「指示待ち」は若手社員の問題ではない…「日本語を話していても日本語が通じない」全国の企業で起きている現象
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会社のチーム内ですれ違いをなくすにはどうしたらいいのか。東京大学で上廣共生哲学講座特任研究員を務める堀越耀介さんは「現代では“共通言語”づくりが重要になっています。共通言語をつくることによって、チーム内での齟齬がなくなる理由を説明します」という――。 ※本稿は、堀越耀介『世代と立場を超える 職場の共通言語のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
これからの時代に必須な「共通言語」とは?
本書のテーマである「共通言語」とは、「メンバーが、意味とイメージを共有できている言葉」のことです。
言葉の「意味」とは、それが何を表しているのか、言葉の「イメージ」とは、その言葉を聞くとどんな感覚や場面が思い浮かぶかということです。
たとえば「遊び心」を行動指針に掲げているが、形骸化している会社があるとしましょう。
「遊び心とはどういうものか」を部署内で対話し、たとえば「すぐに思いつく答えに飛びつかず、もっと素敵なことができないかと工夫する姿勢」という意味、かつ「定番レシピを少しアレンジしてみる」というイメージだと共通理解が生まれれば、毎日の仕事のなかでこの行動指針を活かすことができるようになります。
「今日のプレゼンは、ちょっと遊び心が足りませんでしたね」というように、フィードバックの評価基準として活用することもできるでしょう。
共通言語はどんな時代でも重要ですが、特に現代では共通言語づくりの重要性が高まっています。その背景には「VUCA」とも呼ばれる、予測が難しく変わりやすい、不確定な時代状況があります。
「共通言語」の重要性が高まっている要因
その大きな要因は、技術革新の加速とグローバル化の進展です。このような状況のなかで、特に次の3つの要因によって、共通言語の重要性が高まっています。
(1)組織内のコミュニケーションの複雑化
(2)市場のニーズの変化
(3)組織形態の変化
それぞれの要因について順を追って説明していきます。
(1)組織内のコミュニケーションの複雑化
VUCAの時代には、次のような背景で複雑なコミュニケーションが求められるようになります。
(A)世代間ギャップの拡大
(B)働き方の多様化
(C)価値観の多様化
(A)世代間ギャップの拡大
長年同じ組織でキャリアを積んできたベテラン世代と、生まれたときからインターネットが身近にあったデジタルネイティブ世代では、育ってきた時代背景や経験が大きく異なるため、言葉に対する認識や価値観にズレが生じやすくなっています。
たとえば「効率化」という言葉の捉え方にも違いが生まれます。ベテラン世代は「無駄を省き、コストを削減すること」と捉えがちですが、若手世代は「テクノロジーを活用して、よりスマートに働くこと」と捉えるかもしれません。
同じ言葉を使っていても、その意味合いやそこから生じる具体的な行動が異なれば、業務を進める上で、齟齬が生じてしまう可能性があります。また、コミュニケーションのスタイルも世代によって異なります。対面での丁寧なコミュニケーションを重視する世代もいれば、チャットやオンラインツールでの効率的なやり取りを好む世代もいます。このようなコミュニケーションスタイルの違いが、世代間の誤解や摩擦を生むことも少なくありません。