妊娠中の味覚の変化。ホルモンバランスの急激な変化や、つわりによる症状が原因と考えられています。先輩ママたちはどのような飲み物を飲んで、つらい時期を乗り切っていたのでしょうか。また、口の中に残る後味が気持ち悪いときに、おすすめの対処法などを合わせて紹介します。
妊娠をすると、味の好みや感じ方が変わる場合があります。それによって、これまで食べられていたものが食べられなくなったり、好きだった飲み物が飲みたくなくなったり。後味がおかしく感じたり、やけに口に残るのが気になる人も多いようです。
また、妊娠による嗜好の変化だけではなく、つわりによって、限られた飲み物しか身体が受け入れられなくなったという人も少なくないでしょう。
妊娠中に味覚が変化し、嫌な後味が感じられる原因は、はっきりとは解明されていません。人によって症状はさまざまですが、下記のような要素がいくつか絡み合って、いつもと味覚が異なる可能性があります。
亜鉛はタンパク質の合成に必要な栄養素として、人間の身体を維持するために欠かせない必須ミネラルの1つで、味覚のセンサーである「味蕾」(みらい)の味細胞をつくるときにも必要です。亜鉛が不足すると味が感じにくい、何も食べていないのに常に苦いなどの味覚障害が起きることがあります。
妊娠中は胎児に亜鉛を供給するため亜鉛不足になりやすく、そのため味覚障害につながりやすいと考えられます。
妊娠中は「プロゲステロン」というホルモンが増加します。プロゲステロンには子宮内膜を厚くし、妊娠を維持する働きがあり、また水分を保持する働きと体温を高くする機能もあります。その影響から妊娠中は口内が渇きやすく、この渇きが味の感じ方に違和感をもたらす原因とも考えられています。
妊娠中は、母体を循環する「血しょう」(血液から血球・血小板などの細胞成分を除いた液体成分)の量が増えていきます。この血しょうの増加に伴い、塩分の必要量も増加し、それが妊娠中の塩味に関する味覚機能に影響を及ぼすと考えられています。
ただ、その影響は妊娠の中期以降が主で、妊娠初期の味覚異常の原因としては考えにくいかもしれません。
妊娠中は、免疫力が低下することや、つわりで食事からの栄養をまともに取れなかったりすることから、口内炎や舌に炎症を起こしやすいです。口内炎や舌に炎症が生じると、舌の表面にある粘膜の突起「舌乳頭」(ぜつにゅうとう)という部分が萎縮したり、なくなってしまう場合があります。
舌乳頭の中に味を感じるセンサーである「味蕾」(みらい)があるため、舌乳頭の萎縮が味覚障害につながっている可能性があります。
また、はっきりとした原因は解明されていませんが、つわりの吐き気などの症状から、スッキリとした酸味のある食べ物や飲み物を好むようになる人は多いようです。
味覚の変化がいつまで続くのか、不安になる人も多いでしょう。しかし、これらの症状は人によって異なるため、いつになったら終わるという明確な基準はありません。つわりが終わり安定期に入るころ気付いたら治っていたという人もいれば、出産が終わるまで続く人もいます。
そうは言っても、味覚障害は妊娠中によくある症状なので深く考えすぎずに、自然に治ると考えてもよいでしょう。ただ、あまりにも不快で水分が取れなかったり、出産後も治らないような場合は、健診の際やかかりつけ医に相談しましょう。
先輩ママが妊娠中に飲みやすかったと感じる飲み物は、以下のようなものがあるようです。妊娠中に美味しく感じる飲み物、まずく感じる飲み物は人によってさまざまなので、「これなら飲めそう」と感じるものを試してみてはいかがでしょうか。
オレンジジュースやグレープフルーツジュース、またはレモンなどのフレーバーウォーターは、後味がすっきりしています。ジュースには、果汁100%のタイプもありますが、濃縮ジュースや還元ジュースなど砂糖を加えた商品もあるので、糖分を摂りすぎないよう成分表示を確認してみましょう。
また、柑橘系にはクエン酸が含まれています。クエン酸は疲労回復効果がある一方で、胃酸の分泌を促進するので胃に負担がかかります。胃痛や不快感の原因にもなるので、飲みすぎには気を付けましょう。
乳酸菌飲料やヨーグルト風味のドリンクは、甘酸っぱい味が飲みやすく感じる人もいるようです。これらのドリンクはカルシウムやビタミンが含まれているため、つわりで思うように食事が摂れない人でも栄養補給ができる点でも人気です。
また、妊娠中は便秘をしやすいので、乳酸菌が腸内環境を整えてくれることもポイントです。糖分が気になる人は、砂糖の入っていないプレーン味のヨーグルト飲料もあるので、試してみるとよいでしょう。
普段は炭酸が苦手なのに、妊娠してからは炭酸水が美味しく感じられた、という人もいるようです。炭酸のシュワシュワ感が口の中をスッキリさせてくれるので、リフレッシュ効果があります。
ただ、炭酸は胃の中でふくらみ、げっぷなど不快な症状にもつながるので、一気に飲むと逆に気持ちが悪くなるかもしれません。様子を見ながら、少量ずつ飲んでいくことがよいでしょう。
妊娠中はカフェインを避けてハーブティーを飲む人が多いです。その中でもルイボスティーは亜鉛や鉄分、カルシウムなどが含まれていて、つわりにも効果があるとされています。
しかし、ハーブティーのなかにはラズベリーリーフティーなど、時期によっては飲まないことを推奨されているものもあるので、飲む前には必ず確認するようにしましょう。
なにを飲んでも気持ち悪く、脱水症状になるのが不安だったため、ミネラルが含まれているスポーツドリンクを頑張って飲んでいた、という人もいます。甘すぎると感じる場合には、水で薄めて飲むのがよいかもしれません。
温かい飲み物より冷たい飲み物のほうが、後味を感じにくいため、妊娠中は冷たい飲み物を好んで飲む人が多いようです。妊娠中は身体を冷やさないようにあたたかい飲み物がよいと言われていますが、しっかりと水分を摂ることも大事なので、飲めるものを飲めるときに、少しずつ取るとよいでしょう。
味覚の変化が続いている間は、なにを飲んでも後味が残って気持ち悪い、という人も多いです。そのような経験がある人に、後味を消すためにやっていたことを聞いてみました。
妊娠中の飲み物に関するエピソードを、先輩ママに聞いてみました。
妊娠・つわりの影響は大きく、体にはさまざまな変化が起きます。今まで好きだった飲み物が変な味に感じたり、気分が悪くなってしまうことは、ストレスにも感じるでしょう。しかしほとんどの人は、安定期に入ったり出産が終わったときに元の味覚に戻ります。
一時的な身体の変化だと割り切って、そのときに受け入れられるものを飲んで過ごしていけるとよいですね。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。
患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
2022年07月12日
妊娠中に生魚を食べても問題ないのか、心配になる妊婦さんもいるのではないでしょうか。妊娠期間は食べものに気を遣いますが、できれば好きなものを食べてストレス解消などできたらよいですよね。今回は、妊婦さんが生魚を食べてよいかについて、食べる際の注意点、生魚の代わりになる簡単レシピ、体調不良時の対処法、ママたちの体験談をご紹介します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
不妊治療の助成拡充に続き、2022年4月から、保険適用が決定。子を持つための選択肢が広がった今、終わりの見えない不妊治療の日々を過ごした大山加奈さんに、ご自身の不妊治療についてお話いただきました。
正期産とは、ママや赤ちゃんにリスクが少ない時期の出産を指します。正期産のために日常生活で気を付けること、臨月との違い、正期産を過ぎても生まれない場合のこと、先輩ママの体験談をまとめました。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回はフリーアナウンサーの吉田明世さんが、二人目妊娠の時期について悩むママのお悩みに答えます。
吉田明世
妊娠中に飲み物を飲むときは、どのようなことを気をつけるとよいのでしょうか。妊娠中に注意したい飲み物や飲み物を上手に活用する方法など、ママたちの体験談をもとにまとめました。
妊娠中に食べ物を食べるとき、どのようなことを気をつけるとよいのでしょうか。妊娠中に気をつける食材や意識したい栄養素、バランスのよい食事のメニューについて、ご紹介します。
母子手帳の交付を申請するときに、マイナンバーカードが必要かどうか気になるママもいるのではないでしょうか。今回の記事では、母子手帳申請時のマイナンバーの提示の仕方や事前に確認したこと、マイナンバーを紛失したときの手続きについて、国の資料やママやパパたちの体験談を交えてご紹介します。
妊娠中に結婚式の招待状が届いたとき、参列するか悩んだり食事メニューは配慮してもらえるか気になったりすることもあるかもしれません。今回は、料理についての希望を伝えるなど結婚式に参列する前に準備したことと、靴やドレスなど服装の選び方の他に、結婚式当日に意識したことについてご紹介します。
妊娠を旦那さんに報告したときに想像より反応が薄いと感じたり、妊娠後の夫婦関係がうまくいかないと悩んだりしているママもいるかもしれません。今回は、妊娠中の旦那さんの家事協力で助かったことや旦那さんの反応で嬉しかったこと、よい夫婦関係を保つために意識していることなどについて体験談を交えてご紹介します。
2人目や3人目などの妊娠では、つわりのときに上の子とどのようにすごせばよいのか悩むママもいるかもしれません。今回は、ごはんの準備やお世話などママたちがつわりで大変だと感じた場面や、つわりのときの上の子とのすごし方の他に、上の子がいるときのつわりを乗り切るポイントについてご紹介します。
妊娠中の家事について、共働きで家事全部をパパと分担している家庭や、専業主婦で夫は家事しないという家庭でも、改めて分担の見直しをしたいと感じることもあるかもしれません。この記事では妊娠中にパパがやってくれた家事や、家事分担をするときに心がけたことなどについて、体験談を交えてご紹介します。
妊娠中の働き方が気になるママは多くいるのではないでしょうか。妊娠したら仕事はどうするのか、妊娠中にできる仕事を新たに始めるのか気になる場合もあるでしょう。今回は、妊娠する前に考えていた妊娠中の働き方、妊娠時期別の働き方の変化をママたちの体験談を交えてご紹介します。