銀ブラの由来は「ぶらぶら」ではなく「ブラジル」…日本人に全く馴染みのなかったコーヒーが定番飲料になるまで
日本は世界4位のコーヒー消費大国
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現在、日本は世界4位のコーヒー消費国だ。幕末の1858年にコーヒー豆の輸入を始めて以来、どのようにして日本でコーヒーは広まっていったのか。第15代ワールド・バリスタ・チャンピオンの井崎英典さんによる『教養としてのコーヒー』(SB新書)より、一部を紹介する――。
初めてコーヒーを飲んだ日本人の正直すぎる感想
日本のコーヒー史を見ていきましょう。
実は、日本はかなり「コーヒー好き」の国です。近年の世界の消費量を見ると、1位EU、2位アメリカ、3位ブラジルに次いで4位が日本です。意外なことに、最大の産地ブラジルや、コーヒーを歴史的に楽しんできた欧米に続いて、日本はコーヒーの一大消費国なのです。
日本に初めてコーヒーが入ってきたのは江戸時代初期といわれています。鎖国中の1640年代に、長崎の出島にオランダ商人によってもたらされたという説が有力です。オランダ商人が飲んでいるコーヒーを、商館に出入りしていた通訳や役人といった限られた人たちが飲んだのです。
彼らの反応がどうだったのかはわかりません。ただ、1804年には、文人であり食通としても知られる蜀山人しょくさんじん(大田南畝おおたなんぽ)がオランダ人の船でコーヒーを飲んだ際の感想を「焦げくさくして味ふるに堪ず」と随筆『瓊浦又綴けいほゆうてつ』に記しています。お茶が浸透している日本では、どうやらコーヒーは受け入れられなかったようです。出島に持ち込まれた舶来品から火がつくこともなく、鎖国中の日本にはコーヒーは広まりませんでした。
日本で最初にカフェができた場所
一転してコーヒーが広まるようになったのは開国後。文明開化とともに西洋のコーヒーが取り入れられ、もてはやされるようになっていきました。幕末の1858年には正式にコーヒー豆を輸入するようになり、徐々に広がりを見せます。
日本で最初にオープンしたコーヒーハウス(カフェ)は、1888年に東京の上野にできた「可否茶館かひさかん」とよくいわれます。
ただし、これより前の1876年に浅草奥山では下岡蓮杖しもおかれんじょうにより開設された「油絵茶屋」という現代でいうところのギャラリーにて、入場料の代わりにコーヒーを売っていたと当時の新聞記事で報じられています。
油絵茶屋では歴史上の偉人の肖像画などが展示されており、一通り観覧を終えるとコーヒーを提供されるという仕組みで物珍しさから好評だったようですが、現代の感覚におけるコーヒーハウス・カフェとは少し異なるかもしれません。





























