「週4日勤務・年収1700万円」で専門外の医師が妊婦を診る…「出生前検査」でボロ儲けする無認証クリニックの実態
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赤ちゃんの先天的な病気を知るため、出生前検査(NIPT)を受ける人が増えている。毎日新聞取材班『出生前検査を考えたら読む本』(新潮社)から一部抜粋・再編集してお届けする本連載の第1回は、出生前検査を請け負う無認証のクリニックで横行している「杜撰な検査実態」について紹介した。第2回は、無認証施設や施設で働く医師らの、衝撃の実態をお届けする――。 ※本稿は、毎日新聞取材班『出生前検査を考えたら読む本』(新潮社)から一部抜粋・再編集したものです。
とある医師が見つけた「高額求人」
無認証施設(※)に勤務する医師の多くは、産婦人科とは無縁だ。
大学教授や病院長まで務めたことのある高齢の小児科医。大学病院で放射線科医として働いた後、美容脱毛クリニックなど勤務先を転々とする若手医師。大学病院に所属しながら無認証施設でアルバイトする腫瘍内科医……。経歴を調べると、さまざまな背景をもった医師が流れ着いている。
高収入にひかれて、無認証クリニックで働いた経験のある西日本の男性医師に話を聞いた。
男性医師はもともと自分の診療所をもつ開業医だった。新型コロナウイルス感染症の流行に伴って政府が外出自粛を要請すると、来院する患者が激減。経営が行き詰まった診療所を閉鎖し、働き口を探していたところ、無認証クリニックの求人を見つけた。
週4勤務で年収は1700万円
用意されていたのは、新たに開設するNIPT専門クリニックの雇われ院長ポストだ。週4日の勤務で、年収は1700万円程度になる。この地域の勤務医の年収相場より数百万円高く、魅力的だった。
男性にとって産婦人科は専門外で、ましてや出生前検査の知識はなかった。それでも、応募するとすぐに採用された。
「たまたま他にいい人が見つからなかったようだ」
と振り返る。
研修は、同じ系列のクリニックで1日だけ行われ、検査の流れを覚えた。妊婦への説明内容はクリニックのホームページも参考にして学んだ。
その後すぐに診察を始めたものの、実務でまごつくことはなかった。クリニックが行うのは、医師の問診と、看護師の採血のみ。その問診は妊婦1人当たり5分程度で、資料を渡して、型通りの簡単な説明をするだけだった。