クマは「人間の肉の味」を覚えると凶暴化する…飢えた30頭のヒグマが400人の鉱山労働者を襲撃した背景事情
なぜ単独行動を好むクマが「大群」で襲いかかったのか
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日本全国でクマによる被害が相次いでいる。クマ問題を取材するライターの中野タツヤさんは「クマはたった1頭でも危険だが、何十頭も一度に襲ってくれば普通の人間には太刀打ちできない。2008年、ロシア極東地域のカムチャツカ半島では、約30頭のヒグマが鉱山施設を襲撃し2人が死亡、作業員など約400人が施設内に閉じ込められる事件が発生した」という――。
ロシアで実際に起きた「クマの大群」の襲撃事件
北海道のヒグマにせよ、本州のツキノワグマにせよ、クマが人間を襲う場合、単体での攻撃がほとんどだ。まれに子グマを連れた母グマという場合もあるが、それでもせいぜい1~3頭程度の小さな集団である。
だがもし、何十頭ものクマが集団となって人間に襲いかかったら、どうなるだろうか。いざ格闘となれば、ヒグマに代表されるクマ類は、たった1頭でも恐るべき力を発揮する。それが何十頭も一度に襲ってくれば、普通の人間には太刀打ちできない。
これは仮定の話ではない。実際ロシアでは大量のヒグマが人間を襲う事件が起きている。この事件はロシアのタス通信が報じ、その後世界中のメディアが報じた。それらの報道をもとに、事件の概略を追ってみよう。
カムチャツカ半島のクマは「穏やか」とされるが…
事件が起きたのは、2008年7月17日。ロシア極東地域のカムチャツカ半島は、各種の鉱物資源に恵まれており、金やプラチナなどの鉱山が存在する。そのカムチャツカ半島北部のオリュートルスキー地区にあるプラチナ鉱山で、2人の警備員が夜間パトロールを行っていると、ヒグマを発見した。
ヒグマは1頭や2頭ではなかった。なんと約30頭ものヒグマが、鉱山施設周辺に出没し、エサを探し歩いていたのである。通常、カムチャツカ半島のヒグマは穏やかな性質であまり人を襲わないとされる。カムチャツカ半島には手つかずの自然が残されており、遡上するサケのほか、木の実など、ヒグマの食料が豊富に存在する。そのため、わざわざエサを求めて人間の住む地域に出没し、人を襲うことは少ないのだという。
だが、鉱山の警備員2人が発見したヒグマの群れは、非常に凶暴で荒々しかった。おそらくエサ不足に陥っていたのだろう。ヒグマの群れは2人の警備員に襲いかかった。その後発見された遺体の状況から、ヒグマの群れが2人の肉体を引き裂き、食い荒らしたことがわかっている。





























