残したのは「座席・Wi-Fi・コンセント」だけ…ZIPAIRが日本で唯一の「太平洋横断LCC」で急成長できたワケ

残したのは「座席・Wi-Fi・コンセント」だけ…ZIPAIRが日本で唯一の「太平洋横断LCC」で急成長できたワケ

初フライトは貨物だけ、最初の旅客便は乗客2人だった

格安航空会社に長距離路線は不可能とされていた。それが航空業界の常識だったが、ZIPAIRは「太平洋を横断する国内唯一のLCC」として2022年に黒字化を達成。いまでは国内6位の輸送力を持つエアラインになった。初フライトから5年で、なぜ急成長することができたのか。ZIPAIR Tokyoの西田真吾社長に、航空ジャーナリストの北島幸司さんが取材した――。

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ZIPAIR Tokyoの西田真吾社長

太平洋を横断する国内唯一の国際線LCC

太平洋を横断するLCCで黒字化を実現した――。その事実だけでも、ZIPAIR Tokyo(以下ZIPAIR)というエアラインがいかに特異な存在かがわかる。

長距離を低価格で運航するビジネスモデルは、航空業界において長らく「成功しない」とされてきた。燃料費や人件費、空港使用料といった固定費の比重が大きく、短距離での多頻度ならともかく、長距離運航では採算が取りにくいからである。

特に太平洋路線は距離が長く、フルサービスキャリア(FSC)との競争も激しい。1日24時間で航空機が成田に戻ってこなければ、機材の効率的な運用にならない。過去には、欧米を中心にいくつものLCCがこれらの壁に挑み、そして撤退していった。

しかし、JALグループの一員として2020年6月に就航(新型コロナの影響で乗客ゼロの貨物便だった)を開始して以降、そうした業界の“常識”を覆すことに成功した。同年12月には成田―ホノルル線、21年12月には初の太平洋横断となる成田―ロサンゼルス線を就航した。

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ロサンゼルス線の初フライト=2021年12月25日、成田空港
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画像提供=ZIPAIR Tokyo

そして初フライトからわずか数年で、ZIPAIRは日系エアライン6位の輸送力を持つまでに成長し、2022年度から単年度黒字化を実現している。

「当初ZIPAIRの社内、特に企画部門にはJALの出身者が多かったのですが、まずは全員にJALでの成功体験を封印してもらって、自由に作りたいものを作らせてもらいました。更地に家を建てて良いと言われたのだから好きにしようと思ったのです」と西田真吾社長はすがすがしい顔でこう話した。

しかし、ZIPAIR急成長の過程は決して順風満帆ではなかった。なぜZIPAIRは国際線LCCで成功できたのだろうか。

どん底からの出発

2018年5月、JALは新たな国際中長距離型LCCの設立を発表。翌年3月、新しいエアラインブランド「ZIPAIR」が誕生した。2020年夏に予定されていた東京五輪に合わせ、就航準備を進めていた。2020年5月14日に成田―バンコク線、7月1日に成田―ソウル線を開設する予定だった。これが新型コロナでずれ込んだ。

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2025.08.18

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