夫への不満を子どもに愚痴ってしまうのはダメですか?【藤野智哉】

夫への不満を子どもに愚痴ってしまうのはダメですか?【藤野智哉】

2022.02.01

Profile

藤野智哉

藤野智哉

精神科医

精神科医。1991年7月8日生まれ。 秋田大学医学部卒業。 精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神科病院勤務の傍ら医療刑務所の医師としても務める。

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、スポーツ、心理学など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は「自分を幸せにする「いい加減」の処方せん」が話題の精神科医・藤野智哉先生が、言いたいことが言い合えないという夫婦関係に関するお悩みに答えます。

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【お悩み】ギスギスするのが嫌で本音を言い合えない夫婦関係。子供への影響は?

2歳女子のママ
2歳女子のママ

私たち夫婦はギスギスするのが嫌で、お互い言いたいことをあまり言い合うことができません。でも、不満が積もり積もってどうしても吐き出したくなると、子どもに夫の愚痴を言ってしまうことがあります。

子どもに聞かせるのは最低だと分かっていながらやめられず、自己嫌悪です。

ギスギスさせないために我慢し、ストレスをためてしまうのは本末転倒でしょうか。うまく伝える方法やストレスの対処法を知りたいです!

【藤野先生の回答】トラブルにならない伝え方のコツは主語を自分にすること

まず、夫婦間で言いたいことが言えないというお悩みはとても多く寄せられます。

男性は「こうすればいいじゃん」と短期的な解決方法を言ってしまう人が多いのに対し、女性は「ただ聞いてほしいだけ」という人が多いですよね。

とくに夫婦間では感情が混じってヒートアップすることが多いと思いますが、そうならないためには、自分の感情をマネジメントする必要があります。

大事な話をするときにトラブルを防ぐポイントのひとつは、主語を自分にすることと、事実を伝えることです。

たとえば、夫婦ゲンカでよく言いがちな「あなたはいつもこう」「あなたはずっとそう」という言葉の「いつも」や「ずっと」は、ご自身の主観と感情ですが、主語は「あなた」と、自分ではありません。

妻が「いつも」「ずっと」と思っていても、パートナーにとっては「いつも」「ずっと」ではないかもしれませんよね。そこで行き違いが生まれます。

こう言われると相手はもちろん不快な気分になりますし、夫婦生活の中で楽しかったことや嬉しかったことも当然あったはずなのに、「いつも」「ずっと」という言葉が、その幸せな時間を全部なかったことにして、「いつも幸せではなかった」と自分自身のことも否定してしまうのです。

ですから、シンプルに「私はこう思った」「私はこうしてほしかった」と主語を自分にして、事実を淡々と伝えることでトラブルが少なくなると言われています。

伝え方にも正解はありませんが、怒りながら伝えようとしても、自分が何を話しているのか、何に怒っているのか分からなくなることもあるので、手紙に書く、メールを送るというのもひとつの方法ですね。

そして、「お子さんに愚痴ってしまう」というご相談も実は多く、とくにコロナ禍の今、飲みに行ったり、外でおこなわれる趣味の活動をしたりしてストレスを発散することが難しく、溜めこんでいる人は山ほどいます。

このような状況ですから、誰しも多かれ少なかれストレスを感じていて、誰かに話さずにはいられないのは仕方のないことですが、ご自身でも分かっているとおり、お子さん相手にパートナーの愚痴を言うのは避けたほうがよいでしょう。

今回は、簡単にできるストレスの対処法を2つご紹介します。

まずひとつめ。そもそも人が愚痴を言いたくなるのは、ご自身の中にあるモヤモヤを形にしたいから。つまり、口に出して誰かに話さなくとも、SNSの捨てアカやLINEなどのメモ機能に自分だけが見られるように書くことも効果的といわれています。

人に話して傾聴してもらうことほどの効果はないかもしれませんが、無意識のうちに不安やストレスを整理することができ、すっきりとします。日記などにも近い効果があるといわれているので、自分のやりやすい方法で試してみてください。

そして、ふたつめ。みなさん意外と忘れがちですが、どこでもできる方法が深呼吸です。

僕は「交感神経」という言葉の乱用はあまり好きではありませんが、実際人間は副交感神経が優位なときは緊張することができません。

精神科に相談に来る方は、みなさんとても肩がこっていて力が入っていますが、深呼吸をするとリラックスし、筋肉を緩めることができます。

また、筋弛緩(きんしかん)をさせるため、一度ぐっと肩に力を入れて、力を抜くのもよいでしょう。この抜けたときの感覚を覚えておくことで、つねに体の力を抜くことができます。

体をゆるめることによって気持ちが落ち着く、このアプローチ方法を筋弛緩法による逆制止といい、自分で自分の体や感情をコントロールしているという感覚も得られます。

緊張しやすいという方は、自分の体がコントロール外にあるので、自分で自分をいつもコントロールできている状態にあれば、リラックスして過ごすことが可能です。

僕自身、しゃきっとしなければいけないときも、あえて力を抜いています(笑)。

ストレスの対処法も人によって合う合わないはあるため、いろいろと試してご自身に合う方法を見つけてくださいね。

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精神科医。1991年7月8日生まれ。 秋田大学医学部卒業。 精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神科病院勤務の傍ら医療刑務所の医師としても務める。

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