出産後のセックスレス。女性として見られるのも嫌です【宋美玄】

出産後のセックスレス。女性として見られるのも嫌です【宋美玄】

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただくお悩み相談コーナー。今回は丸の内の森レディースクリニック院長の宋美玄先生が、産後のセックスレスのお悩みに答えます。

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【お悩み】3人目出産以降セックスレス。女として見られることに対する嫌悪感

女10歳、女7歳、男3歳のママ
女10歳、女7歳、男3歳のママ

3人の子どもを出産後、しばらくしてから夫をはじめとした男性との触れ合いや近い距離での関わりが苦手になってしまいました。

上2人は女の子で、3番目の子が男子だからなのでしょうか。それとも、年齢的なものなのでしょうか。夫からも自分を妻として、女性として見られることに嫌悪感を示してしまい、夫婦関係に影響が出ています。

夫にそのことを伝えても、納得がいかないようで以前と同じような夫婦関係を求められるのですが、どうしても気持ち悪くなってしまい、セックスレスどころかスキンシップもない状況が続いています。

何が原因なのか、対策することで改善するものなのか知りたいです。

【宋先生の回答】セックスレスの原因はひとつではなく複合的なもの。お互いが合意する地点を見つけて

小さなお子さんが3人もいればさぞ忙しいことでしょう。子育てでいっぱいいっぱいの日々で、夫から性的に見られることが嫌になる人は少なくなく、夫婦がセックスレスになるケースはよくあることです。

セックスレスの原因については、まず、男の子を産んだことと男性に嫌悪感を感じることの関連性はないといわれていますが、では何が原因かというと、相談者さん個人のここにいたるまでの背景や思いをもっとじっくり聞いてみなければ判断はできません。

なぜなら、これまで診察室でさまざまなカップルの性の相談を受けてきて、私自身も産後にセックスレスになった経験から、原因は複合的なものだと考えているからです。

たとえば、産後の心身ともにいちばん大変な時にワンオペ育児をしていたら、夫に誘われたとしても、「私はこんなに大変なのに……?」と、とてもじゃないけれどそんな気持ちになれませんよね。

「なぜこういうときにこうしてくれないのか」「なぜ育児の大変さが伝わらないのか」など、夫が育児に共感してくれなかったり、非協力的だったりする場合、気持ちが冷めて、嫌悪感やセックスレスにつながりやすくなります。

もちろん、相談者さんがおっしゃるように、年齢的なもので性欲が減退する場合もありますが、セックスレスに関しては原因はひとつではなく、夫婦間でのボタンの掛け違いが積み重なることで起こることの方が多いように思います。

そのうえで、今後についてどう考えるとよいかというと、「したくない」側と「したい」側がいる場合、お互いがどう折り合いをつけるかが重要になります。

一度セックスレスになると、その関係のままずっと戻らない人もいれば、子どもがある程度大きくなり、手がかからなくなったら関係が戻ったという人もいます。

「いつまでも男と女でいたい」という人には、「ある程度スキンシップを続けましょう」と言えますが、今現在はっきり嫌悪感を感じ、女性に見られることすら嫌悪している方に「いつか性欲が戻りセックスしたくなるときのために、夫をむげにしないように」「夫との関係維持のためにたまにはセックスに応じましょう」とは言えません。

夫婦だからといって、気持ちが伴わないのにセックスに応じる必要はないんです。

もちろん、妻がセックスを拒絶し続ける場合、夫側から「夫婦でいられない」と言われる可能性もあります。妻に「嫌なのにセックスに応じろ」と言えないように、夫も心のある人間なので、お互いが合意する地点を見つける必要があります。

これまで、診察室でもたくさんの相談を受けてきましたが、セックスレスのお悩みは、片側だけに聞いても解決できないことがほとんどでした。もう片方に話を聞くとまったく違うことを言われることが多いからです。

それなのに「セックスレスさえ解消すれば夫婦関係は元通り」と思っているのであれば、それはつまり、セックスレス以前にパートナーシップが崩壊している証拠。

セックスレスは離婚の原因にもなりえるので、夫婦関係を続けたいと思っているのであればカップルでカウンセリングを受けてみるのもよいでしょう。嫌なのはセックスなのか、それともパートナーそのものなのかを自分自身に問いかける必要があります。

Profile

宋美玄(ソンミヒョン)

宋美玄(ソンミヒョン)

産婦人科医、医学博士、日本周産期・新生児学会会員、日本性科学会会員。 一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事。 丸の内の森レディーズクリニック院長。 1976年1月23日兵庫県神戸市生まれ。 2001年大阪大学医学部医学科卒、同年医師免許取得、卒業後大阪大学産婦人科入局。 2007年川崎医科大学講師就任、09年にイギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。10年に出版した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』(ブックマン社)がシリーズ累計70万部突破の大ヒットとなり、各メディアから大きな注目を集める。その後も、各メディアへの出演や妊娠出産に関わる多くの著書を出版。 2012年女児、15年に男児を出産し2児の母になり子育てと産婦人科医を両立。 “診療95%、メディアへの露出5%”としながらも、“カリスマ産婦人科医”として、対応しうる限りのメディア出演、医療監修等で様々な女性のカラダの悩み、妊娠出産、セックスや女性の性などに女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

2021.11.16

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