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バービーが考える、ルッキズムを引き継がない、次世代の子育て【後編】
体型や容姿などで人をジャッジし、人の価値に優劣をつける、「ルッキズム(外見至上主義)」という言葉をよく聞くようになりました。今回は、さまざまな女性の体の悩みに向き合った下着をプロデュースするなどして、ボディポジティブ(そのままの自分の体を愛そう)というメッセージを発信する、お笑い芸人のバービーさんに、今の彼女を形作った幼少期のこと、芸人としての容姿いじりに対する考え方、そして自分の体との向き合い方などについておうかがいしました。
「我が子が容姿コンプレックスを抱いたり、心無い言葉に傷ついたらどうしよう」
そう考える保護者は少なくないはず。同時に、子どもに対して
「ありのままの見た目にポジティブに向き合ってくれたら」
と思いながらも、どんな言葉をかけたらよいかわからないという方もいるのではないでしょうか?
外見で人の価値をジャッジし差別するルッキズム(外見至上主義)に、自らが悩んできた保護者は、葛藤も多いはず。
今の子どもたちを見ていたら、保護者が時代を変えていこうと努力しているのがわかる、と語るのはエッセイの執筆やさまざまな女性の悩みに対応した下着のプロデュースに携わる、お笑い芸人のバービーさん。
「自分の身体を愛する=ボディポジティブ」をテーマに、前編では今の彼女を形作った幼少期のこと、芸人としての容姿いじりに対する考え方、自身の体との向き合い方についてお伺いしました。
後編では、保護者たちが不安に感じる、子どもたちへのルッキズム(外見至上主義)の伝え方やその中での自己矛盾に対するバービーさんのアドバイス、そして自身の理想の子育てについて語っていただきました。
親世代がルッキズムと向き合うことで子どもの意識も変わる
ーーわが子には「どんな容姿でもありのままのあなたがステキだよ」と伝えつつ、保護者自身が体型や容姿にどうしても自信が持てず「ママ太っちゃった」などと自虐ワードを口にしてしまう。その言動が子どもに「太っているとダメなの?」とルッキズムを植え付けてしまうのではないかと悩む方もいるようです。このような自己矛盾とどのように折り合いをつけていけばよいでしょうか。
自分には子どもがいないからなんとも言えないのですが、最近は街ゆくお子さんに気づきをもらうようなシーンがすごく多くなったように思います。
というのも、近年、まったくジェンダーバイアスのかかっていないピュアな言葉や行動に遭遇することが増えていて。それって、保護者自身が悩みながらも「ルッキズムはよくない」という意識で、次の世代を変えていこうとしている結果じゃないですか。
楽観的かもしれないけれど、私は親御さんたちが「子どもにルッキズムを植え付けたくない」と意識して、その結果がお子さんの言動にちゃんと表れているなら、自分の中に多少矛盾はあっても全然大丈夫なんじゃないかなと思うんですよね。それだけでもう十分ですよ!
実際に芸人でも私より下の世代たちは、容姿いじりではないところでクリエイティビティを発揮していて、社会は確実に彼ら彼女らが生きやすい、活躍しやすい社会に変わっているなと感じるので、すごくいい流れだと思っています。
もしも自分の子どもが「整形したい」と言ったら…バービーの回答は?
ーー今後もしバービーさんにお子さんができたとして、自分の子どもが「私ってブスなの?」「整形したい」など、自分の容姿にまつわるネガティブな言葉を口にしたとき、どんな風に声をかけたいと思いますか?
想像でしかありませんが、どういう風に感情が動いているかは聞きたいですね。
「自分の顔が嫌いだから整形したい」と言われたら、一緒に整形について考えるかもしれないけれど、なにかを教えるというより、まずは「傷ついた」「悲しい」という気持ちを受け止めたい。
それから、子どもが整形したいと思う理由や、たとえばブスと言われたのならそのことでどう思ったのか、共有してほしいと思います。
見た目を変えて誰かを見返したいのか、気持ちを強く変えたいのかをしっかり聞いて、そのうえでどんな方向にいくのか見守ります。
ーー娘から「大好きな韓国アイドルたちも整形してるから私もしたい!」と言われた、という声が保護者からあがっていて。「する必要ないじゃない」と言っても「みんなしてるのに何がいけないの?」と反論されて、何も言えなかったと。頭ごなしに否定せず、バービーさんのようにまず感情に向き合ってあげることが重要なのかもしれないですね。ちなみに、お子さんが「整形したい」と言ったら、パートナーとはどのようにコミュニケーションをとろうと思いますか?
私のパートナーは、子どもが整形したがったら「いいと思う」って言うんじゃないかな。
一方的に整形を勧めるのではなく、その結論にいたるまで家族みんなで一緒に考えて、納得できれば私も引き止めることはしないと思います。
以前パートナーが、幼い姪っ子に対して「前髪は短いほうがかわいいよ」と言ったことがあり、そのときは「女の子は〇〇のほうががかわいいというあなたの価値観を押し付けないで」と反論したことはありましたね。
でも「世間には事実としてルッキズムがあるから、ずっと無菌状態でいられるわけではない」というのが彼の言い分。第三者に言われて傷つく前に、身近な自分が指摘してあげる、という気持ちだったようです。
彼の言い分も一理あるのかもしれませんね。夫婦はまったく同じ考えでなくても、考えが違う人間が2人いることでお互いに気付きがあったり、補いあったりしていくことがちょうどいいバランスなのかなという気がします。
世界の多様な価値観に触れさせながら子育てをしたい
ーーバービーさんは「幼少期、容姿のことを他人から言われていたかもしれないけどあまり気が付かなった」とのことでしたが、自分の容姿を悪く言われて傷つくことがあったとしても、バービーさんのように「自分の価値観と人の価値観は根本的に異なる」というブレない考えがあれば、ポジティブに変えられるのかなと思いました。そこにたどり着くまでの乗り越え方や、発想の転換の仕方について意識されていることはあるのでしょうか。
「自分は自分」「他人は他人」という考え方は、もともとの生まれ持った性質もあるかもしれませんが、海外に行ったり、さまざまな国籍の人と接する中でも養われた気はしています。国が違えば美の基準だって違うじゃないですか。
そう考えると今自分のいるコミュニティの基準だけが真実、正解じゃないんだなと思えるようになりました。その客観的な視点を一つ持っていると強いかなと思います。
ーーバービーさん自身、留学や多国籍な人の集まるお店で働いてきた経験が生きているんですね。
あとはめちゃめちゃ壮大かもしれませんが、北海道の大自然の中で育ったのは私にとってはすごくよかったと思います。
学校から帰ろうしたら突然、大雪でホワイトアウトが起きて帰れないみたいな(笑)。そういう自然の理不尽さや壮大さみたいなものの前では、動物も人間も平等で、厳しいのは人間社会だけじゃないという思いはつねにありました。
だから思春期も自分の容姿のことより「命とは?」とか「死とは?」ということばかり考えていたのかもしれませんね。
ーーでは最後に、もしもお子さんが生まれたらどんな風に育てたいという今現在の希望はありますか?
今パートナーとよく話しているのは、バックパッカーしながら育てたいということ。
日本で生まれても、いろんな国のいろんな価値観に触れながら、幼少期を過ごせたら、世界の感覚を持てるし、すごく多様で膨大なデータバンクを持って生きられそうじゃないですか。実現するかどうかはさておき、そういう夢想をしております。
バービー(フォーリンラブ)
1984年北海道生まれ。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。
男女の恋愛模様をネタにした「イエス、フォーリンラブ!」の決め台詞で人気を得る。現在ではTBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティを勤め、TBSひるおびコメンテーターや地元北海道の町おこし等にも尽力。著書には「本音の置き場所」講談社より発行。バービーのプロデュースで話題を生んだピーチ・ジョンコラボ下着が好評につき第3弾を発売。YouTube「バービーちゃんねる」では320万視聴回数を超える動画もあり好評配信中。
You Tube「バービーちゃんねる」
https://m.youtube.com/c/barbie0126
<取材・執筆>KIDSNA編集部