会社を恨むどころかどんどん好きになっていく…「ブラック企業」で働く人ほど「愛社精神」が強く、辞めないワケ
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組織で仕事をするときに、気をつけることは何か。福岡大学人文学部准教授の縄田健悟さんは「私たちは自分が働く組織の規範を容易にあたりまえだと思ってしまう。会社の常識が世間の非常識になっていないか、客観的に見ていくことが大切だ」という――。 ※本稿は、縄田健悟『だけどチームがワークしない “集団心理”から読み解く 残念な職場から一流のチームまで』(日経BP)を再編集したものです。
「空気」とは何か
集団を理解する上で「空気」は、カギとなるとても重要な存在です。
日々の生活や人間関係の中で、「空気を読む」ことは必要不可欠です。目に見えない「空気」を感じ取り、それに応じた適切な行動を取ることが求められます。
日本では一時期、「KY」という言葉が流行しました。「空気(K)を読めない(Y)」人を揶揄する表現です。この言葉が流行したという事実そのものが、空気を読むことが日々の生活でいかに当たり前のものであるかを示しています。
こうした「空気」という言葉は、もちろん組織や会社でも見受けられます。存在する「空気」に流される形で、組織が思わぬ方向に進んでしまうこともあります。同調追求が集団浅慮を起こすものだと説明しましたが、「空気を読め」が悪い方向にいくと、まさに集団浅慮(※1)を引き起こします。
こうした「空気」の影響を受けるのは、日本人だけではありません。
世界中のどの文化でも、人々は集団の中で生きています。
世界中のあらゆる集団の中に、メンバーに影響を与える「空気」がしっかりと存在しているのです。
「空気」は、社会心理学では集団規範や社会規範と呼ばれ、これらについて、多くの研究が行われてきました。
集団規範や社会規範とは、集団や社会に属するメンバーによって、それが正しいと認識され、行動や判断の基準となる暗黙のルールのことを指します。
多くの人が、知らず知らずのうちに、自分の属する集団規範に縛られながら生きています。こうした規範はいかに形成され、私たちの心や行動にどのように影響をもたらすのでしょうか。
本稿ではそのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。
※1 集団浅慮…集団のまとまりを追求するあまり、多数決や同調圧力によって、誤った結論や行動が選ばれてしまう現象。