「テレワークじゃ仕事にならない」はウソ…最新研究が明らかにした「部下に出社を迫る古い上司」の大誤解
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「テレワークだとなかなかチームがうまくいかない」という声がある。本当にそうなのか。福岡大学人文学准教授の縄田健悟さんは「オンライン越しだとコミュニケーションが不十分になるという声が多いが、実証研究では必ずしもチームワークは悪化しないということがわかった」という――。 ※本稿は、縄田健悟『だけどチームがワークしない “集団心理”から読み解く 残念な職場から一流のチームまで』(日経BP)を再編集したものです。
日本に定着したテレワークという働き方
最近の職場の心理学研究においてもっともホットなテーマの1つがテレワーク(もしくはリモートワークともいいます)です。
かつてはオフィスに出社して働くのが一般的でした。しかし現在では、テレワークという自宅やカフェなどからPCとインターネットなどのICT(情報通信技術)を利用して仕事を行う新たな働き方が生まれました。現在では在宅勤務とも同義に使用されています。
このテレワークによる仕事は、チームワークや生産性にどのような影響をもたらすのでしょうか?
テレワークだとなかなかチームがうまくいかないのだという声をよく聞きます。一方で、これまでの研究は、実はテレワークがチームワークを単純に悪化させるわけではないということを示しています。
これは一体どういうことでしょうか。
本稿では、テレワークでのチームワークに関して、バーチャルチーム研究の知見に基づいて、テレワークがもたらす新たなチームの働き方の可能性を考えていきます。
まずは、日本でのテレワーク普及の近年の流れを確認しましょう。
もともとテレワークは日本では、2018年の「働き方改革」関連法の施行の中で注目されるようになりました。国民の多様化するライフスタイルを豊かにし支援するという観点から、テレワークは特に仕事とプライベートの両立(ワーク・ライフ・バランス)を支える有効な手段として捉えられてきました。
たとえば、在宅勤務を行うことで、オフィスへの通勤時間が減り、家事や子育て、介護といった家庭生活に柔軟に対応できるようになります。実際にテレワークはワーク・ライフ・バランスにポジティブな効果があることが国内外ともに多く報告されてきました。※1
しかし、日本では法的な整備がされたにもかかわらず、テレワークの導入は遅れていました。そんな日本でテレワークが一気に普及するきっかけとなったのは、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行です。感染対策としての外出自粛要請を受け、多くの企業がテレワークに移行しました。
※1 Gajendran & Harrison(2007); 金井(2021)