「ADHDグレー」と診断された子どもたちが高確率であてはまる幼少期からの「危険な習慣」
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子供のタブレット(スマホ)依存に悩む親は少なくない。4万人以上の小学生の保護者を指導してきた井上顕滋さんは「子どもが『ADHDグレー』の診断を受けた保護者たちに話を聞いたところ、かなり高確率で、スクリーンを見る時間が非常に長かった。ただ、環境が原因なら、子供の脳の機能を改善させていく方法はある」という――。
増加する“ADHDかも?”という不安
子どもの「落ち着きがない」「衝動的」「集中力が続かない」といった様子に、不安を抱える保護者が増えています。かつては「少しやんちゃ」「ちょっと集中力がない子」という程度で片づけられていたような行動でも、今では「うちの子、もしかしてADHDかもしれない……」と深刻に悩むケースが多くなっているようです。
実際に「ADHDグレー」という診断を受けたという方も少なくありません。そのような保護者の方々に話を聞くと、かなり高確率で乳幼児期に親が与えていた環境に共通点がありました。
その共通点とは、子どもがまだ幼いうち(乳幼児期)からタブレットやスマホを与えて制限なく使用させていたり、長時間のゲームを容認してきていたりなど、スクリーンを見る時間が非常に長かったということです。
本当のADHDと「勘違いADHD」がある
ADHD(注意欠如・多動症)は、先天的な要因によって脳の機能が少し独特な発達をしていて、それが行動に表れてくると考えられています。一般的に発達障害と呼ばれていますが、実際には「発達特性」であると理解すべき部分も多々あります。
ADHDを持つ人の中には、型にはまらない「クリエイティブな発想力」や興味のあることに没頭すると発揮する「驚くほどの集中力」「好奇心旺盛な行動力」など、非常に優れた資質を持っていることが少なくありません。
社会の多様化が進む今日、そうした特性を活かして仕事や学びの場で大きく成長する方もいるほどです。実際に私が関わってきた子どもの中にも、吹奏楽の大会で金賞を受賞した子、テニスで地域トップレベルの活躍を続けている子、勉強の成績が大幅に伸びた子など、自分が興味を持ったものに集中し、素晴らしい成果を出している子がたくさんいます。
もしお子さんが先天性のADHDであると診断されたなら、いかに強みを伸ばしていくかを考え、そのための環境を与えてあげることが重要です。
一方で、先天的な要因ではなく、環境や習慣など後天的な要因によってADHDに似た症状(落ち着きのなさ、衝動性、集中力の低下など)が現れる子どもも増えています。これは「勘違いADHD」とも呼べる状態で、乳幼児期に過度なスクリーンタイムを与えられ、脳の発達に偏りが生じることに原因があるとされています。
先天性のADHDの子どもには上記のような素晴らしい強みが存在しますが、環境に原因がある「勘違いADHD」の子どもにも同じような優れた側面があるかどうかは、まだ明らかになっていません。