【ママの体と向き合う】骨盤調整の本質は姿勢にあった

【ママの体と向き合う】骨盤調整の本質は姿勢にあった

個人差があるママの体において、自分にとってのベストな選択はさまざま。助言や迷信を鵜呑みにしたり、「やらなければ」という強迫観念で自己判断のケアをしていないでしょうか?この連載では、専門家を通してママが自分自身の体と向き合うためのガイドとなる正しい知識を発信していきます。第1回は、産後の悩みとして必ず上位にあがる骨盤調整について、虎ノ門カイロプラクティック院の碓田紗由里先生に聞きました。

骨盤だけではない!?ママの体の変化

体型を戻したかったら、体重を落とすことではなく“体力をアップさせること”が大切

「骨盤調整を行う場合は、産後のまだぐらぐらな状態の1、2カ月以内は特に整えやすいですが、女性は子どもを産んだら一生産後。ブランクがあっても、気づいたときから始めてみましょう」

こう語るのは、カイロプラクター、姿勢教育指導士としてこれまで多数のママを見てきた虎ノ門カイロプラクティック院の碓田紗由里先生。(以下、碓田先生)

出産は、女性の体の変化におけるビッグイベント。10カ月の妊娠期間を経て、壮絶な出産をその身ひとつで乗り越えたママたちには、体のあらゆる箇所が痛み、動くこともままならない人もいれば、回復が早く、すぐに動けるようになる人もいたりと、産後の経過も千差万別です。妊娠や出産を通して、体が大きく変化するということは、すべて産後ママに共通すること

中でも骨盤は、変化が目に見えないパーツでもあり、産後の女性が特に気にする場所です。

・なんとなく歩きにくくなった

・妊娠前のジーンズのサイズが履けなくなった

こんな悩みを抱えるママもいるかもしれません。赤ちゃんのお世話で手一杯のなか、自分の体のことはおそろかになってしまう…というママも、そのまま放っておくと、歪んだ骨盤が体型が戻らない大きな原因に。

プロの手を借りて、歪んだ骨盤を正常に戻すのは必要…ですが、骨盤調整を受けるだけでは不十分です、と碓田先生。一体どういうことなのでしょうか?

まずは、産後の骨盤がどういう状態になっているのか教えてもらいました。


産後の体は全身がゆるゆる

画像
歩くときや座るときに動く仙腸関節はこの隙間の部分。

「骨盤は、出産によってほとんどの方が歪むとアメリカの研究データで言われています。骨盤が開くってどういう状態?とみなさんよく聞かれますが、もともとは逆三角形に近い形をしている骨盤の下の部分が赤ちゃんが通ることで開き、四角い形のような状態になるということ。

また、主に歩いたり座ったりするときに動く仙腸関節や腰仙関節が緩み、骨盤全体の関節がぐらぐらになるため、歩き方やボディラインにも変化が起こります。骨盤の下側が開くとガニ股になり、ペンギンのようなペタペタ歩きになる方が多いです。骨盤自体が四角い形になるため、お尻も四角く見えてきまし、子宮を守るためにお尻まわりにお肉がつきやすくなり、ウエストのくびれもなくなっていきます」と碓田先生。

産後の姿勢が骨盤を制す

全身に作用する妊娠ホルモン

「出産そのものによっていきなり骨盤が開くと思う方が多いのですが、これは勘違い。いきなり開くのではなく、赤ちゃんが産まれてきやすいように関節をゆるめる『リラキシン』というホルモンが出るので、妊娠中から少しずつ開いているんです」

リラキシンは、妊娠7~10週で血中に現れ、妊娠中期に最高値になります。骨盤だけでなく全身の関節を柔らかくする働きがあります。利き手などの影響によるもともとの体の使い方のクセや、赤ちゃんのお世話で慣れない態勢を取ることで、脚を組んだり横座りなどの姿勢習慣の悪さが骨盤の歪みにつながってしまうのだそう。

「つまり、このホルモンが出ているうちは、ある意味、骨盤を正常に整えるいい機会でもある。けれど、逆に悪い姿勢習慣をしていると歪みやすい時期でもあります。ふだんから良い姿勢を意識しないと、いくら専門家に骨盤を調整してもらっても悪い状態に戻ってしまうんです」

画像

また、骨盤の開きや歪みについて、よく勘違いされるのが分娩方法の差。

「私は帝王切開だったから骨盤は開いてないだろうと思うママも多いのですが、全身の関節を柔らかくするホルモン『リラキシン』によって、分娩方法に限らず妊娠中から骨盤は開いています

経膣分娩の場合、赤ちゃんが産まれる過程で最大限に骨盤が開いた反動で、ある程度閉じていきます。帝王切開の場合でも、骨盤は出産に向けて開いていく中、ある日突然赤ちゃんだけがお腹からいなくなるので出産が終わったと脳がすぐに認識できず、開いたまま固まってしまいがちです。

その場合、まだ体は妊娠中と勘違いして妊娠継続のホルモンが出る影響で、脂肪や水分もためやすく、体型も戻りにくくなってしまう。

開いた骨盤を放っておくと、見た目の問題だけでなく、健康面にも影響します。骨盤から出ている生殖器につながる神経がうまく機能せずに悪露が長引いたり、生理痛がひどくなったりします。2人目が妊娠しにくいという説もあるので要注意」


産後の姿勢は究極の猫背に

骨盤の歪みにつながってしまう産後の悪い姿勢。産後のママが陥りやすい姿勢とは、どのようなものなのでしょう。

「妊娠中から、お腹が大きくなるにつれ反り腰になりやすく、バランスをとるため背中が丸まり、肩は内側に入る形になります。顔はあごを前に突き出し、妊娠後期になっておっぱいが張ってくるとより肩が内側に入り、体はのけぞるような姿勢に。しかも出産後、育児は抱っこやオムツ替えをはじめ、何から何まで“丸まる姿勢”になりがち。意識しないとどんどん猫背になってしまいます」

画像
iStock.com/RoBeDeRo

姿勢の良し悪しは、産後の体型戻しに大きく影響します。妊娠中は姿勢のバランスが崩れてしまうことに加え、腹筋は伸びてゆるみ、脚や腰まわりの筋肉も大きなお腹を支えるために大きく負担がかかり、疲れ果てています。運動不足になりがちなこともあり、さらに筋肉は弱っていくばかり。その状態でやみくもに運動しても、うまく体を使えないので効果が半減するどころか、体を痛めてしまう原因にもなりかねません。

骨盤調整と姿勢の改善を組み合わせることで、本来あるべき状態にリセットすることができます。そうすると、体力も上り、基礎代謝がアップするので体型も戻しやすくなります。産後の体型戻しには、姿勢の改善がとても大切です」

良い姿勢は、骨盤を歪めにくく、さらにボディの引き締めのための最高の筋トレになると碓田先生。

「良い姿勢をするのがつらいという声もよく聞きますが、楽に感じる姿勢と負担の少ない姿勢は別物。姿勢を正すと全身の筋肉が使われるため、きれいなボディラインを復活させることにもつながります。

丸まった姿勢の方が楽なのは、それだけ体に丸まるクセがついているということ。良い姿勢をしたときにつらく感じるのは、それだけで筋トレになているとうことです。ただ、ずっと良い姿勢でいる必要はありません。育児に限らず、日常生活は何かと丸まった姿勢でする作業も多いから。でも、丸まる必要のないときは良い姿勢を心がけ、丸まってしまった分は、次に紹介するキャットレッチで姿勢をリセットしましょう」

こちらの記事も読まれています

実践!姿勢のリセット体操

「一度プロの手に頼って骨盤を正しく整えても、正しい姿勢を普段から意識しないと体型は戻りません」と碓田先生。子育てをしながらでも自宅ですぐに実践できる、姿勢のリセット体操をご紹介します。


キャットレッチ

「キャットレッチは、まるまった背中を戻すストレッチです。妊娠中にまるまった姿勢のクセや育児中の猫背をリセットしてくれます。まるまったポスターは、一度裏返しに丸めると綺麗に戻りますよね。このように、一度反らすことでちょうどよいところまで戻すストレッチです。肩甲骨を寄せることを意識して取り組みましょう」

1.両手を後ろにまわし、手のひらが上に向くように組む

画像
ポイントは、カットしたレモンを肩甲骨の間に挟んで、レモン汁をぎゅーっと絞るように肩甲骨を寄せること。

2.鼻から息を吸い、口から少しずつ息を吐きながら組んだ手を後ろへ引き、肩甲骨をぎゅーっと寄せる。3つ数えたら、手を離して力を抜く。1セット2回、1日に10回行う。

画像

1と2がうまくできるようになったら、肩をうしろに引いたまま、首をゆっくり倒して3つ数える。数え終わったら頭を起こし、全身の力をゆるめる。


反り腰の改善ストレッチ

「理想的な姿勢は、壁に頭、肩、背中、お尻、かかとをくっつけてまっすぐ立ったときに、腰と壁の間に手のひら1枚分の隙間ができる状態です。この隙間が大きく手のひら1枚以上入る場合は、反り腰というもの。このストレッチは、妊娠によって前傾した骨盤、反り腰、ぽっこりお腹をもとに戻す目的があります。お腹、腰、骨盤を意識して取り組みましょう」

1.腰に手を当てる

画像

2.頭、肩、背中、お尻を壁につけて立ち、足を壁から30センチほど離す。

画像

3.お腹に力を入れて、手を壁に押し付けるように力を入れる。息を吐きながら10秒キープし、力を抜く。5セット繰り返す。

慣れてきたら、足を壁に少しずつ近づける。最終的にかかとが壁につくまでになるのが理想です。

骨盤調整は良い姿勢習慣があってはじめて効果がある

「私たちは、自分たちカイロプラクターのことを“背骨の歯医者さんのようなもの”と例えています。

歯医者さんで虫歯を治療しても、そのあと家で毎日きちんと歯みがきをしなければせっかく治療した歯がまた虫歯になってしまうのと同じように、私たちが一度整えた骨盤は、毎日の正しい姿勢習慣や家でのストレッチを継続することで初めて、歪みにくい状態でいられるようになるのです」

ハードなエクササイズでも食事制限でもなく、一番簡単にきれいになれる方法が姿勢。妊娠中のママも、産後のママも常に自分の姿勢と向き合ってほしいと碓田先生は言います。

どんな体型の方でも綺麗に見える魔法こそが“姿勢”。その人の持っている最大限の魅力を引き出してくれますよ

Profile

碓田紗由里(虎ノ門カイロプラクティック院)

碓田紗由里(虎ノ門カイロプラクティック院)

虎ノ門カイロプラクティック院 副院長。カイロプラクター、姿勢教育指導士。これまで女性を中心に述べ1万人の施術をしてきた経験と自身の妊娠・出産の体験から、出産前後の女性がかかえる体形変化や体調不良を改善するためのオリジナルプログラムを開発・提案している。取材時は第3子妊娠中。著書に『産後骨盤リセットダイエット』(かんき出版)。

<取材・撮影・執筆>KIDSNA編集部

【ママの体と向き合う】丸まり姿勢が授乳の負担だった

【ママの体と向き合う】丸まり姿勢が授乳の負担だった

【ママの体と向き合う】日々の腹圧が尿漏れを引き起こす

【ママの体と向き合う】日々の腹圧が尿漏れを引き起こす

【ママの体と向き合う】産後のお腹は“鍛える”ではなく“守る”もの

【ママの体と向き合う】産後のお腹は“鍛える”ではなく“守る”もの

画像
<連載企画>ママの体と向き合う バックナンバー

取材レポートカテゴリの記事

天才はどう育ったのか?幼少期〜現在までの育ちを解明

天才の育て方

この連載を見る
メディアにも多数出演する現役東大生や人工知能の若手プロフェッショナル、アプリ開発やゲームクリエイターなど多方面で活躍する若手や両親へ天才のルーツや親子のコミュニケーションについてインタビュー。子どもの成長を伸ばすヒントや子育ての合間に楽しめるコンテンツです。ぜひご覧ください。
夫婦2人で全部は無理?「子育て・家事・仕事」現代子育てに素敵な選択肢を

共働き家庭が増加している昨今、夫婦ともに実家が遠いと、どうしてもシッターが必要になることもあるのではないでしょうか。今回の記事では、共働き家庭のママが有資格者のみが登録できるKIDSNAシッターのサービスをはじめて利用した様子をレポートします。