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【ママの体と向き合う】丸まり姿勢が授乳の負担だった
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個人差があるママの体において、自分にとってのベストな選択はさまざま。助言や迷信を鵜呑みにしたり、「やらなければ」という強迫観念で自己判断のケアをしていないでしょうか?この連載では、専門家を通してママが自分自身の体と向き合うためのガイドとなる正しい知識を発信していきます。第2回は、姿勢の観点から見た授乳の盲点について、虎ノ門カイロプラクティック院の碓田紗由里先生に聞きました。
自分の授乳姿勢はどうなっている?
子どもを出産すると慌ただしくはじまる授乳。医療機関や自治体から配布される育児についての資料や、育児書などでは「授乳中は赤ちゃんと目を合わせましょう」というアドバイスがよく見られます。特に初めての出産で育児に慣れない時期は、上手な飲ませ方や授乳姿勢が分からず試行錯誤する中で、こういった赤ちゃんとのコミュニケーションに悩むママも多いでしょう。
「赤ちゃんに意識がいくあまり、自分の体を後回しにして、無理な授乳姿勢をとっているママも多いです」と話すのは、虎ノ門カイロプラクティック院の碓田紗由里先生。(以下、碓田先生)
まずは、産後ママが陥りやすい姿勢と、授乳時のポイントを教えてもらいました。
ママの日常は何もかも「猫背」
「育児をしているママの姿勢は、抱っこやオムツ替えをはじめ、何から何まで“丸まり姿勢”。授乳中は特に、赤ちゃんに合わせようとするあまり背中が丸まった猫背になりがちです。
第一子の場合は、授乳中の姿勢も定まらず慣れない中で行うため、無理な姿勢でがまんしているママもいるのではないでしょうか。
妊娠中は、大きなお腹を支えるため、どうしても猫背になりがちです。悪い姿勢を続けていると、骨盤が歪んだり、猫背が固定されてしまいます。
産後の体型戻しで、猫背の何が問題かというと、呼吸時の酸素量が減り、基礎代謝が落ちてしまうということ。その状態では、全身の筋肉をうまく使うことができないため、運動をしてもあまり効果がありません。
また、猫背を放っておくと、首を痛めたり肩こりや腰痛が起きるだけでなく、背骨から出ている自律神経が影響を受け、寝ても疲れが取れない、胃もたれをはじめ、母乳の出が悪くなったり詰まったりするトラブルの原因にもなりかねません。
最悪、背骨の前の部分がぺしゃっとつぶれると圧迫骨折です。ご年配の方の場合はよく聞きますが、近年、産後のママに増えていると言われています。猫背の習慣だけでこんなにデメリットがあるのです」
ママの座り方だけじゃない!?授乳姿勢の盲点
座って授乳する際のOKとNG
私たちが楽だと思ってしている姿勢は、楽だと感じていながら実は体には負担になっていることが多いと碓田先生は指摘します。体に負担のかからないOK姿勢と、そうではないNG姿勢はどのようなものなのでしょう。
「体に負担のない姿勢というのは、背すじを伸ばし、骨盤を立てて座った状態です。猫背のクセが強い方は最初はつらいと感じるかもしれませんが、楽な姿勢と体に負担のない姿勢は別物。正しい授乳姿勢を習慣づけることで、次第に体感としても楽になってくるはずです」
ママがよくやってしまうNGの姿勢が、横座りでの授乳。骨盤が左右に歪むだけでなく、背骨も歪んでしまうのだそう。
「他に多いのが、正座を左右に崩したお姉さん座りです。背骨は真っすぐな状態なのですが、足を左右に開いているため骨盤の下側が開いてしまいます。産後、骨盤が開いた状態のままにしておくと、生殖器につながる神経がうまく機能せずに悪露が長引いたり、生理痛がひどくなったりします。2人目が妊娠しにくくなる原因にもなると言われているので注意が必要です。産後は骨盤を締めて整える必要があるのに、まったく反対のことをやってしまっている状態なのでおすすめできません。
それから、体育座りも猫背になりやすいので要注意です。背骨が丸まってしまうと、呼吸が浅くなり、基礎代謝が落ちてしまうので、脂肪が燃えにくく背中の肉が戻りにくくなります。背すじを伸ばすことで基礎代謝が上がり、肩甲骨の間にある褐色脂肪細胞も活性化して痩せやすくなります。
体に負担がかからないという点で言うと一番良いのが正座なのですが、授乳を正座で行うのは大変なので、おすすめは、椅子に座るかあぐらをかくこと。あぐらができない場合は、片膝立てあぐらか、長座といって足を伸ばした座り方もOKです」
しかしながら、ただあぐらをかけば、ただ椅子に座ればOKではないと碓田先生は言います。
「椅子に座るときに多くの方がやっているのが、骨盤が後ろに倒れた『仙骨座り』という座り方です。『仙骨』が座面に当たることで、腰だけでなく背中全体も丸まり、腰や背中が痛くなったり、首・肩が凝ったりします。また、産後はお尻の筋肉が弱っているため、間違った座り方をしているとお尻がさらにのっぺりと伸びて、形が崩れてしまいます。腰の骨にも負担がかかるので、椎間板ヘルニアになってしまうこともあるんです」
「椅子に座るときは、骨盤の一番下、先端がとがっている『坐骨』を座面に当てて、骨盤を立て、姿勢を伸ばした状態で授乳をするのがベストです。骨盤を立てた座り方は、正しい姿勢をキープしようと筋肉を使っている状態なので、実は筋トレになっているんです。筋肉を使うことによって基礎代謝が上がると脂肪が燃焼され、産後の体型戻しにもつながります」
授乳時の手首の使い方にも注意
また、多くのママが産後に悩まされる手首の腱鞘炎。授乳では、ママの手首の使い方にもコツがあるそうです。
「赤ちゃんを抱っこするとき、手首をくの字に曲げた状態にしている方が多いです。妊娠中から出産にかけて分泌される、全身の関節を柔らかくするホルモン『リラキシン』によって、手首も柔らかくなっているので痛めやすいのです。授乳に限らず、沐浴など、赤ちゃんの頭を支えるときに、手首を内側にぐっと曲げている状態。こういった手首の使い方が、腱鞘炎の原因になってしまうんです
「手首はなるべくまっすぐにして力を抜く状態がベスト。まずは両手を真横に伸ばし、手の平が外側になるようにくるっと回します。そのまま肘の向きは変えずに、腕を折りたたみ、手の平だけ内側に戻るように手首だけをくるっと返してください。あとは腕をおろして力を抜きます。これが手首を痛めない基本の状態です。
そうすると腕の筋肉が柔らかいままになるかと思います。そこに赤ちゃんの頭が乗るようになるので、赤ちゃんも居心地よくおっぱいを飲んでくれると思いますよ」
また、人によっては右側と左側で授乳しやすい方があると碓田先生。楽な方でばかり授乳をしていたり、赤ちゃんの体と顔がねじれた状態で授乳をしていると、赤ちゃんの姿勢にも影響があるので注意が必要です。
実践!正しい授乳姿勢の方法
「骨盤を立てて座ることが大切ですが、感覚としては骨盤を立てられているかどうか分かりにくいため、簡単に骨盤が立つ座り方から教えます」と碓田先生。
座った状態と、地面にあぐらをかいて行う2つの授乳姿勢を教えてもらいました。
骨盤が立つ座り方
「まず、椅子の手前側に座って1回上体を前かがみにします。そのまま後ろにお尻を後ろまで下げて、体を起こすと背もたれが骨盤が倒れないように支えてくれます。この状態が骨盤が立った正しい姿勢。背筋は自分で伸ばしていただくか、背もたれが90度近くあればそのままよりかかってもらっても大丈夫です」
1.椅子の手前の座面に腰をかけ、前かがみになった状態をキープしたままお尻を後ろまで下げる
2.体を起こす
正しい授乳姿勢
「椅子に座って授乳する場合は、先ほどのステップで骨盤を立てた状態で座り、背筋を伸ばします。そのあと、授乳枕やタオルを重ねて使って赤ちゃんの顔が胸の高さまでくるように調節しましょう。
高さがきちんと合っていれば、赤ちゃんと目を合わせる際も、首や背中を無理に曲げて覗き込まずに済みます。
授乳をしている数十分の間、ずっと目を合わせなくても、時々すっと目の前のテレビを見るなどしてもいいと思いますよ」
「床に座ってあぐらをかいた授乳姿勢では、壁を背もたれにすると姿勢が保ちやすいです。
椅子、あぐらの場合ともに、手首は負担がかからないようまっすぐに。授乳枕をひじ掛けとして使えると、全身まったく力をかけずに授乳できます」
ママにも赤ちゃんにも負担のない授乳を
「赤ちゃんのお世話に追われ、自分の体のことを後回しにして、我慢してしまうママは多いのではないでしょうか」と碓田先生は言います。
「特に間違った姿勢習慣は、じわじわと体に歪みをもたらし、正しい状態が“つらい”、歪んだ状態が“楽”になってしまいがちです。
授乳は毎日のことだからこそ、一回一回、少しでも自分の体の状態を見て、自分にも赤ちゃんにも負担がかかってないかなと意識してみてください。
正しい姿勢がつらいなら、その時は一度、自分が楽な姿勢にしていったん休む。心も体もうまくリセットしながら、今しかできない授乳の時間を大切に過ごしましょう」
Profile
碓田紗由里(虎ノ門カイロプラクティック院)
虎ノ門カイロプラクティック院 副院長。カイロプラクター、姿勢教育指導士。これまで女性を中心に述べ1万人の施術をしてきた経験と自身の妊娠・出産の体験から、出産前後の女性がかかえる体形変化や体調不良を改善するためのオリジナルプログラムを開発・提案している。取材時は第3子妊娠中。著書に『産後骨盤リセットダイエット』(かんき出版)。
<取材・撮影・執筆>KIDSNA編集部