【ママの体と向き合う】現代の母乳育児はサポートが必要不可欠だった

【ママの体と向き合う】現代の母乳育児はサポートが必要不可欠だった

2020.01.28

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笠井靖代

笠井靖代

日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長/ 医学博士/ 産婦人科専門医/ 臨床遺伝専門医/ 日本周産期メンタルヘルス学会理事

日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長。 医学博士、産婦人科専門医、臨床遺伝専門医。 日本周産期メンタルヘルス学会理事。1988年、東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。米国留学を経て、現職。専門は周産期、出生前相談。専門医としてだけでなく、自ら40歳で出産した経験から、多くの妊婦さんに妊娠・出産への不安や悩みに応えている。NHKの子育て情報番組『すくすく子育て』コメンテーター。著書に『35歳からのはじめての妊娠・出産・育児』(家の光協会)など。

個人差があるママの体において、自分にとってのベストな選択はさまざま。助言や迷信を鵜呑みにしたり、「やらなければ」という強迫観念で自己判断のケアをしていないでしょうか?この連載では、専門家を通してママが自分自身の体と向き合うためのガイドとなる正しい知識を発信していきます。第5回は、母乳育児について、日本赤十字社医療センター 産科の笠井靖代先生に聞きました。

母乳が推奨されるのはなぜ?

「母乳で育てているの?」何気なく聞かれるこの言葉。ママの皆さんは、どんな風に思うでしょうか?

赤ちゃんへの授乳は、できれば母乳で行いたいと思うママが多いと言われています。

2019年3月に改訂された、厚生労働省の「離乳・授乳の支援ガイド」の中では、平成27年度に「母乳育児に関する妊娠中の考え」を調査した結果として、「ぜひ母乳で育てたいと思った」と回答したのは 43.0%、「母乳が出れば母乳で育てたいと思った」は 50.4%であり、合計すると母乳で育てたいと思ったママの割合は9割を超えていると発表しました。

その一方で、壮絶な出産を乗り越え、ボロボロの体で家事や育児に忙しい日々の中、授乳がうまくできず、悩んでいるママも多くいます。

子どもが丈夫に育つ、ママも楽だし、母乳じゃないと愛情不足になるといった母乳推奨派と、粉ミルクは栄養もたっぷりだしパパも平等に育児ができる、といったミルク推奨派。

こういった、よく見聞きするけれど根拠のない不確かな情報が出回っていることで、人それぞれに事情があり、どの選択も間違っているわけではないのに、母乳が出ないことにプレッシャーを感じたり、ミルクを与えることに罪悪感を感じるママもいるのです。

「お産した病院の先生や地域の保健師に教えられることと、家族の意見やメディアで知られる情報が違うこともよくあるので、ママが不安を感じるのは当然のこと。

ですが、正しい知識さえあれば、実際には、多くのママが母乳育児の可能性を持っているんです」と話すのは、日本赤十字社医療センター 第二産婦人科部長の笠井靖代先生(以下、笠井先生)。

母乳が勧められるのはなぜ?医学的にどんなメリットがあって、ミルクとどう違うのか?まずは母乳の基本知識を教えてもらいました。


ママの体で作られるオーダーメイドの栄養食

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赤ちゃんを育てるには、完全母乳、完全ミルク(人工乳)、それを合わせた混合という選択肢がありますが、そもそも、母乳が推奨されるのはなぜなのでしょうか?

「母乳は赤ちゃんにとって完全栄養食といわれていて、およそ生後6カ月くらいまでの赤ちゃんの成長に必要な栄養が全て含まれています。

産後に母乳が出始めておよそ3~5日間は、最初に黄色くて少しとろみのある“初乳”が出ます。その後、“移行乳”という黄色い母乳に代わり、約2週間で“後乳”と呼ばれる糖分や脂肪分が多く含まれる白い乳汁に変化していきます。

このうち、初乳には粉ミルクには含まれていない母乳特有の免疫物質、たとえば機能性タンパクや細胞成分が豊富に含まれていて、赤ちゃんの感染症やアレルギーの予防につながると考えられています。だから初乳は必ず飲ませましょうと言われるのです。初乳が出ないという方もいらっしゃいますが、ほんのわずかでも大きな意味がありますので、チャレンジしてみてください。

その他にも、乳首を吸う刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌して子宮が収縮され、早く回復しやすいということや、粉ミルクと比べて経済的負担が少ないこと、夜泣きや外出時にミルクを作る手間が省けるというメリットも。

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Pixel-Shot- stock.adobe.com

「これまでの歴史を見ると、粉ミルクはそもそも、安全な水と電気、ガスが整っている環境があってはじめて与えることのできるもの。不衛生な水が使われることで、赤ちゃんが下痢や感染症で亡くなるリスクの高い発展途上国や、災害時などでは、赤ちゃんの安全を考えると、オーダーメイドの母乳に勝るものはありません。

ママの親世代、つまり赤ちゃんのおじいちゃんおばあちゃん世代には、粉ミルクを勧めてくる人々もいます。それは、第二次世界大戦中や戦後しばらくは、食糧が足りず、母乳が満足に出ないママも多く、子どもたちの栄養失調が問題になった。

1917年に粉ミルクが初めて国内でつくられ、トレンドだったんですね。だから粉ミルク全盛期に育児をした親世代は、粉ミルクをすごくありがたいと思っているし、母乳にひけをとらないと思っている人もいます。

その後、母乳育児率が低下したことがきっかけで、1980年頃からは世界的に母乳育児が見直されるようになりました」


病気のリスクも研究されている

赤ちゃんの食事について、“ファースト ワン サウザント デイズ(人生の最初の1000日間)”という言葉があると笠井先生。

乳幼児の食事と授乳についてユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで世界的に知られる研究チームを率いて研究している2人の科学者、クレア・ルウェリンとヘイリー・サイラッドによる、科学的根拠に基づいた考え方です。

これは、妊娠してから2歳前後までの1000日間は一生で最も大事な時期であり、どんなものを食べ、どんな習慣を身につけたかということが、赤ちゃんの将来に影響するということ。母乳とミルクで、病気のリスクが違うと聞いたことのあるママもいるかもしれません。

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「母乳について行われた科学的研究のひとつとして、1996年にベラルーシで行われたプロビットと呼ばれる母乳育児促進プログラムあります。

これは、世界保健機関(WHO)とユニセフによって監修された母乳育児のサポートを病院に提供してもらい、提供されなかった病院とを比べ、出生時から子どもの健康状態、発達状態を追跡調査したもの。

そこでは、母乳を与えると感染症、胃腸炎、アトピー性皮膚炎にかかる割合が減ったということが分かりました。

また、アメリカでも母乳は見直されていて、母乳がⅡ型糖尿病や肥満の予防につながるのではないか言われています」

一方で日本では、2019年3月に厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」が改訂され、生後半年間の母乳育児によるアレルギー疾患の予防効果はない、母乳と粉ミルクを併用しても肥満リスクは上がらないとされています。

「母乳をあげることによって赤ちゃんが病気になりにくいのは本当ですが、完全母乳にこだわりすぎず、状況に合わせてミルクを利用することもひとつの選択肢だと思います」と笠井先生。

知っておきたい母乳の仕組み

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多くのママができるだけ母乳で育てたいと思う理由や、母乳育児を勧められる理由は分かりました。とはいえ、産後すぐから母乳が出なくて悩むママ、乳首が痛くて母乳を諦めたいというママ、乳腺炎でおっぱいが張ってしまうママなど、さまざまな事情があります。

笠井先生は、完全母乳、完全ミルク、混合のどれを選択するにしても、母乳ならではの良さを知り、うまく取り込むためには、最初の数か月が勝負だと思ってがんばってみてほしい、と話します。


産後すぐの“頻回授乳”が大切

「私がお伝えしたいのは、ママの体は、産後すぐの段階で、赤ちゃんに吸われれば吸われるほど母乳が出るような仕組みになっているということ。

逆に言えば、母乳は赤ちゃんに吸わせないまま時間が経つと、自然と出が悪くなってしまうということ。

これには、ホルモンが関係しています。ママの体内で母乳を作ったり、作り続けるためにはプロラクチンとオキシトシンというホルモンが必要で、これらは乳首に刺激が加わることによって分泌されます。

プロラクチンは妊娠中は増加していますが、産後は急激に減少。授乳することで一時的に増加し、授乳を終えるとまた減少し、その後赤ちゃんに吸わせなければ、減少したままになってしまいます。

つまり、プロラクチンの分泌量が下がりきらないようにし、授乳を軌道にのせるためには、産後すぐが一番肝心できるだけ多く、赤ちゃんにおっぱいを吸わせる“頻回授乳”ができたかどうかが重要です。

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日常的に乳首への刺激が与えられていることでママの体も母乳が出やすくなり、赤ちゃんの吸う力も強くなり、吸うことにも慣れてくるので、この相乗効果で母乳育児がスムーズに進みます。私たちの病院では、一日8~12回くらいとお伝えしています。

乳首が痛い場合、おっぱいが張る場合は、授乳姿勢が正しいか、赤ちゃんのくわえ方がうまくいっているか確認してみてください。もし授乳がうまくいかないときでも、乳首に刺激は与え続けた方が母乳の出が悪くならないので搾乳するという手もあります。

また、ママに病気があって服薬している場合でも、抗がん剤、抗生剤、免疫抑制剤などの一部の薬を除いて、今では大体の薬は服用したままで授乳ができるので相談してみてください」


頻回授乳は環境に左右される

出産後すぐに、赤ちゃんと一日に何度も授乳の練習をくりかえすことで、スムーズにできるようになる可能性が高いと言う笠井先生。しかしそのためには、産後の疲れ切ったママひとりでは負担が多すぎます。母乳育児に挑戦する場合は、環境が何より大切であると笠井先生は言います。

「頻回授乳ができるかは、産院の環境やサポート体制にとても左右されます。母子別室でママはゆっくり休んで、赤ちゃんは新生児室でミルクを飲むという産院よりは、ママがちょっと休んだら、赤ちゃんに頻繁に授乳するという方針の産院の方が、母乳育児にはおすすめです。

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私が大学を出た1988年頃は、赤ちゃんは生まれてすぐに清潔な新生児室に連れていかれ、ママは会いに行く時間が決まっていました。母乳が出にくいと悩むママの多くは、こういった母子別室などで、ママと赤ちゃんのタイミングが上手く合っていない場合もあります」

そのうえ、産後の疲れた体で、赤ちゃんが泣くたびに起き上がって授乳をするというのはママにとってとても負担です。赤ちゃんの安全とママの休息をうまく担保しながら、産院のスタッフのサポートがある中で、頻繁に授乳できる環境が理想です。

「日本では1990年代に世界保健機関(WHO)とユニセフが世界のすべての産院に対して出した母乳育児を成功させるための10か条というものがあり、その10か条を守っている産院をベビーフレンドホスピタル(赤ちゃんにやさしい病院)といいます。

日本では、約60~70の病院が認定されています。こういった基準で探してみるのもいいかもしれませんね」

他にも、ママの年齢やもともと持っている体力、産後に家族や友人の長時間の面会、といったことも、頻回授乳がスムーズに進まない原因にもなるのだそう。

母乳育児を考えている場合は、母子同室かどうか、病院の方針やサポート体制などもあわせて確認しておくとよいでしょう。

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授乳の理想と現実

授乳と細切れ睡眠

赤ちゃんといっしょに退院したあとに待ち受けているのは、ふだんの生活と授乳の両立。夜中、赤ちゃんが泣くたびに授乳をしなければならず、細切れ睡眠がつらいというママの悩みも多く聞きます。

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「できるだけ母乳で育てたい、でも家事や仕事もって、心も体もしんどくてできないというママが、なぜ私ばかりがんばらなければいけないの?という気持ちになるのは当然です。

夜間授乳による細切れ睡眠がつらいのは、赤ちゃんを産む前と同じリズムで生活しようとしているから。

これには、女性ホルモンが影響しています。母乳をつくる働きをするプロラクチンというホルモンは、授乳するたびに上昇します。授乳中に、うとうとしたり、眠くなったりする経験をされるママは多いのではないでしょうか。

プロラクチンの分泌が増えると、赤ちゃんが満腹になって眠くなるのと同期するように、ママもいっしょに眠くなるんです。そしてしばらく経つとまた減っていき、次の授乳のときにまた上昇し、眠くなるという仕組みです。

細切れ睡眠でつらくなるのは、産後に、出産前の生活リズムに戻そうと、昼間はずっと起きていて、夜も授乳や赤ちゃんのお世話で起きているから。

そうならないためにも、授乳期間中は、赤ちゃんと同じリズムで生活するのが理想。赤ちゃんの睡眠リズムにあわせて、日中でも授乳後にママも赤ちゃんといっしょに休むようにしてみてください。

昼も夜もちょこちょこ寝て、ちょこちょこ起きてっていうリズムにすると、細切れ睡眠だったとしても、全体的には睡眠時間が確保できているということになり、ホルモンの影響で、体もその方が楽に感じるはずです」

それもずっとではなく、半年ほど経つと、生理も始まって女性ホルモンが徐々に戻っていくのだそう。

また笠井先生は、この場合の母乳の利点をこう話します。

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「母乳は消化が良く腹持ちが悪い、粉ミルクは腹持ちが良いと聞いたことのある方もいるかもしれません。これは本当で、研究によってわかっています。

腹持ちの良い粉ミルクは、自然と授乳間隔があくようになり、夜間に起こされることも少なくなります。ただそうすると、赤ちゃんがぐっすり眠りすぎることでSIDS(乳児突然死症候群)のリスクが高くなります。1歳くらいまでの赤ちゃんはまだ呼吸が不安定のため、ちょこちょこ目覚めては、お腹がすいたと親に合図できる方がよいと思います」


現代女性に授乳はハードルが高い

日中に仕事や家事をしながらも、赤ちゃんに夜中も授乳するというのは、現代の生活リズムに引っ張られた発想であると笠井先生は言います。

「ママが赤ちゃんのリズムに合わせるためには、現代の女性の環境や待遇にあまりにマッチしていません。日本では、女性の雇用や経済的な問題があり、今の若い世代自体が、男性も含め、生活のビジョンや将来への希望がなかなか持てないという現状があり、そもそも子どもを産んで育てたいと思えるような環境ではないのではないかと感じています。

2019年12月に発表された人口動態調査(年間推計)では、2019年の出生率は90万人を割り、妊娠や出産が若い世代にとって後回しになっていることも実感しています。

そんな中、やっと出産したのに昼は仕事や家事に追われ、夜は寝ずに授乳しなければならない。その時になんのサポートも得られなければ、授乳ひとつとってもスムーズにできないのは当たり前。現実とのギャップを埋めるには、周囲のサポートが必要不可欠なのです」

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iStock.com/Milatas

「授乳以外の家事はパパに任せたり、泣いたときの抱っこやおむつ替えを周囲の大人がやってあげたり。ママじゃなくてもできることは任せていいんです」


完璧を求めなくていい

母乳育児がスムーズに進んでも、おっぱいのトラブルなどで母乳を直接あげるのがつらくなったり、母乳が足りないときや、物理的にママと赤ちゃんが離れる期間など何らかの事情で粉ミルクをあげたいと思うときもあります。

そういった場合、気を付けるべきは哺乳瓶であると笠井先生。

「哺乳瓶は少し吸えばたくさん飲めて、飲みやすいため、直接母乳を飲むのを嫌がるようになる“乳頭混乱”のリスクもあります。

赤ちゃんにとっては、一生懸命、顎の力を使って母乳を吸うよりも、哺乳瓶の方が飲みやすいとなると、次第に母乳を飲ませなくなります。すると、乳首への刺激がなくなって母乳も出なくなってしまいます。

粉ミルクは、小さな紙コップやスプーンで与えることもできるし、哺乳瓶の乳首もさまざまなものが売っているので、状況に合わせてその時々に最適な方法を見つけてみましょう。母乳と粉ミルクの違いなど、正しい知識を知った上で進めれば、完璧な方法にこだわらなくてもいいんですよ」

母乳が出にくい場合や、混合にして哺乳瓶でミルクをあげる場合でも、赤ちゃんがおっぱいをなめたり吸ったりするスキンシップがとても大切。母乳が出なくても、ただくわえさせてみるだけでも十分いいのです。赤ちゃんの腸内細菌に関わるママの常在菌を取り入れられる機会なので、積極的に触れさせるとよいのだそう。

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「それから、卒乳についても悩むママが多いです。離乳食と聞くと、離乳だからおっぱいをやめなきゃいけないと思う方が多いのですが、実際には1歳で授乳を無理にやめる必要はあまりありません。

離乳食は、補完食といって、母乳で足りなくなった栄養を、補完するという目的があります。生後6カ月以降は 赤ちゃんに必要な栄養が、母乳だけでは足りなくなるので、食事を始めていきましょうということ。離乳食と母乳を合わせてあげるくらいがちょうどいいですし、赤ちゃんの方もなるべく長く授乳を続けた方が利点も多いんです。

周りが卒乳しているから私も…と卒乳を急ぐ必要はありません。世界保健機関(WHO)とユニセフは、卒乳の時期は、2歳、あるいはそれ以上でもいいといっています。ママと赤ちゃんのペースで考えるのがベストだと思います」

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、離乳は、母乳などから離れる意味ととらえられないように、離乳とは、母乳から離れることではないとし、離乳食が始まっても、母乳は継続して構わないとしています。

ママの授乳には周囲のサポートが必要不可欠

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母乳の良さをうまく取り入れるための頻回授乳や、粉ミルクや混合の場合にもおっぱいを吸わせたりくわえさせることでより良い授乳ができるということを聞いてきました。一方で、現代のママは負担を抱えがちで、スムーズに授乳を続けるためには整った環境とサポートが必須であると笠井先生は言います。

「授乳はママひとりだけの問題ではありません。ママも赤ちゃんもそれぞれ個体差があり、赤ちゃんとママの生活リズムを合わせるためには、家族みんなで協力しての育児が必要です。がんばっているね!とママの授乳をあたたかく応援しましょう」

産後は、想像以上に体が疲れ、慣れない授乳や育児に自信を持てず、心になかなか余裕が持てないのが現実。そんな中で、ママは何もかもを完璧にやらなければいけないというプレッシャーと日々戦っています。

パパをはじめ、おじいちゃんやおばあちゃんなど周囲の人々も、不確かな情報や、自分が経験した育児と比べるのではなく、父親学級や祖父母学級などで正しい知識を身につけるとともに、ママの気持ちに寄り添いながら優しく見守ってほしいと笠井先生は言います。

「完全母乳かどうかにとらわれる必要はありません。ひとりひとりのママが、できる範囲で母乳育児を楽しんで子育てしてほしいと思います」

Profile

笠井靖代

笠井靖代

日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長。 医学博士、産婦人科専門医、臨床遺伝専門医。 日本周産期メンタルヘルス学会理事。1988年、東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。米国留学を経て、現職。専門は周産期、出生前相談。専門医としてだけでなく、自ら40歳で出産した経験から、多くの妊婦さんに妊娠・出産への不安や悩みに応えている。NHKの子育て情報番組『すくすく子育て』コメンテーター。著書に『35歳からのはじめての妊娠・出産・育児』(家の光協会)など。

<取材・撮影・執筆>KIDSNA編集部

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