【小学校受験】小学校受験は”家庭”を見ている?学校は保護者を考査している

【小学校受験】小学校受験は”家庭”を見ている?学校は保護者を考査している

2024年度版 小学校受験 学校選びの2つの視点

2024.01.29

小学校受験では、その子に合った学校を選ぶのはなかなか難しいものです。特にコロナ禍を経て学校や受験の在り方も変わったいま、何を判断基準に学校を選べばいいのでしょうか。 やる気スイッチグループの幼児教室「チャイルド・ アイズ」の葛西 香先生に、「2024年度版・子どもに合った小学校選び」についてお話を伺いました。

コロナ禍を経て社会にさまざまな変化があったこの数年、その影響は小学校受験にも及び、試験の内容や実施方法などが大きく変わりました。
そこで難しくなったのが「学校選び」です。
これまでの情報で学校を選んだり試験対策をしたりすると、コロナ後の現状とは大きなズレが生じてしまうかもしれません。

そこで、「2024年のいま、小学校受験で子どもに合った学校を選ぶには何を基準にすればいいのか?」を、受験のスペシャリストに聞きました。
答えてくださったのは、やる気スイッチグループの幼児教室「チャイルド・ アイズ」で受験対策責任者を務める葛西 香先生(以下・葛西先生)。多くの小学校の校長先生がたとの交流もある中で、まずは「2023ー2024年の最新・小学校受験事情」を教えてくれました。
さらにそれを踏まえて、「本当に子どもに合った小学校選びのポイント」もわかりやすく挙げていただきましたので、今年の受験を考えている保護者のみなさんはぜひ参考にしてください!

◎チャイルド・アイズ 公式ホームページはこちら

小学校受験 2023~2024|コロナ禍を経て大きく変わった考査内容

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※写真はイメージ(iStock.com/Hakase_)

── 小学校受験を考える際には、多くの保護者はその学校の過去の入試問題=過去問を調べて子どもに対策させると思いますが、2023年度の入試にはどのような特徴がありましたか?

葛西先生 コロナ禍を機に、小学校受験は大きな変化がありました。
2020年、ちょうど新型コロナウイルス感染症が発生した初年度は、文部科学省が「新学習指導要領」を発表した年でもあります。そのふたつがあいまって、大きく変化したというのがここ3~4年の実感です。

── 具体的にはどう変わりましたか?

葛西先生 まずはコロナ発生初年度においては、ソーシャルディスタンスを保つため、各学校が行っていた通常の入試形態では考査が行えなくなったということが挙げられます。人数を極力絞っての考査で、ペーパ―(筆記)と面接のみの対応をとられた学校も多くありました。
今年(=2024年度入学)の小学校の説明会では、「コロナ以前の入試傾向に戻します」とおっしゃる学校がとても多かったです。これは、学校の方針は変わらない、子どもや保護者に求めているものは同じだということ。今年の受験ではそれが色濃く出たと思います。

── 他にも何か変わった傾向がありますか。

葛西先生 最近多くの私立小学校も大きく掲げてらっしゃるのが、子どもたちの「聴く力」です。
「新学習指導要領」では、小学生の子どもたちに「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」を柱として[※] 教育をし、1年生のうちから「自分から発信する力」や「ゼロから何かを生み出していく力」などを育んでいきます。
その中で、「自分の主張ができるだけでなく、『相手の意見にも耳を傾けて、そこから何かを創造していく』授業を行っていきたい」という学校側の思いが強く現れていると私は分析しています。

また 都内で人気が高まっているのは、中学受験で成果をあげている私立小学校です。中学受験の御三家他に多くの子どもたちを送り出している学校です。
(中学受験の御三家:開成・麻布・武蔵/桜蔭・女子学院・雙葉の各中学校)
東京都内ですと東京都市大学付属小学校、国立学園小学校、宝仙学園小学校、淑徳小学校、国本小学校などが挙げられます。神奈川県ですと洗足学園小学校があります。

小学校受験というと、昔ながらの名門大学附属(付属)の小学校に入学して大学受験を回避する、または大学卒業まで有意義な時間を過ごす、というイメージがあるかもしれません。一方都内23区の中学校受験が盛んな区、たとえば世田谷区などでは、小学6年生の2月1日(=名門私立中学の入試が重なる日)にはクラスで登校しているのはひとりだけ、またはまったく登校する児童がいない、というほど中学受験の傾向が強くなっています。

そうなると、「中学校受験の準備ができる私立小学校」という選択肢が出てくるわけです。そういう私立小学校は、4年生ぐらいまでに文科省が出している検定の教科書を終えてしまい、あとの5年生6年生の2年間で中学受験の対策を志望校別、能力別で対応してくださる学校もあります。中学受験を志すお子様、保護者にとってはとても魅力的なカリキュラムとなりますよね。

学校は各試験で子どもの何を見るのか?

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※写真はイメージ(iStock.com/recep-bg)

── その「入試の考査で学校は子どもの何を見ているのか」という点も、多くの保護者が知りたいところだと思います。そもそも小学校入試では、どんな試験があってそれぞれ子どものどんなところを見られているんでしょうか?

葛西先生 はい、それぞれの小学校が考査で実施している入試形態は、大きく以下の8つです。

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── これらの中にも、最近変化があった点はありますか?

葛西先生 個別テストを実施する学校が増えています。
子どもたちは暗記力が抜群なので、ペーパーテストは類似問題を解くことで解答を覚えてしまいます。となると、その子が本当に思考力を要する問題を自分で考えて解けているのかは、ペーパーテストの得点だけではなかなか見抜けません。
そこで、子どもたちを数人ずつ、あるいはひとりずつブースに呼んで課題に取り組ませる個別テストを取り入れる学校が増えてきたということでしょう。
そこでは子どもたちの思考力はもちろん、ものを扱うていねいさや生活習慣なども見られています。

── コロナ禍の最中とは考査の種類や内容が変わってきているんですね。

葛西先生 はい。子ども同士のかかわり方、コミュニケーション能力や思考力、工夫力などをみていくため、前述の個別テストと同様に行動観察もコロナ後真っ先に考査に戻した項目となります。どの学校でも特に重視しています。
数人、または十数人のグループにわかれて、集団でゲームや共同作業をしていくのですが、実は当日の考査には、次の1年生の担任になる予定の先生が評価に入られることが多いのです。

その際、担任の先生たちはこの行動観察を通して、「学校の方針にのっとって、どんなクラスを作っていこうか」「授業のカリキュラムをうまく進めていくためには、どんな子どもを採ってどんなクラス構成にしたらいいのか」などのバランスをとりながら見極めていきます。

── どういうことでしょうか?

葛西先生 いまはひとりっ子さんが多いこともあって、主張型の子どもが多い傾向にあります。でも、リーダーシップをとれる子どもだけでなく、サブリーダーの役目ができる子や、みんなの話を「うんうん」と聴いて、最後に「じゃあこうしようよ」と俯瞰で提案できる子、はじめての場所で泣いてしまう子や緊張してかたまってしまう子を見つけて、「一緒にやろうよ」と声を掛けられる子などもクラスには欲しいですよね。また自分のチームが行っているそばで進行に目配りしながら整理整頓をしたり、お友だちにお道具を渡すことができる子も、クラス経営を考えると欲しいお子様ですよね。

── そうなんですね、小学校受験に合格する子というと、きちんと自己主張できるリーダータイプのイメージでしたが、それだけを目指さなくてもいいんですね。

葛西先生 そうですね。グループに入らず少し離れたところにいるような子でも、ご縁(=合格)をいただけることがあります。それについて、以前ある小学校の先生にお聞きしたところ、「離れてはいましたけれど、自分のグループの活動を目で追って、きちんとグループ活動できていましたよ」とおっしゃっていたこともありました。

また、先ほどお話ししたように、コロナ禍ではペーパーテストと面接だけで、行動観察もできなくなっていました。そのかわりに多くの学校が取り入れたのが、生活習慣の考査です。

── 何を見る考査ですか?

葛西先生 例にはなりますが、考査中に、途中でトイレに行くというものです。行きたくない子も全員。
入試に向かう日の子どもは、保護者の方がきちんと受験ルックに身を包ませて、いってらっしゃいと送り出します。それがひとたびトイレに行くと、自分でシャツを中に入れられなかったりする。
あるいは、今のご家庭では水を流さなくてもトイレが自動で流れたり、蛇口をひねらなくても水が出て手が洗えるので、自分でトイレを流せなかったりお尻が拭けなかったり。
ハンカチやティッシュをポケットにきちんと用意しているかも見られますし、トイレに行くというだけで、ご家庭の生活が見えてきます。

── 本当にさまざまな面から多角的に見られているんですね。

葛西先生 ただ、いちばん大切なのは、やはり「傾聴力」ですね。1回の発問、1回の指示をしっかりよく聴いて、自分の頭の中でしっかり理解して、そして自分を信じてアウトプットしていく力、それをこれらの考査を通して見ていくのが小学校受験ということです。

歴史ある名門校から近年人気の学校まで ── 最近の入試事例

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※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)

── では先生、実際に小学校受験で出された問題や、そこで学校側は何を見ているのかといった事例をいくつか教えてください。

葛西先生 はい、それでは学校ごとの入試傾向についてお話ししましょう。

◎早稲田実業学校初等部、成蹊小学校

葛西先生 今年(2024年度入学)の入試でおもしろかったのが、早稲田実業学校初等部と成蹊小学校で同じような行動観察の出題があったことです。
この2校はJR中央線沿線にあるので、併願する方が多いのですが、どちらも風船とうちわを使いました。発問は学校によって若干ニュアンスが違いますが、「チームに分かれて、風船を落とさないようにうちわであおぎながら、協力してゴールまでもっていく」という課題が出されたようです。

これは、結果を見られているのではありません。その過程を通して、「どういうご家庭で育って、どういう経験をして、課題に対してどんなアプローチができるか」が見られています。

早実では、大中小のうちわが用意されていてどれかを選ぶことと、風船をうちわにつけて運んではいけないという指示があったそうですが、そこでみんなが「中くらいのうちわにしよう」と言っている中で、勝手に大きなうちわを使って、とにかくゴールしようと風船をうちわにつけて運んでしまったお子さんは、合格発表に番号がなかったそうです。
一方で、「風船をうちわにつけるのはいけないと言われたから、やめようよ」と言ったお子さんはご縁をいただきました。

◎慶應義塾幼稚舎

葛西先生 慶應義塾幼稚舎は、「6年間担任持ち上がり制」や、理科、英語など多くの教科を専任教員が指導する「教科別専科制」など独自の教育を実施しているので、入試も独特です。

まずペーパーテストがありません。
行動観察と、運動と指示行動をまぜた形のテストを毎年行っていて、小学校受験としては指示の数が抜群に多いです。「ここでこれをして、次にこれをして……」と10数個の指示を最初に説明した上で、子どもたちに行動させます。

これはもちろん、指示通りにできないよりはできたほうがいいのですが、数が多いのでできないこともかならずあるでしょう。そうなったときに、できなくてもあきらめないことや、工夫する力なども見られています。

◎暁星小学校

葛西先生 暁星小学校は、文武両道を掲げる男子校で、厳しく鍛える教育を実施しています。
入試でも、ペーパーテストの難易度は最難で、平面図形を何回転もさせたり、空間認知能力や思考推理等を問う問題が出題されます。初めての保護者の方はびっくりされるかもしれませんが、小学校受験では、掛け算割り算の概念を数字を使わずにマルバツで解く問題なども出されます。

解答時間も短く、「鉛筆をもって始めてください」と言われて数秒で「鉛筆を置いてやめましょう」と言われます。このとき、「やめ」と言われてさっと鉛筆を置けるかというところも採点基準になっています。

運動では、速いドリブルで移動するなどの課題も多く、運動センスが問われます。また、入学すると毎朝30分以上立ったままの朝礼があるので、「ずっと立っていられるか」という課題が出されたこともありました。

◎東京農業大学稲花小学校

葛西先生 東京農業大学稲花小学校は、2019年に開校したばかりですが、校長先生が「あらゆる私立小学校の良いエッセンスをすべて網羅し開校します」とおっしゃったほど、教育環境や設備、システムが整った大人気の学校です。

考査はペーパーテストと行動観察に、zoomでの親子面接があります。また、考査の前に保護者に1,000字以上の出願作文を課す学校です。そこで保護者の姿勢を見るそうです。

今年(=2024年度入学)の入試では、特に稲花小らしさが強く出たのが行動観察です。稲花小学校は前述の「傾聴力」を大切にされている学校です。数人のチームに分かれて話し合いながら1枚の模造紙に絵を描いていく「共同絵画」が出題されました。お題はチームによって異なりますが、たとえば「スーパーマーケットを描こう」と言われたら、勝手にどんどん描きだしてしまうのではなく、「どんなスーパーを描こうか」と人の話を聴ける「傾聴力」が見られていたと思います。

◎開智学園

葛西先生 開智学園は、いまメキメキと力をつけている学校です。小学校は、岩槻にある開智小学校(総合部)、守谷にある開智望小学校、そして2024年4月に開校する開智所沢小学校(仮称)があります。
探究、英語教育、縦割りクラスが特徴で、2024年4月に開校予定の開智所沢では高3生のクラス編成で海外の大学を目指す生徒のため海外受験コースを設けていくようです。

この学校の考査は独特で、受験日より前に「自己発信」という考査があります。これは、子どもが好きなもの、得意なことを自分で表現して発表する場です。
たとえば、楽器の演奏をしてもいいし、英語でお話ししてもいい、電車や昆虫などくわしいものについて発表してもいいでしょう。
先生たちを前に30分発表をして、そのあと先生方からその発表について掘り下げた質問を子どもに尋ねてコミュニケーションを重ねていく時間があります。考査を終えた子どもたちからは「先生とたくさんお話してきたよ」と答えが返ってきます。

親が「このテーマにしましょう」と決めてしまうと、子どもの好きは表現できません。学校は、子どもたちの発信力を見ていますので、自分の「好き」があってそれを表現できることが大事です。

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いま小学校から求められる子ども像とは

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※写真はイメージ(iStock.com/Milatas)

── 私立小学校の場合は、学校ごとに教育方針やカリキュラム、入試の内容もさまざまですので、「どんな子どもが求められているか」も学校ごとに異なりますか?

葛西先生 語弊があるかもしれませんがあえていわせていただくと、私立の小学校においては、求める子ども像にあまり変わりはありません。それは、対象が5歳6歳の幼児であることが大きなポイントです。

小学校受験では、5歳6歳で「完璧な子ども」をとろうとはどこの学校も思っていません。それよりも、自分たちの誇るカリキュラムや建学精神の中で、6年間かけて成長できる「伸びしろ」を持った子どもかどうかを考査で判断していきます。
多くの小学校が求める子ども像としては、私は大まかには以下の10点が挙げられると思っています。

【多くの私立小学校が求める子ども像10ポイント】

1. 人の話をよく聞いて、理解して行動することができる子ども

2. 5歳6歳なりの発達段階に応じた知識や判断力が身についている子ども

3. 年齢に見合った自立心、基本的な生活習慣やしつけができている子ども

4. 自分の考えを相手に伝える自己表現力をもっている子ども

5. 情緒が安定していて心身共に健康な子ども

6. 基本的な生活リズムがととのっている子ども

7. 5歳6歳なりにいろいろな経験や実体験をしている子ども

8. お友だちとコミュニケーションを適切にとることができ、集団生活が上手にできる協調性ある子ども

9.ものごとに一生懸命に取り組む粘り強さがある子ども

10.自分で考えることができる子ども

小学校が求めるのは「子ども像」より「家庭像」

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── 私立小学校が求める子ども像は、基本的には共通しているんですね。ではその中で、合否の決め手になるのはいったい何なのでしょうか?

葛西先生 小学校が求めるものは、「子ども像」だけでなく「ご家庭像」にまで踏み込んでいるというのが小学校受験の大きな特徴です。今まで子どもについてお話して参りましたが、保護者の方の試験であるといっても過言ではありません。
「そのご家庭が、志望校に対してどれほど理解と共感と協力の姿勢を示せるか」ということで、小学校受験は8割が決定するのではないでしょうか。子ども像とあわせて「求められるご家庭像」についてもおはなししておきましょう。

私立小学校が求めるご家庭像としては、以下の6点があると思います。

【私立小学校が求める家庭像6ポイント】

1. 学校のカリキュラム、建学の精神や運営に対して正しく理解して、本当に賛同している

2. 先進的な教育カリキュラムに対して、サポートとバックアップ、協力を惜しまない

3. 子どもの言いなりになって冷静な判断ができなくなったり、まわりのうわさなどに左右されたりしない

4. 子どものみならず、保護者も一緒になって勉強する意欲がある

5. ご家庭自体に一般常識とマナーの価値観がある

6. 子どもにあまり手をかけすぎず、主体性をもって考えさせ、最終的には目をかけられるべき状況、環境を作り出すことができている

葛西先生 私立小学校が求めるご家庭像は、先ほどお話ししたように1番のポイント「その学校のカリキュラム、建学の精神や運営に対してどれだけ深く理解しているか」です。
せっかく入学しても、「こんなはずじゃなかった」「こういうことは我が家では望みません」などと言われてしまうと、教育が土台からひっくり返ってしまいます。そのようなことがないかどうか、そして入学後学校の教育をご家庭でもサポートしていただくことが可能であるか、それを考査で見極めるため、小学校受験には親子面接や保護者面接が必須になっているんです。

また、小学校では入学後に、子どもたちにたくさんの経験を積ませるカリキュラムを組んでいます。たとえば異学年交流、バイリンガル教育、ディベート、アクティブラーニング、ICT教育など、先進的な教育を施しています。
子どもたちは5~6歳から12歳の間の6年間かけて学校で育まれていきます。しかしながら学校と子どもたちだけでは十分に育ちません。各ご家庭からのサポートとバックアップがあってこそです。前記のご家庭像6ポイントの中の2番目、4番目の項目も面接で確認されるポイントとなります。

3番目のポイントについては、まだまだ小さい子どもですので、たとえば「学校でこんなことがあった」「いじめられた」など、自分視点で保護者に話すことが多いものです。自分の子どもの言い分だけ信じてしまうと冷静な判断ができなくなって問題を起こす恐れがあるので、この点も学校ではとても重視されています。

さらに、学習や学校生活も子どもだけで成立するものではなく、ご家庭が母体となるものですから、5番目の一般常識とマナーがご家庭自身に備わっていることも非常に大切です。
そして6番目のポイントは、親が子どもの先回りをしてあれこれするのではなく、子ども自身に主体性をもって考えさせることができるかどうか、かといって放任するのではなく、目をかけられる環境をつくることができているか。

こういったところが、私立小学校における入学基準になってくると思います。

学校はあらゆる接点で保護者を「面接」「考査」している

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── となると、小学校入試では親子面接や保護者面接の重要度は非常に高いですね。

葛西先生 そうですね、本当に保護者の方のスタンスは大事です。
今年(=2024年度入学)の入試の速報が全国から入ってきていますが、保護者に対して2回3回と面接の機会を設けるところもありました。
私立小学校では、コロナ明けから何回も志願者を学校に招いて、説明会や個別相談会を設けています。実は、そこでの参加の様子が事前の第一次面接になっている場合もあって、本当に気が抜けません。

── 学校との接点は、すべて見られていて合否にかかわる可能性があると思ったほうがいいでしょうか?

葛西先生 はい。学校によってはコロナ禍以降、zoomで本番の面接をするところも出てきました。また、出願も以前のように早朝から校門の前に並んで出すのではなく、ネット出願に変わった学校が多くあります。
そうなったときに、「zoom面接の環境をきちんと整えられているか、正しく操作できるかを見ている」という学校もあります。ネット出願でも、間違ったエントリーをしてしまう方などは、入学後も学校からのご案内をきちんと受け取れないだろうと判断されることもあります。

そのため私たちの幼児教室では、まだ志望校が決まっていないうちからIT環境を整えることの大切さをみなさんに伝えています。

小学校受験は「学校が親を選び」「親が学校を選ぶ」もの

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※写真はイメージ(iStock.com/yamasan)

── 先生のお話を伺うと、小学校受験での学校選びは、「親が『自分も通いたい学校』を選ぶ」と同時に「学校側が『自分たちの校風や教育を理解している親』を選ぶ」という双方向のマッチングなんですね。

葛西先生 はい。親の準備が重要です。準備が十分整った上で、子どももそれにもとづいて健やかに学習を進めることができる。その点が、やはり小学校受験が中高大学受験と大きく違う点だと思います。

── 反対に、「これを学校選びの基準にしないほうがよい」というポイントはありますか?

葛西先生 これから受験をしようという保護者の方と面談すると、「自宅に近いところ」とおっしゃられる方が多いのですが、距離のみで選んでしまうと、のちのち「(学校選びを)間違えたな」となることがありますので、避けていただきたいです。
それから、私立の付属小の場合、大学や中高の偏差値を基準に考えてしまう方も多いです。模擬テストの結果を持っていらして、「偏差値が今このくらいですが、どこの学校なら受けられますか?」とおっしゃる方も多くいらっしゃいます。小学校受験では偏差値だけに左右されないことも、とても大事だと思います。

── それはなぜですか?

葛西先生 幼児にとって「偏差値」というのは、あってないようなものです。模擬テストを受けることは、経験としてはとても大事ですが、出題される問題(得意、不得意)や試験の環境、行動観察のグループのメンバーなどに子どもは大きく影響を受けます。
グループで行う「行動観察」の考査などは、中に気の合わないお友だちがいたりすると、実力が発揮できません。

── 模擬テストの偏差値と本番の入試の出来は、大きく異なることもあるんですね。

葛西先生 一番大切なことは、わが子が6年間通うことを考えた上で、保護者自身が「もう一度小学校生活を送るとしたら、どの学校で学びたいか」という視点で学校を選んでいただきたいということです。私は受験面談をするときにいつもこの言葉を保護者の方にお伝えしております。

入学後は、「日曜日、お父さんが得意なサッカーを子どもたちにレクチャーしていただけませんか?」というように、保護者が協力できる範囲の協力を求められることも多いです。そのときに「自分も通いたいから協力できる」「自分もこんな体験がしたいから一緒に参加する」と思うことができる学校。

そのために、これから小学校受験を考えようというご家庭は、学校の説明会に何度も足を運んで、どんな学校かをしっかり見極めてください。ご自身がもう一度小学生になって通ってみたい学校に出会えてご縁をいただけたら、ご家族にとっても幸せな時間を過ごすことができますからね。

2024.01.29

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