「治療費50万以上」34.5%、不妊治療の現在地

「治療費50万以上」34.5%、不妊治療の現在地

2021.06.17

ライフスタイルやキャリアの多様化に伴い、未婚、晩婚、晩産化が進んでいる。不妊治療を視野に入れたときに、費用や仕事との両立はどうなるのか。「不妊治療を始めようと決めたものの、お金のことや、どんな治療やサイクルで進めるのかイメージが沸かない」という方へ向けて、データと体験談で解説していく。

不妊治療件数は増加傾向、しかし史上最少の出生率

厚生労働省の発表によると、日本の出生率は2020年、1899年の調査開始以来史上最少の数字となった。

「ひとりの女性が15~49歳までに産む子どもの数の平均」を表す合計特殊出生率は1.34。5年連続で前年を下回っている。

 
 

一方で、不妊治療件数は増加傾向にあり、日本産婦人科学会のARTデータブック2018によると、2018年の体外受精の総治療件数は45万4893件にのぼっている。

しかし、治療を行う患者の肉体的な問題以外に、金銭面や仕事との両立を理由に納得のいくまで不妊治療を行えていない人が多くいる現状も存在している。

不妊治療にはどれくらいの費用がかかるのか。また、2022年4月より始まる、保険適用についても解説していく。

「不妊治療に50万円以上かかった」全体の34.5%

野村総合研究所が発表したデータによると、不妊治療にかかった費用について以下のような回答があった。

 
 

不妊治療費の総額は「5万円以上 10万円未満」が最多の17.8%だが、「50万円以上」は全体の34.5%を占め、中には500万円を超えたという回答もあった。

経済的な理由で不妊治療を諦めたり、満足がいくまで治療が行えなかったケースは4割にのぼり、その理由も以下のように多岐に渡った。


  • 治療のステップアップを断念したことがある:19.6%
  • 満足のいく回数の治療が行えなかったことがある:18.2%
  • 希望通りのタイミングで治療が行えなかったことがある:11.7%
  • その他の不妊治療に関する不便がある:1.3%
  • 該当なし:59.7%

(複数回答)

出典:令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 不妊治療の実態に関する調査研究/野村総合研究所

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体外受精の平均費用は約50万円。これまでも助成制度はあったが……

総額については前述の通りだが、不妊治療は長引くほど費用がかかるという。

まず、治療に進む前段階に行う不妊検査では主に以下の内容を調べる。


  • 女性:ホルモン検査、子宮卵管造影検査、超音波検査、フーナーテスト、感染症スクリーニング検査
  • 男性:精液検査、泌尿器科的検査

不妊治療検査には、保険適用される検査と、自己負担が必要な検査に分かれる。

クリニックにもよるが、ホルモン検査の採血は、被保険者本人3割負担の場合、1000円程で受けられるが、検査内容によって自己負担となる場合もあるようだ。

子宮卵管造影検査はカテーテル代を含め7000円程、フーナーテストは500円程です。超音波検査は1600円程ですが、同月内の検査回数に応じて費用が若干変動するという。

感染症スクリーニング検査は自費となり15000円前後、精液検査は自費の場合がほとんどで、3000円~5000円程で検査をすることができるようだ。

※費用はクリニックによって異なる

【産婦人科医監修】妊活のための検査とは?病院での検査内容や費用について

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そのほかの治療費用はどうだろうか。ステップごとに見てみよう。

 
 

機能性不妊やタイミング法で思ったような結果が出ない場合は、次の段階である人工受精へと進み、ここからは保険適用外となる。

タイミング法、卵巣刺激法、人工授精までを含めた治療を「一般不妊治療」と呼ぶが、ここで治療が奏功しない場合は、より妊娠する確率が高いとされる次のステップへと進む。

iStock/DNY59
iStock/DNY59

体外受精や顕微授精といった、精子や卵子、受精卵を体外で取り扱う治療は「生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology:ART )」と呼ばれる。体外受精と顕微受精は「特定不妊治療」と定められており、各自治体による助成制度が設けられている。

これまでは夫婦合算所得730万円未満、生涯で通算最大6回まで、助成額は初回が30万円で2回目以降は15万円などの規定があった。

出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業」の拡充について/厚生労働省

助成金拡充を経て2022年4月より待望の保険適用化

今年1月、総理大臣施政方針演説にて不妊治療の保険適用を2022年4月から開始すると発表。それまでの間は、不妊治療助成制度を大幅に拡充するとした。

 
 

なお、治療を始めた初診日の妻の年齢が42歳以下となり、43歳以上は対象外となることは拡充前後で変わらない。また、拡充後の助成回数は40歳以上~42歳以下の人は1子ごとに3回まで。

対象者は「特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された夫婦」とされているが、自治体によっては要件を満たせば事実婚も認められている。

不妊治療にかかる費用の面では、保険適用により不妊治療の負担が低減されそうだ。では、不妊治療のもうひとつのハードル、「仕事との両立」はどうだろうか。

後編では、不妊治療中、または不妊治療を経験したことがある人の声を集めた。


<執筆>KIDSNA編集部

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2021.06.17

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