スキルなき父親の育児参加はマイナスか AI時代を生き抜く子どもを育てる!脳教育メソッド【澤口俊之】

スキルなき父親の育児参加はマイナスか AI時代を生き抜く子どもを育てる!脳教育メソッド【澤口俊之】

2022.04.13

Profile

澤口俊之

澤口俊之

神経科学者/人間性脳科学研究所所長

人間性脳科学研究所所長 武蔵野学院大学&大学院教授 1959年、東京生まれ。 京都大学理学研究科博士課程修了(理学博士;Ph.D)、日本学術振興会特別研究員、米国エール(Yale)大学医学部研究員、京都大学霊長類研究所助手などを経て、1999年に北海道大学医学研究科教授に就任。2006年人間性脳科学研究所(Humanity Neuroscience Institute, HNI)所長。2011年9月武蔵野学院大学教授、2012年4月から同大大学院教授も兼任。専門は神経科学、認知神経脳科学、社会心理学、進化生態学で前頭前野(前頭葉の最前部)の機能ならびに構造を中心に研究。

2022年4月1日から「男性の育休」が段階的に施行されています。共働きが当たり前になっている今、男性が育児に参加することは大きな意味があると言われていますが、脳科学者の澤口俊之さんは逆に、「乳児期の子育てに父のコミットメントは不要」と言います。その理由は、「スキル不足」。では、子育てにおける父親の役割とはなんでしょうか。第3回目となる今回は、「父親の育児参加」と「子どものストレス」についてお話を伺いました。

 
 

脳の司令塔である「前頭前野」は、幼少期に最も発達するため、幼少期に何をするかがとても大切です。特に0〜1歳のお母さんとのコミュニケーションは最も重要です。

澤口 教授
澤口 教授

何をすべきかですが…笑いかけたり話しかけたりすればよい。それで十分です。ここに父親のコミットメントは不要です。

実は、父親の育児参加の有益性に関しては諸説あって、ほとんど無意味か良くないという研究もあるんです。

その理由は、「スキル不足」。

母親は、泣き方の4パターン(痛み、不安、怒り、欲求)が無意識に聞き分けられるということが脳画像の実証研究でわかっています。

※写真はイメージ(iStock.com/Kiwis)
澤口 教授
澤口 教授

しかし、父親は苦手。特に、「痛み」の泣き方がわからない。その理由は遺伝子レベルで違いがあるからです。

ですから乳児期における父親の役割は、子どもの母親の「ストレス緩和」が一番大事です。

逆に、思春期になった際には父親の役割が重要になってきます。特に一緒にキャンプへ行くことで知能が伸びます

ですので、幼少期はフォローに回って手伝う程度でいいんです。

子どもにもストレスがあることが、今では常識になっています。しかし、実はその結果がわかるようになったのは、21世紀になってからと言われています。

また現在は、唾液でストレスチェックが簡単にわかると澤口先生はいいます。

澤口 教授
澤口 教授

私のところにくる相談で、「子どもが友だちと遊べないので困っている」というのものがあります。その際に、私は逆に「なぜそれが重要なのですか?」と聞き返します。

すると、保護者は「協調性の欠如」を指摘しますが、私は「なぜ協調性が必要なのか?」を逆にお尋ねします。

つまり、協調性がないお子さんに協調性をつけさせようとすると却ってそれが大きな「ストレス」になり、知能の育成を阻むことになるのです。

 
※写真はイメージ(iStock.com/takasuu)
澤口 教授
澤口 教授

放っておけばいいんです。それよりもいけないことは親が「モデルをつくって理想型に当てはまらないとダメという発想」が一番ダメなことです。

社会的に協調性がないことで「成功しない」ことはまったくありません。

協調性がないなら協調性が不要な仕事を探せばいいんです。研究職やクリエイティブな仕事は、社会的な協調性が不要なビジネスです。

澤口 教授
澤口 教授

人工知能(AI)時代の到来により、私たちは人工知能に解読させるための問題設定を行う必要があります。

また、クリエイティブな発想に関しては人工知能は不得意ですので、その不得意分野を使う側として学ぶことが大切です。

だからこそ、昨今の大学入試センター試験や共通テストも「問題解決能力」を見る問題内容にシフトされています。

つまり、知能は10代でも発達しますが、幼少期からの方がもっといいです。

 
※写真はイメージ(iStock.com/metamorworks)
澤口 教授
澤口 教授

だからこそ、興味のある実体験をどんどんさせてあげてください。

そして、育児は乳児期は母親主体で父親はフォローにまわる。思春期になったらぜひキャンプに連れ出してあげてください。

 
 

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