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【小児科医監修】新生児のミルクの量は?適正量や飲みすぎのサインとは
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医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
新生児がミルクをたくさん飲むと安心する反面、体重が増え過ぎたり、ミルクを吐き戻してしまったりと心配になることもあるでしょう。今回は、ミルクの適量はどのくらいなのか、飲みすぎの判断方法はどのようなものなのか。また、何度もほしがっている様子で泣いているときは、どのように対応したらよいのかを紹介します。
ミルクの飲みすぎが不安
新生児は、十分にミルクを飲ませたはずなのにまだ足りなさそうに泣いたり、与えれば与えるだけ飲んでしまうことがあります。
「こんなにあげても大丈夫なのかな」と不安になったり、吐き戻してしまうと「飲ませすぎだったかな」と心配になることがあるかもしれません。「母乳はいくらあげてもいいけど、ミルクは飲ませすぎないほうがいい」と言われたことがある人もいるでしょう。
とはいえ、慣れない育児で赤ちゃんが泣き止まないと、「もっとミルクを飲みたいのかな」と考えてしまい、あげたらいいのかあげないほうがいいのか、混乱してしまうママも多いかもしれません。
お腹が空いている/飲みすぎの判断方法
赤ちゃんがお腹が空いているときと、反対に飲みすぎで不快なとき、それぞれにサインがあるので見ていきましょう。
お腹が空いているサイン
お腹が空いていてミルクが欲しいときは以下のようなサインがあります。
- 口をパクパクしたり、吸っているような口の動きをする
- おっぱいを探すような仕草がある
- ソワソワしたような様子がある
- いつもより激しい泣き方をする
赤ちゃんによって個性があるので必ずしもこの通りとは限りません。「これはお腹空いているときの泣き方だな」など感覚でだんだんと分かってくることもあるでしょう。
飲みすぎのサイン
反対にミルクを飲みすぎで不快を表しているときは、以下のようなサインがあります。
- 多めに吐き戻してしまう
- 不機嫌で寝つきが悪い
- うなったり、いきんだりする
- お腹がパンパンに張っている
また、上手にミルクを飲めるようになってくる生後2週間以降、一日に増える体重の平均は25~30gです。平均を大きく超えて体重が増加している場合は、ミルクの飲みすぎを疑ってもよいでしょう。
赤ちゃんのお世話に慣れないうちは特に、赤ちゃんからのサインが読み取りにくく、適切な量のミルクをあげられているのか、心配になることもあるかもしれません。
一カ月健診で詳しく相談したい場合は、普段のミルクの量や回数、吐き戻しの回数やうんちの回数などを記録したものを持参することがおすすめです。一カ月健診より前に相談したい場合は、出産した病院に電話で相談してみてもよいでしょう。
ミルクの適正量や回数
母乳は欲しがるだけあげてもいいけれど、ミルクは3時間以上の授乳間隔を空けないといけない、と言われたことがある人もいるでしょう。たしかに母乳は消化にかかる時間が一時間弱なのに対し、ミルクの場合は一時間強かかるという研究データもあります。
しかし、そこまで大きな差があるわけではありません。どちらにしても、胃が小さい新生児が一度に飲める量は大した量ではないので、神経質になるほど間隔や回数にこだわる必要はないでしょう。
それでは、あくまで目安にはなりますが、ミルクの量や回数を月齢別に見ていきましょう。
生後1週間頃まで
・1回あたりの量:60~80ml
・1日の授乳回数:8回
・授乳間隔:3~4時間
出産直後は、助産師などと相談してミルクの量を決めるケースが多いでしょう。また、この時期は「生後日数×10ml+10ml」が基本です。
生後1~2週間
・1回あたりの量:80~120ml
・1日の授乳回数:7~8回
・授乳間隔:3~4時間
病院や産院から自宅に戻り、うまく授乳ができているのか不安が募る頃でしょう。ミルクの缶に書いてある量を目安にして、多少の誤差は気にしすぎなくてもOKです。
生後3~4週間
・1回あたりの量:100~120ml
・1日の授乳回数:7~8回
・授乳間隔:3~4時間
慣れない赤ちゃんのお世話に、ママの疲労もピークかもしれません。赤ちゃんが飲める量も個人差が大きくなってくるでしょう。
生後1~2カ月
・1回あたりの量:120~160ml
・1日の授乳回数:6~7回
・授乳間隔:4~5時間
1回に飲める量も増え、少し授乳間隔が空いてくる人もいるでしょう。
生後3~4カ月
・1回あたりの量:160~200ml
・1日の授乳回数:5~6回
・授乳間隔:4~5時間
生活リズムがだんだんと整ってくる人も多い時期かもしれません。1回の量はむらがある赤ちゃんもいますが、1日のトータル量で調整するようにしましょう。
生後5~6カ月
・1回あたりの量:200~240ml
・1日の授乳回数:4~6回
・授乳間隔:5~6時間
離乳食が始まる頃ですが、食べられる量はまだ少なく、引き続きミルクからの栄養摂取が必要です。ミルクは食後に飲ませるのがよいです。
生後7~8カ月
・1回あたりの量:200~240ml
・1日の授乳回数:4~5回
・授乳間隔:6~7時間
離乳食が2回食になり食事からの栄養摂取が増えていきます。ミルクは飲みたがるようであれば、特に減らさなくてもよいです。
生後9~11カ月
・1回あたりの量:100~200ml
・1日の授乳回数:2~5回
・授乳間隔:5~7時間
3回食になる頃ですが、離乳食の進み方は人それぞれ違います。離乳食では足りていない分をミルクで補うようにしてみましょう。
飲みすぎてしまう理由
赤ちゃんが泣いたりぐずぐずしていると、ママやパパは「お腹がすいているのかな?」と判断しがちかもしれません。何度も泣いてはミルクを飲む赤ちゃんを見て、「よく飲む子なんだな」と思うこともあるでしょう。
しかし、赤ちゃんが満腹を感じ自分で飲むのを止めるのは生後3カ月頃からで、それまでは満腹でも反射で飲んでしまうことがあるのです。赤ちゃんの口に乳首や指が触れると反射的に吸う現象で、吸啜(きゅうてつ)反射と呼ばれています。
また、黄昏泣きなどもあるように、赤ちゃんの泣いている理由は誰にも分からないことも。赤ちゃんが泣いている理由は必ずしもお腹がすいているわけではないこと、飲みたくなくても与えられると反射的に飲んでしまう、ということを覚えておくとよいでしょう。
ミルク以外の水分摂取は?
ミルクのあげすぎかもしれないと悩むママ・パパの中には、他のものを飲ませてみようと考える人もいるかもしれません。おじいちゃんおばあちゃん世代からは、湯冷ましや果汁を与えるように言ってくる人もいるでしょう。
しかし、基本的には新生児に湯冷ましや果汁は必要ありません。昔は赤ちゃんに湯冷ましをよく飲ませていましたが、今は生後6カ月頃までは母乳やミルクから十分に水分は取れているとされています。
生後2カ月以降の赤ちゃんで便秘に悩んでいる方は、果汁を1日1回・数10mlでも取り入れてもよいでしょう。果汁には糖分が含まれているので、便を柔らかくしてくれます。
授乳以外で赤ちゃんに泣き止んでもらうには
ミルクをあげること以外で赤ちゃんに泣き止んでもらうためには、以下のような方法を試してみるとよいでしょう。
ママやパパの声や胎内音を聞かせる
ママ・パパがたくさん話しかけることで、泣いていた赤ちゃんが落ち着くことも。また、ママのお腹の中を思い出すような胎内音のアプリや、雨音などの自然音が流れる動画などが効果的な場合もあるようです。
おひなまきをする
赤ちゃんは布で包まれるとママのお腹にいるようで安心するといわれています。スワドルと呼ばれる伸縮性のある布や、なければ大きめのバスタオルで赤ちゃんをおひなまきしてみては。赤ちゃんのモロー反射対策にもなるので、ややきつめに巻くのがよいでしょう。
ただし、初めておひなまきを行うときは助産師などに指導を受け、また赤ちゃんから長時間目を離すことなどないように、注意点を守って行いましょう。
おしゃぶりを使う
赤ちゃんはおしゃぶりを咥えると精神的に落ち着くとされています。泣いている時間を減らせたり、寝かしつけがラクになったりすることも。おしゃぶりに慣れるまで少し時間がかかる子もいます。赤ちゃんが上手におしゃぶりを吸えるようになるまで、何度か試してみるとよいかもしれません。
ただし赤ちゃんがおしゃぶりを使うことは、歯並びが悪くなるともいわれています。気になる方はかかりつけ医に相談してみましょう。
また、新生児期は少し窓をあけて赤ちゃんといっしょに外の空気を吸ってみたり、生後一カ月が過ぎたら家の近所を散歩してみたり、親子で気分転換をしながら過ごせるとよいかもしれません。
体験談
ミルクの飲みすぎを心配したことがあるという先輩ママに話を聞きました。
2児のママ
1児のママ
私は母乳があまり出なかったため、娘はミルクで育てました。吐き戻しが多く、一日中口からミルクが出ているような状態だったので、飲ませすぎなのかと不安でした。一カ月健診でも相談しましたが、あまり心配しなくても大丈夫と言われました。
体重の推移は平均的で、離乳食が始まってからは吐き戻すことも減ったので、吐き戻しが多いのは赤ちゃんの体質だったのかなと思っています
2児のママ
母乳と混合だったのでミルクの量は少なめにしていました。でも、どのくらい母乳が出ているのか分からなかったので、このミルクの量で足りているのか、逆にあげすぎなのかと迷うことが多く、いつも悩んでいました。
2児のママ
新生児のうちは缶に書いてある通りの量をあげていましたが、一時間半くらいするとまたお腹がすいたように泣くこともありました。そういう日は、哺乳瓶を洗うのも大変でした。
3児のママ
生後2~3カ月で、夜間10~12時間くらい続けて寝てくれるようになりました。そのため、昼間のミルクは3時間おきにあげ、一日のトータル量を調整していました
ひとりで悩まずに相談してみよう
初めての育児は分からないことだらけで、些細なことでも不安になってしまうでしょう。ミルクの飲みすぎを心配してしまうのも、子どものことを思う気持ちから。気になることがあれば、出産した病院や近所の小児科などに気軽に聞いても問題ありません。ひとりで悩まないで、赤ちゃんに合ったミルクの量を見つけていけるとよいですね。
監修:保科しほ
Profile
保科しほ
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
<執筆>KIDSNA STYLE編集部
上の子のときは、ミルクを飲ませたら最低3時間は間隔を空けるように指導されました。一人目でなにも分からず不安だったので、その言葉を守って赤ちゃんが泣いていても3時間経たないとミルクをあげられず、精神的に辛かったです。
下の子のときは「飲みたそうだったら3時間経っていなくても飲ませてもいいし、気にしすぎないで」と言ってもらいました。前回とは違う病院で出産したため病院の方針が異なるのか、時代が変わったのかはわかりませんが、上の子のときもこのくらい気楽に対応できれば良かったなと思っています。