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【小児科医監修】プール熱のアデノウイルスで結膜炎。目やにや目の充血はいつまで
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上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
プール熱にかかったあと、いつまでも目の充血や目やになどの結膜炎だけが治らない子どもや、片目だけ治らないケースも多いようです。今回はプール熱のウイルスでもある、アデノウイルスによる結膜炎の症状や眼科の受診について、検査や治療方法、保育園、幼稚園の登園停止期間について詳しく解説します。
プール熱とは
プール熱はアデノウイルスが原因
プール熱とは、咽頭結膜熱の通称です。咽頭結膜熱はアデノウイルス感染が原因で、発熱やのどの痛みといった症状で知られています。塩素濃度の低いプールに入ったことがきっかけでアデノウイルスが人から人へ流行していくためプール熱と呼ばれるようになったようです。しかし、実際の感染経路は、飛沫感染や接触感染によるものが大半です。
アデノウイルスには複数の種類がある
プール熱にかかったとき、発熱やのどの痛みなどの症状が引いても、多量の目やにや目の充血、かゆみなどの結膜炎だけがいつまでも治らないケースや、なかにはプール熱の流行中に結膜炎の症状だけが現れる、というケースもあります。これは、 アデノウイルスには、発熱、咽頭痛、目の充血や目やにといった症状の咽頭結膜熱(プール熱)の症状がでる種類と、目の症状がメインで、角膜穿孔など重症化の可能性もある流行性角結膜炎(はやり目)が出る種類があるからです。
流行性角結膜炎
アデノウイルスの感染による結膜炎のことを流行性角結膜炎(通称:流行り目)と呼びます。
症状
流行性角結膜炎は、多量の目やにや目の充血が主な症状です。ほかにも、やたらにまぶしがる、目がゴロゴロする、まぶたの裏にぶつぶつができるといったことがあります。
こうした症状は左右どちらか、片目から発症することが多く、その後もう片方にも同じ症状があらわれます。また、こうした症状は下まぶたに強く出ることが知られています。
ほかにも症状が進むとリンパ節が腫れる、まぶたが急激に腫れるといった症状が出ることもあります。新生児や乳幼児に感染し、悪化した場合、角膜穿孔といわれる、角膜に薄い膜が張ったようになることがあるので注意が必要です。
流行性角結膜炎はしっかり治療をしないと完治まで長期化しやすく、さらに2次感染で流行を広げやすい病気です。
流行性角結膜炎の受診は何科?
結膜炎が治らないときは眼科も受診
風邪症状のプール熱を発症した場合、小児科を受診するでしょう。しかし初めから結膜炎だけの症状だった場合や、風邪症状が治まり結膜炎の症状だけが残ってしまったときには眼科を受診しましょう。
プール熱が疑われるとき、アデノチェックとよばれるアデノウイルスの検査キットでウイルスチェックをしますが、流行性角結膜炎の診断も同様です。ウイルスが検出されれば、早期に治療が開始できるので、早めに眼科で検査を受けて適切な治療を受けましょう。
処方される薬、目薬について
流行性角結膜炎やプール熱による結膜炎の治療には、ステロイド入りの炎症を抑える目薬や、抗菌作用のある目薬が処方されます。まぶた周辺が傷ついていたり、腫れがひどい場合には目元専用の軟膏なども処方されることが多いでしょう。
子どもに目薬を点眼するときや軟膏を塗るときの前後には、しっかり手洗いと消毒をすることで、症状が広がったり、ママやパパなどへの2次感染を防ぐことができます。
また医療機関を受診する際には、受付で症状や経緯(プール熱の発症日と解熱した日、また、解熱後も結膜炎だけ治らないなど)を説明しましょう。流行性角結膜炎は、感染力が強いため、院内感染を防ぐ目的で、いつもとは違う待合室の使用を促されたり、子どもの待合室でのおもちゃや絵本の使用をとめられたりすることもあるでしょう。
回復までどのくらいかかるのか
流行性角結膜炎は、大体1週間~3週間ほどで治る病気です。ただし身体が疲れていたり症状が悪化したりして回復までに時間がかかることも珍しくありません。充分な休息と早めの治療開始を心がけましょう。
またかゆみや違和感から、目をこすったり掻いてしまったりして、目が傷ついたり、角膜に濁りが出る角膜混濁などの後遺症が出ることがあります。かゆみを強く訴える場合には診察を受けて医師に相談しましょう。
流行性角結膜炎の潜伏期間と感染力
一般的なプール熱の潜伏期間は5日から7日とされていて、流行性角結膜炎の場合の潜伏期間は8日~2週間といわれています。
発症前の潜伏期間中も感染力の強い流行性角結膜炎のウイルスですが、結膜炎の症状が治まった後も、2週間程度ウイルスがとどまり感染を広げ続けることもあるようです。
流行性角結膜炎は感染力が非常に強く、集団感染を発生させやすい病気です。学校保健安全法や保育所における感染症対策ガイドラインでは出席停止が定められています。
流行性角結膜炎の登園停止
流行性角結膜炎の出席停止期間は、医師が感染の心配がなくなるまでとあります。回復までの個人差や症状にもよりますが、1~2週間といったところです。
結膜炎だけでも登園許可はいるの?
流行性角結膜炎にかかると、登園に登園許可証が必要となります。登園許可証の所定用紙は保育園や幼稚園、受診する医療機関などでもらうことができます。
プール熱とは登園停止日数が違う
流行性角結膜炎とプール熱では登園停止日数が異なります。
流行性角結膜炎は「目やにや目の充血といった症状が落ち着き、感染の恐れがないと判断された場合」登園可となっていますが、プール熱では「のどの痛みや発熱などの代表的な症状が落ち着き、2日が経過するまで」登園停止となっています。
プール熱の主要な症状が落ち着いても、結膜炎だけはなおっていなかったり、結膜炎症状のため検査をするとアデノウイルスが残っていたりする場合には、登園停止期間が長引いたりすることもあるようです。
どちらも、患者の回復状態に合わせた出席停止期間で明確な日数は決められていません。医師の考えによっても、短い登園停止期間だったり、登園に慎重だったりすることでしょう。流行性角結膜炎やプール熱の結膜炎診断された場合には、症状がどのくらい回復したら登園を認めているか、医師の考えを聞いておくと、登園再開までのひとつの目処になるかもしれません。
流行性角結膜炎が疑われるときは早めの眼科受診を
アデノウイルスに感染するとのどの痛みや発熱のほかに、結膜炎に似た症状や、結膜炎だけを発症することもあります。主な症状は目やにや目の充血、かゆみやゴロつきなどですが、かかり始めは片目だけに発症し、他方に感染していくというのが特徴です。
また感染力が強い病気なので、登園や登校ができなかったり、家族の誰かがかかった場合には、予防のために手洗い、消毒を心がけることで2次感染を防ぐことができます。
流行性角結膜炎は処方薬の目薬で回復しますが、完治まで時間がかかります。乳幼児は、まれに悪化したり、重症化する場合があるので早めの治療開始が大切です。プール熱が流行っているときや、プール熱の症状で結膜炎だけがなかなか治らないときには早めに眼科に行って検査や治療を受けましょう。
監修:千葉智子先生(上高田ちば整形外科・小児科)
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千葉智子
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。