住宅がこれほど資産にならないのは日本だけ…人生最大の買い物を"負の遺産"に変えた住宅政策の失敗
日本の家の寿命が圧倒的に短いワケ
Profile
資産価値の下がりにくい家の条件はあるか。住まいるサポートの高橋彰社長は「これからは、“家の性能”が価値を左右するようになる。性能と言うと、太陽光パネルや、燃費のいい給湯器など、“設備”に投資しようとする人がいるが、そうではない。投資すべきポイントは、耐震・耐久・断熱・気密の4点だ。」という――。 ※本稿は、高橋彰『結露ゼロの家に住む! 健康・快適・省エネ そしてお財布にもやさしい高性能住宅を叶える本』の一部を抜粋・再編集したものです。 (前回記事「『結露が出る家』は欧州では違法建築扱い…“断熱”の専門家が“喘息とアレルギーの温床”警鐘鳴らすワケ」につづく)
日本の住宅だけが資産にならない!
断熱・気密性能が先進国中で最も劣っているお粗末な住環境では当然かもしれませんが、現在の日本では、残念ながら住宅は資産になりません。
図表1のグラフを見てください。これは国土交通省のサイトに掲載されている資料なのですが、折れ線グラフが住宅の投資額、棒グラフが住宅資産額を示しています。
右の図の日本の住宅について見ると、両者はどんどん乖離していますが、それはつまり、住宅に投資しているのに資産にはならないということです。
そして、その差額はなんと約500兆円!
一方、アメリカは住宅投資額がほぼそのまま資産として積み上がっています。
日本の住宅の場合、個人レベルでいうと、戸建住宅は築15年程度で新築時の2割程度まで評価額が下がります。全体で見ると、投資した金額の半分以上が消えていくという事実は、我々が直面している深刻な問題です。
図表2のグラフを見てわかる通り、欧州諸国もアメリカと同様です。
イギリス、フランス、ドイツも、おおむね住宅投資額に連動して、住宅資産額が積み上がっています。
これらのグラフからわかるように、日本では欧米に比べて圧倒的に住宅が資産にならないのです。せっかく投資した額の半分以上は、資産になるどころか、どこかへ消え去っています。
住宅ローンを一所懸命返済しても、肝心の住宅が資産にならないのですから、欧米に比べて家計のバランスシートは健全になりにくいと言わざるを得ません。
日本の住宅は欧米に比べて超短寿命
ではなぜ、日本の住宅だけが資産にならないのでしょうか?
理由は1つではありませんが、最大の理由として、日本の住宅が極端に短寿命であることが挙げられます。
少し古い資料ですが、図表3のグラフを見ると一目瞭然です。欧米の住宅の平均寿命が80年~100年以上であるのに対して、日本は何と30年で建替えられてしまっています。
日本の住宅が短寿命なのにはいくつかの原因がありますが、住宅政策の考え方によるものが大きいと思われます。
住宅政策についてお伝えする前に、みなさんは、建物の運用に「ストック型」と「フロー型」という考え方があるのをご存じでしょうか。
経済活動においては資本が流れる量を「フロー」、貯まった量を「ストック」と言いますが、これを建物の運用に置き換えると、古くなった建物は壊して建て替えるスクラップ&ビルドの手法を取る「フロー型」と、既存の建物をできるだけ長く使う「ストック型」になります。
欧米では「ストック型」の考え方であるのに対して、日本では戦後から高度経済成長期にかけて、「フロー型」の住宅政策が取られてきました。