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【産婦人科医監修】妊娠中の血圧の正常値。低血圧~高血圧の基準と対処方法
血圧を正常値に保つため日常で気をつけること
Profile
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠すると血圧が上がると思っていたけれど、血圧が下がると心配になる妊婦さんもいるかもしれません。妊娠中の血圧の正常値と血圧が低いとき、高いときのリスクについてご紹介します。また、血圧を正常に保つための対処法と処方される薬についても解説します。
妊娠中の血圧の正常値
妊娠すると血圧が上昇すると思われがちですが、妊娠時期によって血圧は変化します。
妊娠時期別の血圧の数値を詳しく見ていきましょう。
妊娠初期は、つわりの症状で吐き気や嘔吐から水分不足になりやすく、妊娠初期は血圧が低下します。
妊娠中は、最低血圧が85mmHg未満、最高血圧が130mmHgが平均的です。
この数値は年齢に関係なく、妊娠初期の妊婦さんの平均的な血圧になります。
最低血圧が50~80mmHg未満、最高血圧90~120mmHg未満を「至適血圧」といい、赤ちゃんやママが病気にかかりにくく理想的な状態です。
妊娠中期は、女性ホルモンによって血管が拡張するため、妊娠20週くらいのときに血圧が最低値になります。
妊娠後期になると、出産に向けて血圧が上がります。
最低血圧90mmHg、最高血圧140mmHg未満は「正常高値」といい、妊娠高血圧症候群になる可能性があるので、注意が必要です。
妊娠中に血圧が高いときのリスク
妊娠中に血圧が高くなるとどのような影響があるでしょうか。
妊娠高血圧症候群
妊娠後期に血圧が上がると妊娠高血圧症候群になる恐れがあります。
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降から分娩後12週までに最高血圧が140mmHg、最低血圧90mmHg以上または両方の場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。
妊娠高血圧症候群になると、腎臓機能や肝臓機能が低下して脳への血液が滞ってしまい、緊急帝王切開で出産するケースもあります。
低体重児
妊娠高血圧症候群になると、胎盤の血流が悪くなり、赤ちゃんまで十分な栄養が行き届かず体重が少ない低体重児が生まれるかもしれません。
頭痛・めまい
高血圧の軽い症状は、頭痛やめまいが起こります。
放っておくと、脳出血やけいれんなど症状が悪化する恐れがあります。
妊娠中に血圧が低いときのリスク
一般的に収縮期血圧が100mmHg以下は低血圧と定義されます。
妊娠中に低血圧だとどのようなリスクがあるでしょうか。
貧血
低血圧になると貧血状態が続き、めまいやふらつきが起こりやすくなります。めまいやふらつきから転んだり、お腹をぶつけてしまう危険性があります。
つわりの症状がひどく出る
血圧が低いとつわりがひどくなる可能性があります。
医学的な原因は解明されていませんが、静脈を圧迫したり、血液循環が悪くなることが原因ではないかと考えられています。
むくみ
低血圧の場合、血液の流れが悪くなり身体がむくみやすくなります。
妊娠中は大量の水分が必要になるため、普段よりもむくみやすいですが、低血圧になるとさらにむくみを感じるかもしれません。
血圧が異常なときに処方される薬
妊娠高血圧の場合は、降圧剤を使用する場合があります。内服薬と点滴があり、妊婦さんにも使われています。
降圧剤を使うと血圧は下がりますが、血圧が下がって子宮に流れる動脈血の量が減るため、お腹のなかの赤ちゃんに酸素が十分行き渡らなくなったり、栄養が足りなくなる可能性があります。
血圧を正常値に保つため日常生活で気をつけること
妊娠時に血圧を正常値に保つためにはどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。
食事内容を見直す
塩分や脂分の多い食事は、血圧が上がる原因になります。
揚げ物やラーメン、スイーツなどを控え、味付けも素材の味が楽しめる和食中心の食事がおすすめです。
水分補給をこまめにする
妊娠するとつわりで水分を十分に摂れずに血圧が下がり、貧血気味になります。
特にお腹が大きくなる妊娠後期は多くの水分が必要になります。
一気にたくさんの水分をとるのではなく、少しずつでもこまめな水分補給を心がけることが大切です。
適度な運動を取り入れる
低血圧の場合、手足の末端の血管収縮力が弱く、血液が末端まで行き渡りづらくなります。
ウォーキングや階段の昇り降りなどで身体全体の血液の循環を促します。
お腹が大きくなってきて、足元が見えづらいときには階段を踏み外さないように、上までのぼらず玄関などの段差でやってみるとよいでしょう。
十分な睡眠をとる
寝不足になると、ストレスが溜まります。ストレスが血圧を上昇させる原因になる場合もあります。
早寝を早起きを意識して、なるべくストレスを溜めないようにしましょう。
血圧を正常に保つには日頃の生活習慣が大事
妊娠するとつわりの影響から水分不足になり、血圧が下がります。妊娠中期に血圧が最低値になり、妊娠後期は出産に向けて血圧が上がります。
妊娠すると血圧が上がると思っている人もいるかもしれませんが、妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期で時期によって血圧は変わってきます。妊娠中は最低血圧が85mmHg未満、最高血圧が130mmHgが平均的です。
血圧が下がると、貧血やむくみの症状が出てきて、つわりがひどくなる場合があります。
反対に、血圧が高いと頭痛やめまいが起きたり、妊娠高血圧症候群になり、低体重児が産まれるなどのリスクを伴います。
血圧を正常値に保つためには、塩分や脂分を控えたバランスのよい食事とこまめな水分補給が大切です。
妊娠時期やママの体調にもよりますが、ウォーキングやストレッチなど適度な運動や十分な睡眠をとることも重要です。
無理せずできることを取り入れて妊娠中の血圧を正常値に保ちましょう。
監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
Profile
杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。