「孤立が寿命を縮める」とは言うけれど…米スタンフォード大教授が指摘する「本当に必要な友達の数」とは
「多ければ長生きできる」わけではない
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老後を健康に過ごすためには、どうすればいいのか。スタンフォード大学心理学部のローラ・L・カーステンセン教授は「長生きするためには、“友達の多さ”や“一人暮らしかどうか”は重要ではない。本当にリスクが高まる要素は別にあり、認知症になる可能性もあがってしまうだろう」という――。(第1回) ※本稿は、ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
長生きのためには「社会的な孤立」を防ぐ必要がある
親しい人間関係が長寿に与える総合的な影響を確認するため、研究者は巧みな方法を考案してきた。たとえば、カンザス大学のサラ・プレスマンと、ピッツバーグ大学医療センターおよびカーネギーメロン大学のシェルドン・コーエンは、出版されている自伝を分析した。
被験者のうち一群は、心理学の歴史に関する全8巻の専門書に自伝の利用を許可した著名な心理学者たちだった。もう一群は、詩人、小説家、ノンフィクション作家など。プレスマンとコーエンは、自伝のなかで人間関係を表す用語、すなわち父、兄(弟)、姉(妹)など家族を表す単語や、「私」ではなく「私たち」「我々」などの包括代名詞が使われる回数を数えた。
次に、人間関係を表す用語の頻度と死亡年齢の相関を示すグラフを作成した。その結果、自伝のなかで社会的役割にふんだんに言及した著者は、そうでない著者より平均で5年長生きしていることを発見した。
では、社会的つながりの恩恵を受けるには、社交家にならなければならないのだろうか。まったくそんなことはない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であり腫瘍学の研究者でもあるスティーブ・コールが、シカゴ大学の心理学教授であるジョン・カチョッポと共同で実施した高齢者研究によれば、健康状態が最も悪かったのは社会的に孤立していると感じている人であって、必ずしも友人の数が最も少ない人ではなかった。
友達は少なくても大丈夫
社会的に満足している人々と比べ、孤独を感じる人の「社会的ネットワークは若干小さいものの、劇的に小さいわけではありません。それにもかかわらず、生理的反応がまったく異なるのです」とコールは述べている。ストレス反応が起こるかどうかを決めるのは、周囲の社会の実際の大きさではなく、周囲の社会がどれほど安全か、自分の未来はどうなるのかという、脳の主観的な計算だ。
『Party of One: The Loners' Manifesto(おひとりさま──独り者のマニフェスト)』の著者であるアンネリ・ルーファスは、独立独歩を自認する人でも、ごく小さいがとても大切な社交の輪に十分つながりを感じ、満足している場合があるという。
ルーファスは言う。「私たちにはたいてい、本当に大切な関係があります。配偶者、親友、親、子、メンター、親戚などとのごくわずかな関係を除けば、友人候補やたんなる話し相手でしかないその他の人とは二度と話さなくても問題ありません。問題ないどころか結構なことかもしれません」
こうした関係は、外向的な人の築く関係とは少し違うかたちをとっているかもしれない。メールが中心で、大人数の外出は少なく、アポなしの訪問はもちろん少ない。しかし、人間関係が大切であることには変わりない。「こうしたわずかな関係を失うのはきわめて重大なことです。仲間が欲しいからというより、その人自身が(中略)私たちにとって大切だからです」とルーファスは語る。





























