【対談】脳科学×知育 子どもの可能性を引き出す鍵は「知的なわくわく」
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脳科学者の瀧先生は、子どもたちが持つ可能性を引き出す鍵は「知的好奇心」だと言います。また教育者としてのべ10,000人以上の子どもたちに接してきたワンダーファイの川島氏との対談の中から、知的好奇心がなぜ子育てにおいて重要なのか、脳科学的なメカニズムを探り、その引き出し方を解説します。未就学児〜小学校低学年の子どもを持つ全ての保護者必読の貴重なインタビューコンテンツです。
知的好奇心は子どもの人生の土台になる
子どもにとって知的好奇心がなぜよいのか、知的好奇心を伸ばすために親は何ができるのかーー。今回は「知的好奇心」をテーマに、脳科学者の瀧先生と、教育者としてのべ10,000人以上の子どもに接してきたワンダーファイの川島氏に対談していただきました。
教材を作り届ける身として、「知的好奇心が引き出される瞬間」=「知的にわくわくしている瞬間」を作り出すことに組織としてエネルギーを注ぎたかったので、私たちは「知的なわくわく」という言葉で表現しています。
子どもにとって本当によい学びとは、この知的なわくわくをベースにしたものだと思います。瀧先生も著書の中で「知的好奇心と共感力を持つことが重要」とおっしゃられていて、まったく同感です。
感情と記憶には密接な相関関係があって、わくわくする気持ちは記憶力を高めます。知的好奇心は自己肯定感や主観的幸福感につながり、発達にもいい影響があるといわれています。
夢中になることに勉強と遊びの区別はない
遊びと学びも関わり合っています。かくれんぼひとつとっても、空間認識力があれば木の裏側に人が隠れていることを想像でき、それが外遊びを楽しくしますし、遊びに対する集中度の度合いもちがうのではないでしょうか。逆に、外遊びによって空間認識力を養うことができるので、ニワトリと卵のような関係かもしれません。
頭を使って遊びを楽しむことで、夢中になる体験ができますよね。
子どもが夢中になるきっかけづくりのサポートをしたいと考えて開発したワンダーボックスはアナログとデジタル両方の教材がセットになっていますが、あらゆるツールを使って子どもたちにわくわくして夢中になってもらいたいんです。
好奇心や思考力は子どもが本来持っているものなので「伸ばす」というより「引き出す」イメージです。まずは出会わないと何かに夢中になったり好きになることはないので、引き出すきっかけになるようなわくわくするものをたくさん提供したいです。
色や造形、数字や論理的なものなど、子どもによってそれぞれ夢中になるものはちがうので、選択肢があるのはよいですね。
私の場合は、数字遊びが好きな子どもでした。たとえば車で移動するとき、子どもは退屈してしまうと聞きますが、私は窓から見える車のナンバープレートの数字を足して「これなら10になる」「掛け算したら…」と考えていて退屈することはありませんでした。
公園で石ころを見て「真四角の配置になっているな」と想像したり、ちょっとずれていたら配置を直して図形を作り、密かに喜ぶような子どもでした(笑)
ワンダーファイのイベント時、「この会場には真四角を5個隠しました」と子どもに伝えると、みんな夢中になって探してくれました。そのイベントのあと、保護者から「子どもが家に帰っても家の中にある真四角を探して、楽しんでました!」とフィードバックをもらったことがありました。
勉強というより、日常生活の中で今までは見過ごしていたことを再発見して、好きなことを増やしていくきっかけづくりをしています。
アート思考と「ぼーっとすること」の大切さ
役に立つか立たないかではなく、日常の中でふと意識をひっかけるという意味では、アートに似ています。
思考力をテーマに作ったコンテンツにも、アート要素があったことに気付かされました。例えばワンダーボックスの「そっくりさがし」では、2つの画像のそっくりなものをできるだけたくさん挙げるコンテンツですが、類似性を見出すことは、創造性やアートにもつながりますね。
そうですね。最近では、アート思考を学ぶビジネスパーソンも増えていると聞きます。人とちがう視点を持つことや美的センスがビジネスをする上でも重要な時代なのかもしれません。
私は子どもの頃に親がよく美術館に連れて行ってくれたので、たくさん絵を見ました。抽象画を見て「これは一体何なんだろう」と意識にひっかかっていたことも、いつのまにか好奇心につながっていたように思います。
知的好奇心はもちろん大人になっても伸びますが、やはり自他の区別がつく2~3歳くらいからは特に伸びやすいといえます。大人からするとそうは見えなくても、子どもなりに一生懸命外の世界について考えたり感じたりしています。
私はよく保護者向けの講演会で「子どもがふざけたり、脱線したり、ぼーっとすることへの一定の許容をしてあげてください」とお伝えしています。
それ、最高ですね(笑)
大人はやめさせたりしますが、子どもが自発的に目的もなく心から楽しんでいる行為なので、ある一定の許容をしてあげたらよいと思います。
世の中がなんだか忙しくて「タイパ」という言葉があったり、共働き世帯も多いのでつい保護者も「早く片付けなさい」みたいに急かしがちです。
しかし実は、ぼーっとすることは脳科学的にも大切な時間です。その間、周囲をモニタリングしたり、思考をつなぎ合わせたり、物事を記憶しているともいわれています。
ある教え子がいつも、じっとダンゴムシ見てたり、夕焼け空をぼーっと見ていてなかなか教室に来ないのですが、あ、この子最高だなって思いました。
自然の美しさに圧倒されているのかもしれませんし、子どもなりにいろいろなことを考えているのでしょうね。
子どもに苦手意識を植え付けないように
子どもが何かに興味を持ったり夢中になっていたら、親はそっと背中押してあげる存在でありたいです。
ブレーキをかけすぎないことが大切だと思います。保護者の何気ない一言はとても重要で、「あなたはこれが苦手ね」と言われた子どもは自分でもそれを苦手だと認識してしまい、挑戦しなくなってしまいます。
学校の先生のひとことで人生が変わることもあります。大人に言われたことを自分で意識づけしてしまうのでしょうね。
苦手と言うのではなくポジティブな裏返しの言葉をかけるといいですね。うちの母はそういうのがすごく上手で、私が口答えすると怒るのではなく「あなた、口達者だから弁護士になりなさい」って言われて、実際に弁護士を目指した時期もありました。
子どもにとって、親のひとことはとても大事です。もし、子どもにやってほしい教材があるなら、リビングなど常に目に届く身近な場所に置いて「やってみる?」と声かけると単純接触効果も相まってうまくいくかもしれません。
子どもの「夢中」のきっかけになるワンダーボックス
ワンダーファイは、子どもが圧倒的にわくわくする知的体験を目指して、教材を開発しています。
ワンダーボックスは、家庭でやるにはちょっと難しいプログラミングや図形、アートなどの体験ができる教材です。「デジタル」と「アナログ」のハイブリットで、子どもが何かに夢中になるきっかけを作ります。
また、子どもそれぞれの発達段階において大切なことを楽しみながら、感じ、考え、吸収していけるように「年代ごとの特徴」を意識して教材をデザインしています。
ワンダーボックスではいろいろな教材に挑戦する中で、子どもたちの「知的なわくわく」を存分に引き出し、子どもたちが自分らしく伸びていく手助けをしていきたいと思います。
保護者からの疑問に答えます!
最後に、瀧先生と川島氏に保護者からの素朴な疑問にご回答いただきました。
質問①
3歳の子どもがいます。自分の好きなことには集中しますが、少しでも難しいことがあるとすぐに諦めてしまいます。嫌がることに対しても挑戦させた方がよいのでしょうか。
シンプルに子どもが楽しむことをやらせてあげてください。何かに夢中になった経験をすることで、「夢中になるプロセス」を覚えていき、他に夢中になれることが見つかるかもしれません。好きなことを徹底して楽しませてあげてください。
私もとにかく楽しいことをやらせてあげるのが大事だと思います。もし、どうしても子どもにやってほしいことがあるなら、保護者以外の身近な大人や年上のお友だちが楽しんでいる姿を見せてあげるとよいかもしれません。
質問②
ワンダーボックスは「デジタル」と「アナログ」のハイブリット教材ですが、デジタル教材との上手な付き合い方を教えてください。
デジタルのメリットとしては、アナログで物理的にできない仕掛けなどがあること。これからの時代、デジタルリテラシーは必須なので、程よい時間で目が疲れない程度にうまく付き合うとよいのではないでしょうか。
ワンダーボックスは保護者が使用時間を設定することができます。デジタルはあくまでツールなので、できるだけメリットを享受でき、デメリット回避できるような使い方をしてもらえたらと思います。
子どもの「知的なわくわく」のきっかけを広げよう
子どもの知的好奇心の大切さについて脳科学と教育の観点から語っていただいた対談では、わくわくする気持ちや夢中になることが、子どものさまざまな可能性を引き出すことがわかりました。
子どもが本来持っている力を引き出すワンダーボックスを、ぜひ試してみませんか。
知的好奇心は人生において大きな土台でもあり、子どもの将来の学業成績や仕事のスキルにもつながると言われています。知的好奇心を持つことで、共感性や社会性などを育むことができますし、自己肯定感や審美眼(美しいものや価値あるものを見極める力)も養うことができます。
子ども時代を振り返ると、私の場合は図鑑と身の回りの自然がきっかけで知的好奇心が広がりました。寝ても覚めても図鑑を見て、実際に自然の中で生き物に触れて、釣りをして、星を見て過ごしました。
これは脳科学的に見ると、接触すればするほど対象物を好きになる「単純接触効果」や知っていることで受け入れやすくなる「流暢性効果」と呼ばれるもので、私の場合は図鑑と自然と行き来して、どんどん知的好奇心が深まっていきました。