【産婦人科医監修】妊娠中の頻尿・残尿感・痛みは膀胱炎?症状・原因・治し方について

妊娠中に膀胱炎を繰り返す理由とは

【産婦人科医監修】妊娠中の頻尿・残尿感・痛みは膀胱炎?症状・原因・治し方について

妊娠中に排尿時の下腹部痛、残尿感などの症状があるときは「膀胱炎」かもしれません。膀胱炎は妊娠中に注意しなければいけない病気のひとつです。膀胱炎は自然治癒するのでしょうか。妊娠中の膀胱炎の症状や原因、治療法について詳しく解説します。

妊娠中は膀胱炎になりすい?

「膀胱炎」は尿道から膀胱に細菌が入り込み、膀胱の粘膜に炎症が起きる病気です。

妊娠中はホルモンバランスの変化などにより、身体の免疫力が下がっている状態が続きます。

「膀胱炎」は妊婦さんが注意しなければいけない病気のひとつです。

妊婦さんが膀胱炎になりやすい理由

妊娠中はなぜ膀胱炎になりやすいのでしょうか。


免疫力の低下

妊娠中はお腹の赤ちゃんの成長を促すためにホルモンバランスが変化し免疫が落ちます。免疫力が低下すると、膀胱内に侵入した細菌が繁殖し膀胱炎になりやすいです。

また、妊娠中は身体やホルモンバランスの変化などでストレスが溜まりやすくなります。ストレスも免疫を下げる原因になります。


大きくなった子宮が膀胱を圧迫する

大きなお腹が圧迫する
KAMONRAT/Shutterstock.com

妊娠中は、赤ちゃんの成長と共に子宮が大きくなり膀胱を圧迫します。膀胱が圧迫されることによって、尿を溜められる量が減ったり、膀胱収縮のコントロールが乱れて尿を出し切ることが難しくなります。


おりものの量が増える

妊娠中は、ホルモンの分泌が増えるため、おりものの量が増え細菌が繁殖しやすくなります。おりものの増加は妊婦さんが膀胱炎になりやすい原因のひとつです。


頻尿でトイレを我慢する

妊娠中は、膀胱の筋肉を緩める働きがある黄体ホルモンの分泌量が増加し、頻尿になりやすいです。頻尿は妊婦さんの生理現象のひとつですが、頻尿を気にしてトイレを我慢すると膀胱炎の原因になることもあります。膀胱内に尿を溜める時間が長くなると細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎に繋がります。

女性は男性に比べ、尿道口と腟が肛門に近く尿道が短いため、膀胱炎にかかりやすいこともありますが、妊娠中はさらに膀胱炎の原因となる要因が増えます。

妊娠中の膀胱炎

膀胱炎には「急性膀胱炎」「出血性膀胱炎」「間質膀胱炎」など複数の種類があり、種類によって原因や症状が異なります。

妊婦さんに最も多いのは基礎疾患がなく、細菌感染が原因で起こる「急性膀胱炎」です。「急性膀胱炎」について詳しくみていきましょう。


急性膀胱炎の症状

急性膀胱炎は以下のような症状が現れます。


  • トイレに行く回数が増える(頻尿)
  • 排尿時に痛みがある(下腹部痛)
  • 残尿感
  • 尿が濁る
  • 血尿
  • 尿の匂いが強い

膀胱炎に多く見られる症状は、トイレが異常に近くなる頻尿、排尿時の痛み、残尿感などです。

尿道口やお腹の下の方(膀胱)に痛みを感じることが多く、排尿時に差し込むような痛みが生じ、排尿の終わりにツーンとしみるような痛み、じんじんとうずくような痛みが強く現れるのが特徴です。お腹に張りを感じることもあります。

症状が進行すると、細菌と戦うために集まった白血球や炎症部分の分泌液やはがれた膀胱の粘膜が尿に混入するため、尿が濁ります。


膀胱炎で病院を受診する目安

一般的に初期の膀胱炎の場合、水分を多めに摂り、尿量を増やすことで自然治癒することもありますが、妊娠中は普段より免疫力が落ちている状態のため、自然治癒するのは難しいかもしれません。

膀胱炎をそのまま放っておくと、発熱や嘔吐、背中や腰に強い痛みが現れる「腎盂腎炎」を引き起こす恐れもあるので、注意が必要です。

頻尿や排尿時の痛み、排尿後の違和感など膀胱炎の症状があるときは、早めに受診しましょう。

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膀胱炎の治療法

妊娠中の膀胱炎の治療は、抗菌剤や漢方薬などを服用して行う薬物治療が一般的です。症状によっては、鎮痛剤が処方されることもあります。いずれも、赤ちゃんへの影響を考慮し妊娠中でも使える薬が処方されます。

市販薬は薬の成分によっては赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、自己判断で使用するのは避けましょう。

水分を多めに摂り、膀胱内で繁殖した細菌を尿といっしょに排出すると早期治癒に繋がります。妊娠中の膀胱炎は早期治療が大切です。早めに受診し医師から処方された薬を正しく服用しましょう。

膀胱炎の予防法

膀胱炎の予防法について解説します。


トイレを我慢しない

膀胱炎を予防するためには、尿意を感じたら我慢せず、すぐに排尿することが大切です。

尿が膀胱に長く溜めておくと、体内の老廃物が排出されず、細菌が繁殖しやすくなります。


身体を冷やさない

暖かい恰好の妊婦さん
Pixel-Shot/Shutterstock.com

身体の冷えは免疫力を下げる原因になります。

エアコンの効きすぎに注意し、手足を冷やさない、温かい恰好をしたり、冷たい飲み物ではなく、温かい飲み物を選ぶなど、身体を冷やさないように対策しましょう。


清潔を保つ

膀胱炎を起こりにくくするためには、外陰部の清潔を保つことが大切です。通気性のよい下着を着用し、おりものシートやナプキンの交換はこまめに行いましょう。

入浴時、外陰部を石鹸で強く洗いすぎると、ばい菌の侵入を防いでくれる菌まで洗い流してしまうので、シャワーで洗い流す程度がよいです。洗浄機能付き便器も上手に使うと膀胱炎の予防になります。


排尿・排便時は前から後ろに向かって拭く

排尿、排便時は肛門部にいる菌が尿道口につきにくくなるよう、前から後ろに拭くように意識しましょう。


水分をしっかりとる

膀胱炎の予防や治療には、水分をしっかり摂っておしっこの量を増やし、繁殖した細菌をおしっこといっしょに外へ出すことが大切です。トイレに行く回数を減らすために、水分を控えるのはやめましょう。

妊娠中の膀胱炎は早めに治療しよう

病院を受診する妊婦さん
Blue Planet Studio/Shutterstock.com

妊娠中はホルモンバランスが変化し、ウィルスや細菌による感染症にかかるリスクが高く、膀胱炎を繰り返す妊婦さんも少なくありません。

頻尿は妊娠中によく見られる生理現象ですが、頻尿に伴い排尿時に痛みがある場合や濁った尿が見られるときは、急性膀胱炎を発症している可能性があります。

妊娠中は免疫力が低下しているため、自然治癒を待っている間に腎盂腎炎に悪化してしまう可能性がるので注意が必要です。排尿時に違和感を感じたときは、早めに受診し医師の診断を受けましょう。

また、処方された薬を飲み終わっても、症状が治らないときや繰り返すときは、再受診しましょう。

日頃からストレスや疲れをためないように心掛け、トイレを我慢しない習慣をつけ、膀胱炎を予防してください。


監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。 患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2019.12.15

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