はイメージ(iStock.com/FatCamera)
――子育て支援の種類や存在自体を知らない、という背景もあるのでしょうか。
確かに、ご近所に住んでいるママ友さんにも、「産後ドゥ―ラって何?」という方もいて。私は妊娠したら行く保健所で、お知らせをいただきました。もしかして多胎児だからかな?とも思うのですが、とても心配されました。

多胎児だと、お母さんが自殺してしまったり、虐待してしまったりすることが多いということや、私の実母が他界しているということもあって、ものすごく心配されて、電話もちょくちょく来たりして。

でも多胎児じゃなくても、どのお母さんにもそれくらい手厚く、外側からアプローチしてくれると、助かる人も多いですよね。
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※写真はイメージ(iStock.com/fizkes)
――大山さんの場合は、産後の困りごとや不安について、周囲の方や行政のサポートを通して解消していっているのですね。
そうですね。あとはTwitterで匿名アカウントを作って、妊娠中のお母さんや、ちょっと上のお子さんをお持ちのお母さんたち、多胎児のお母さんをフォローしてつながったんです。

そこから得る情報もすごく助かりました。これがなければもっと大変だったろうなって思います。正体を隠しているから何でも相談できたし、とても救われましたね。
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※写真はイメージ(iStock.com/west)
特に妊娠中が多かったですかね。公にできない時期までの、妊娠中の悩みだったりトラブルだったりは、そこで解消してました。みんな優しいんです。

SNSはいろいろな面がありますけど、いい人がいて、いい面もあるので、うまく利用できる人はどんどん使ってもらえらたらと思いますね。

子育ては一人じゃ無理です。みんな頑張りすぎなくらい頑張ってるんで、誰かに助けてもらっていいと……助けてもらうべきだと思います。

私もよく、「こんなにいろいろとしてもらって申し訳ないな」と思ってしまうんですけど、助けてもらったからこそ、みなさんにはどんどん周りを頼ってもらいたいなって思います。

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――双子育児はもちろん、どんな子育ての状況でも、公的サポートの確認と、周囲の支え……今の時代こそ、人とのつながりが不可欠ですね。ありがとうございました。

<取材・執筆・撮影>KIDSNA編集部

2022年04月06日

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