100円ショップのノウハウを流用しても通用しない…ダイソーが「300円ショップ」でも店舗数1位になれたワケ

100円ショップのノウハウを流用しても通用しない…ダイソーが「300円ショップ」でも店舗数1位になれたワケ

新業態に挑戦するがダイソー自体が競合に

私たちは世間一般に「100円ショップ」業界首位の「ダイソー」を運営する会社として認識されています。確かに、ダイソーの国内店舗数は3894店舗を数え、業界他社を上回る店舗力は我々の強みの一つです。

しかし、現在は300円商品を中心とする、いわゆる「300円ショップ」の新業態でも成長しています。2018年に立ち上げ22年にリブランディングした「スリーピー」と、21年に立ち上げた「スタンダードプロダクツ」です。前者はトレンドカラーやキャラクターコラボを取り入れた、大人も使える可愛い雑貨が揃うブランド。後者はシンプルで洗練されたデザインの生活雑貨を中心に揃えたブランドで、品質や素材にこだわった商品が特徴です。スリーピーの国内店舗数は557店舗、スタンダードプロダクツは国内172店舗と多店舗展開を実現しています。

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THREEPPY(スリーピー)の立ち上げは2018年。22年に女性にターゲットを絞ってリブランディングされた
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21年開業のStandard Product(スタンダードプロダクツ)は色数を絞ったシンプルなデザインも特徴の一つ

ダイソーのノウハウをそのまま使って新業態がうまくいったわけではありません。むしろすぐには成功できず、試行錯誤を続けていました。

報道などで、「円安で百均での品揃えが難しくなったから300円ショップを始めた」と書かれることがあるのですが、事実とは異なります。大創産業による300円ショップへの挑戦は、自分がまだ学生の頃から始まっていました。当時は「三百彩館」というブランド。自分が入社した15年以降では、事業を譲り受けた「プラスハート」や、18年に立ち上げた「スリーピー」で、既存のダイソーとは異なる業態展開を模索していました。

ただ、いずれも成功とは言い難い状況でした。新店を出して数カ月は順調でも、地域によってしばらくすると30〜40%ほども売り上げが落ちてしまうのです。今振り返ると、店づくりにおいても商品においても、他の雑貨店と価格以外での明確な差別化ができていなかったからだと思います。

ダイソー自体が競合になっている側面もありました。ダイソーでは20年以上も前から多価格化を導入。「100円から、あれもこれも買えるバラエティショップ」として圧倒的な集客力を持つダイソーと差別化するには、価格以外の要素が必要でした。

自分は15年に入社した当時から、大創産業にはブランド戦略が足りていないと感じていて、デザイン性に秀でた商品を揃えた新ブランドの展開がありうると言っていました。

私たちにはダイソーで培った商品開発力や調達力があります。街の雑貨店を訪れ商品を見ると「ウチならもっと手頃な価格で提供できる」と思うことが多く、ブランド雑貨の市場に切り込める余地は大いにあると考えていたのです。また、所得の高い国は総じて雑貨も高い。ゆくゆくは海外で戦える事業に、という思いもありました。

転機となったのは、「スタンダードプロダクツ」の開業でした。

20年5月、愛知県名古屋市のビルジャン社から300円ショップを展開する「CouCou(クゥクゥ)」事業を譲り受けました。クゥクゥから移籍してきたメンバーは、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)のノウハウに長けており、空間を贅沢に使って商品をアピールし、顧客の購買意欲を高める陳列ができました。限られたスペースにいかに多くの商品を詰め込むかに注力していたダイソーとは対照的です。

多価格化をしていたとはいえ、ダイソーの商品の8割は100円。お客さまは売り場を回って必要なもの、興味があるものを迷いなく購入くださることが多いです。それが300円ショップでは行き詰まった。ダイソーではやってこなかった、テーマ性を持たせてブランドを表現する陳列をやってみようと考えて、クゥクゥのメンバーにも新ブランド立ち上げへ加わってもらうことにしました。

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2025.05.28

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