駐車場所がない、休憩できない、荷物が届かない…トラックドライバーに追い打ちをかける「2024年問題」のその後
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平日に起こったニュースの“その先”を深掘りするTOKYO FMのラジオ番組「TOKYO NEWS RADIO~LIFE~」。5月10日(土)の放送では、「物流の2024年問題」のその後に注目。トラックドライバーの労働環境の現状や、その課題を取材しました。
残業規制で「収入はこれまでより1~2割ほど減少」
TOKYO FM報道情報センターの記者による独自取材をお届けする特集コーナー「東京事件」。2024年4月にトラックドライバーの働き方改革を取り上げてから1年が経ちました。今回は、2024年度から始まった時間外労働の上限規制が、その後どのような影響を及ぼしているのかに焦点を当て、「トラックドライバーの働き方は本当に変わったのか?」を取材しました。担当したのは、鈴木晶久記者です。
トラックやバス、タクシーといった自動車運転業など4つの業種に、2024年4月から残業時間の上限が導入されました。トラックドライバーには年間960時間という時間外労働の上限が設けられたことで、物流業界では「必要なモノが運べなくなるのではないか」という“物流の2024年問題”が懸念されていました。あれから1年が経ちましたが、現状はどうなっているのでしょうか。
帝国データバンクなどの調査によると、2024年4月から8月までの輸送量は、前年同時期と比較して同程度の水準を保っています。これは、トラック輸送各社が大型車両の導入や配送ルートの見直しといった効率化を進めた成果と見られています。一度に運べる量を増やすことで、少ない運行回数でも物流を維持する取り組みが功を奏した形です。
一方で、ドライバー不足や燃料費の高騰といった課題が企業の経営を圧迫している現実もあります。26年間トラックドライバーをしている女性は、取材のなかで「(残業)時間の規制がかかると、(トラックが)走れる時間も少なくなります。そうなるとこなせなくなるものも出てきて、給料面、会社の管理、運転手の環境も悪くなる一方なのではないかと思います」と訴えます。この女性は残業規制によって、「収入はこれまでより1~2割ほど減少した」といいます。
働き方改革は“まったく進んでいない”
残業時間の削減が必ずしも働き方改革につながるとは限らないという指摘は、制度開始前から専門家間でなされていました。トラックドライバーの多くは歩合制で働いているため、時間短縮は収入減に直結します。元トラックドライバーで物流業界に詳しいライターの橋本愛喜さんによると、収入が減ったことを理由に別の職種に転職したり、副業を始めたりするドライバーも出てきているといいます。
橋本さんが2024年12月におこなったアンケートでは、「働きやすくなった」と答えたドライバーは12.2%、「働きにくくなった」と感じている人は38.1%にのぼりました。「働き方改革から1年が経過しましたけども、現状を見てみると、まったく(改革が)進んでいないと感じています」と橋本さんは自身の考えを述べました。