【小児科医対談】幼児期は特に注意!鉄が不足すると病気のリスクに?
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今回の記事では、日本の子どもの鉄不足について小児科医、整形外科医、管理栄養士の3人の専門家に話を伺いました。前編では医師の2人と鉄不足が子どものあたまや体の発達に及ぼす影響を紐解きます。
幼児期の鉄不足はあたまや神経の発達に影響する?
幼児の成長に大切な栄養素のひとつである「鉄」ですが、日本の子どもの多くが鉄不足の状態にあるということをご存知でしょうか。
小児科医、整形外科医それぞれの立場から、千葉智子先生、千葉直樹先生は「とにかく幼児期から鉄をしっかりとることが大切」といいます。
整形外科医・千葉直樹先生
「鉄は、特に脳や神経の発達に必須の栄養素です。鉄欠乏状態が長引くと、発達への長期的影響が懸念されます。そのためにも新生児のうちからの鉄欠乏症の予防が重要です」
小児科医・千葉智子先生
「予防医学が比較的発達しているアメリカでは、母乳育児の赤ちゃんは特に鉄不足が予想されるので、生後4カ月から食事で鉄が摂取できるようになるまで、鉄シロップを内服させることを小児科学会が推奨しています。それくらい大切な栄養素なんです」
子どもの顔色不良や落ち着きのなさは鉄不足かも
日本の子どもの「鉄不足」の現状
――まずは小児科医の千葉智子先生に話を伺います。子どもの貧血や鉄不足が深刻というのは本当なのでしょうか。
千葉智子先生
「日本ではあまり正常で症状のない子どもの血液検査のデータが整ってないのですが、日本の小児の10-15%が軽度の貧血というデータがあります。(*1)
(*1)参考文献
出典:
● 日本内科学会雑誌 第99巻 第 6 号・平成22年 6 月10日/II.鉄欠乏/2.小児と思春期の鉄欠乏性貧血/加藤 陽子
貧血とは病気の名前ではなく、ヘモグロビンの値が11未満で、血液が組織に必要な酸素量を運搬できなくなった状態のことをいいます。
妊娠後期に母体から赤ちゃんに移行してきた鉄は、生後6カ月以降に壊れてしまいヘモグロビン値が減少してきます。
それを補うのが食事やフォローアップミルクですが、鉄が十分に摂取できないと鉄欠乏状態・鉄欠乏症貧血になります」
「鉄不足」のおもな症状とセルフチェック法
――鉄が欠乏すると、どんな症状が出るのでしょうか。
千葉智子先生
「以下のような兆候があれば鉄不足を疑ってもよいかもしれません」
――鉄が欠乏することによってどのようなリスクがあるのでしょうか。
千葉智子先生
「認知機能、言語学習機能、記憶力などには鉄分が関与しているといわれています。(*2)そういった発達障害的な症状に対して鉄を処方すると改善が見られたという結果もあります」
(*2)参考文献
出典:
●加藤陽子/『日本内科学会雑誌』第99巻第6号・平成22年6月10日/「2.小児と思春期の鉄欠乏性貧血」
――子どもの鉄が足りているかどうか、どのようにチェックしたらいいのでしょうか。
千葉智子先生
「もし子どもの顔色が優れない、落ち着きがないなどの様子が見られたら、鉄の欠乏を疑ってみてもよいのかもしれません。その場合、病院での血液検査が有用です。
ご家庭でできる簡単なチェック方法としては、子どもに『あっかんべーしてみて』と瞼の裏側を見せてもらってその色を見てみましょう。色が白いと貧血の可能性があります。
各ご家庭で、子どもに鉄が足りているかどうか、ぜひチェックしてみてください」
「鉄」はあたまや神経の発達に欠かせない栄養分
だるさや疲労感の増加は鉄不足かも
――次に、整形外科医の千葉先生に話をお聞きします。筋肉や骨、神経の発達に鉄はどのような働きをしているのでしょうか。
千葉直樹先生
「筋骨格系の発達に対して、鉄は酸素運搬やエネルギー産生に関わる働きをしています。もし鉄が不足すると、以下のような症状が出ます」
千葉直樹先生
「また、鉄は神経系の発達にも影響を及ぼします。遺伝や生存、繁殖にはなくてはならない物質で、脳内での鉄の機能は多岐にわたり、数多くの補助的な役割を担っています」
子どもの発達への影響
――鉄不足によって引き起こされる具体的なリスクについて教えてください。
千葉直樹先生
「鉄不足や鉄欠乏症で以下のような症状が起こるリスクが高まるという論文も発表されています(*3)」
(*3)参考文献
出典:
● 慶應義塾大学医学部小児科/『小児科臨床』72:193.2019/「乳児期の鉄欠乏についてー神経発達、神経症状を中心にー」
千葉直樹先生
「鉄不足による子どもの発達への影響が懸念されます」
「鉄」は子どもの健やかな成長に欠かせない栄養素なのですね。
後編では、どのように「鉄」を摂取すると良いのかを管理栄養士の金高先生に詳しく伺います。
後編はこちらから↓↓↓
2023.07.28