フジテレビはもう解体するしかない…「第三者委が公表した生々しいやりとり」に元テレビ局員が抱く既視感
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元タレント・中居正広氏の性加害を認定するなど、フジテレビの第三者委員会の報告書が波紋を広げている。元関西テレビ社員で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「報告書からはハラスメントが蔓延する社内風土が読みとれた。中でも1月17日に行われた港浩一社長の『紙芝居会見』に至る機能不全を見ると、もはや『フジテレビ解体』が現実味を帯びてきた」という――。
「経営判断の体をなしていない」
A4で394ページに及ぶフジテレビの第三者委員会の調査報告書は、驚きに満ちていた。
冒頭で、これまでプライバシーや人権保護を理由に、フジテレビの社員だったかどうかさえ明らかにされていなかった被害者について「女性Aは、元CXのアナウンサーであり、CXに入社して数年後に退職している」(報告書18ページ、以下ではページ数のみを示す)と明記された。
なにより、2023年6月2日に「女性Aが中居氏によって性暴力による被害を受けたものと認定した」(27ページ)との一文は、最大の衝撃と言えよう。「トラブル」としか伝えられてこなかった真相が、女性Aの同意によって、つまびらかにされたからである。
性加害に至るまでの経緯や、その後の対応は、まさに「経営判断の体をなしていない」(61ページ)。港浩一社長と大多亮専務(いずれも当時)ら3人の誤った認識、さらには、加害者の利益を優先させる姿勢は、二次加害であり、言語道断というほかない。
私は、今年1月17日のフジテレビの記者会見をうけて「もはや『フジテレビ解体』は避けられない」と書いたが、今回の報告書を読んで、その思いをあらたにした。なぜなら、報告書で解明された、あの会見に至る経緯が、同社の機能不全を象徴していたからである。
なぜ「わずか1カ月」で噂が広まったのか
まず、情報管理が甘すぎる。
報告書では、初期対応について「女性Aの心身の状況を考慮し、業務遂行及び情報共有範囲について当面の希望を確認」した点などを「適切に対応を進めた」と評価している(54ページ)。
しかし、女性が2024年8月末に退職してから、わずか1カ月ほどあとの10月上旬には、その離職と中居氏との関係についての噂が、「CXバラエティ制作の現場や関連する制作会社などの間で」広まり始めたという(62ページ)。
情報共有範囲を、かなり限定したまま退職したにもかかわらず、瞬く間に伝わっている。港社長(当時)が「外部に漏れたらまずい、絶対に口外するな」と強く指示していた(40ページ)のに、あまりにも保秘が弱すぎないだろうか。
もっとも、コンプライアンス推進室にすら報告しなかった理由について、編成局長は「コンプラにいる人間がそれを聞いて情報拡散しないか不安に思った」と述べている(32ページ)くらいなので、同社では、秘密を守るべき人間であっても、いや、そういう人たちのほうが口は軽いとの認識だったに違いない。