カレンダーの設定を変えるだけで仕事が減った…「週休3日制」を実現する代わりにやめた"たった一つのこと"
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「仕事のムダ」を減らすにはどうすればいいのか。デンマークの人類学者、デニス・ノルマークさんと、哲学者のアナス・フォウ・イェンスンさんは「面白い事例がある。あるデンマークの企業は会議の時間を3分の1に圧縮し、その分を休みに回すことで、成果を変えずに週休3日制を実現した」という――。 ※本稿は、デニス・ノルマーク、アナス・フォウ・イェンスン著、山田文訳『忙しいのに退化する人たち』(サンマーク出版)の一部を抜粋、再編集したものです。
日中6分の5は「会議の時間」
メデは少し考えてから言った。「正気でない数の会議をひらくことで、そんなふうにしているわけ。私たちの業界では死ぬほど会議をしています」
1日の仕事時間のうち、どれくらいを会議に費やしているのか。まばたきもせずにメデは答えた。「6分の5」。彼女は夜にも働かなければならないという。日中は会議が詰まっていて、最も重要な仕事ができないからだ。
トーケも、かなりの仕事時間を会議に奪われている。会議は無意味な報告に費やされることが多いという。そうすることで、最新状況を把握していることをみんなが自慢でき、メデが言うように「ボールが動いている」ことを示せるからだ。
ユニヴァーシティ・カレッジで働くトーケへのインタビューは、火曜の午後に私たちのオフィスでおこなった。本来なら、トーケは教職員会議に出ている時間だ。「別にかまいませんよ」と彼は言う。「出る必要はありませんからね」。
トーケの意見では、教職員会議もまた職場での時間の無駄にすぎない。
「きょう1日忙しかった」の証明でしかない
「そこでは何が話し合われるんですか?」私たちは尋ねた。
「いい質問です」トーケは椅子をわずかに回転させた。
「議題のなかには2つか3つ重要なものがありますが、ほかはひたすらしゃべるだけですよ。非生産的なおしゃべり。会議には正式な意思決定の権限がないんですからね」
メデと同じくトーケも、会議は核心に触れることがなく、基本的には週に1時間をつぶす手段にすぎないと感じている。
「上司はいつも、もうすぐおこなわれる合併の最新状況を30分かけて報告するんです。でも要点はいつも“何もよくわかっていない”ってことだけです」
その上司は合併についての会議にいくつか出席した様子であるにもかかわらずである。それらの会議もまた、実際にはなんの情報も生み出していないわけだ。
上司は中身のない情報をスタッフ会議で伝える。「いろいろな憶測や意見を交えて、いつも最後にはみんなの不安を和らげようと、こう締めくくるんです。“心配する必要はないから”」
つまり会議はさまざまな議題とテーマからなる猿芝居にすぎず、その目的は、自分たちが何かをしていること、事態を把握していること、情報を知らされていること、自分たちの時間には金銭的な価値があることなどを示す点にある。
ヨナスが働いていた会計事務所や法律事務所の状況と同じだ。そこでは、前の週にやったことを人に知らせるために会議がひらかれていた。会議はほかのみんなには関係のない情報を共有する場であり、その唯一の目的は、どれだけ忙しくしていたかを証明することである。