妊娠中はお腹の赤ちゃんのために、さまざまな栄養をしっかり摂りたいですよね。しかし、過剰摂取に注意が必要な栄養素があるのはご存知ですか。今回はそのなかのひとつ、ビタミンAについて説明します。野菜やシリアル、野菜ジュースなど、ビタミンAが多く含まれる食品や飲み物、理想的な摂取量や上限などもご紹介します。
[関連記事]
ビタミンAは骨や皮膚、粘膜を守ったり、肝臓の機能を正常に保つ役割など、さまざまな作用をもたらす栄養素です。また、視力の低下を予防したり、暗い場所での目の働きなどにも関わってきます。
ビタミンAは水に溶けにくく、脂に溶けやすい性質をもつ脂溶性ビタミンの一種で、レチノールと呼ばれることもあります。
単位としては「レチノール活性当量(μgまたはμgRAE)」として表されます。この数値を覚えておくことで、ビタミンAを摂取したいときや、摂取量を減らしたいときに参考になるかもしれません。
妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、お腹の赤ちゃんにも悪影響が出る場合があります。妊娠の時期によっては、特に注意する必要があるようです。
では、妊娠中のママがビタミンAを摂るときの理想的な摂取量と、摂取量の上限、過剰摂取に注意する時期はいつなのでしょうか。
妊娠中のママが、ビタミンAを過剰摂取すると、お腹の赤ちゃんの身体や機能に先天的な形態異常を引き起こす恐れがあると言われています。
特に、妊娠してから1~3カ月くらいの妊娠初期にあたる時期は、赤ちゃんの脳や心臓、目や鼻などの器官、骨髄などが発達し、身体が作られる時期です。妊娠初期のビタミンAの過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンAを過剰摂取しないようにするためには、どのくらいの量を目安にするとよいのか気になりますよね。厚生労働省が定めている、妊婦が1日に摂取してもよいビタミンAの上限量は「3,000μgRAE」です。
レバーなどは多くのビタミンAが含まれているので、食べ過ぎるとあっというまに上限を越してしまうかもしれませんので注意が必要です。
また年齢ごとに推奨される摂取量が決まっており、女性の場合、18歳より上の年齢は「650~700μgRAE」くらいと言われています。
ビタミンAの過剰摂取が引き起こすトラブルは、前述した赤ちゃんの形態異常だけではありません。
腹痛やめまいなどの急性的な症状に加え、皮膚乾燥や、関節痛、骨粗しょう症などを引き起こす場合もあります。ママのためにも過剰摂取は控えたほうがよいようですね。
過剰摂取には気をつけないとならないものの、妊娠中はさまざまな栄養素を摂ることが推奨され、ビタミンAもそのうちのひとつです。妊娠中のママが食べるものを気にするときに、ビタミンAはどんな食品に多く含まれるのか気になりますよね。
続いてビタミンAが含まれる食品を紹介します。
ニンジン、モロヘイヤ、ほうれんそう、かぼちゃ、春菊など
ニンジンやかぼちゃなどの緑黄色野菜がもつ色素成分「β-カロテン」は体内でビタミンAに変換され作用します。特に、ニンジンは他の緑黄色野菜に比べて、β-カロテンを多く含んでいますので、スープなどにして食べると効率よくビタミンAを摂取することができるかもしれません。
豚レバー、鶏レバー、牛レバーなどの肝臓類
内臓類は、さまざまなビタミンが多く含まれる、優秀なビタミン供給源です。特にレバー(肝臓)にはビタミンAが貯蓄されているので、他の内臓よりも多く含まれています。
あんこう(肝)、あゆ、うなぎ、あなご、ホタルイカなど
あん肝やあゆの内蔵など、やはり内蔵類にビタミンAが多く含まれるようです。また、うなぎやあなご、イカやタコなどにもビタミンAが含まれます。
味付け海苔、抹茶、バター、野菜ジュース、シリアルなど
ビタミンAは緑茶や野菜ジュースからも摂取することができるようです。水分補給と合わせて摂ることができたらよいかもしれませんね。また、栄養強化食品のシリアルにもビタミンAが含まれますが、野菜や肉などの食品に比べると微量となるものが多いようです。
下記、内閣府の食品安全委員会が出している資料のなかに、主な食品別のビタミンA含有量が記載されています。妊娠中はそちらも参考にして栄養摂取の目安としてください。
摂取量の上限は守らないと妊娠中のママにもお腹の赤ちゃんにもよくないビタミンA。しかし、体にとって必要な栄養素のひとつでもあるビタミンA。足りないと感じたときは、どのように摂取すればよいのでしょうか。
ビタミンAが足りないときはサプリメントを活用するのもよいでしょう。ただし、食事のメニューでビタミンAが明らかに足りないときに使うのがよいかもしれません。通常の1日3食の食事をしている場合、サプリメントも併用すると過剰摂取につながるので、食事とサプリメントをバランスよく摂ることが大切です。
ビタミンAを効率よく、過剰摂取にならないように摂るためには、緑黄色野菜を食べ、「β-カロテン」を摂取するのがよいでしょう。緑黄色野菜の野菜ジュースを利用するのも妊婦さんには取り入れやすいかもしれません。
β-カロテンは体の中で必要量のみをビタミンAに変換するので、過剰摂取にはならないと言われています。摂りすぎた分は体から排泄されます。
妊娠中のママは赤ちゃんのために、多く栄養を摂らなくてはと考えるものですよね。しかし、ビタミンAなどの栄養素は過剰摂取すると赤ちゃんに悪影響を与える場合もあります。
妊娠初期の1~3カ月は赤ちゃんの体の形成に関わる時期ですので、ビタミンAの摂取は特に注意が必要です。1日の摂取量の上限よりも少し抑えたほうが、安心かもしれません。
妊娠中は緑黄色野菜や野菜ジュースなどの食品からβ-カロテンを摂取すると、過剰摂取にならずに効率よくビタミンAを摂ることもできそうです。
栄養素の過剰摂取を気にすることで、逆に栄養が不足してしまっても問題です。妊娠中はとくにバランスよく栄養を摂れるように意識できるとよいですね。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
信州大学卒医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。
患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
※記事内で使用している参照内容は、記事作成の2018年9月14日時点のものになります。
2018年09月25日
Twitterフォロワー10.8万人!漫画『コウノドリ』取材協力&今橋先生の中の人としておなじみの新生児科医・今西洋介先生に、乳児を育てるママや妊婦さんがいだきがちな不安をテーマにさまざまなお悩みに回答していただきます。
ふらいと先生(今西洋介)
妊娠中に母親が感染するとそこから起きる胎内感染。実は日常のなにげない行動から感染してしまう場合もあることをご存じでしたか?正しい知識を持ち、感染症の予防を心がけましょう。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
女性の20%超が罹患するといわれている子宮筋腫。将来的に妊娠を希望する場合や、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合、どのような対処をするとよいのでしょう。また、不妊との関連はあるのでしょうか。子宮筋腫の症状や、検査、治療方法について解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中に気を付けたい病気のひとつである妊娠糖尿病。胎児への影響以外にも、なぜ注意が必要か気になる妊婦の方もいるのではないでしょうか。また、万が一妊娠糖尿病になった場合は、どのようなことに気を付けて過ごすとよいのでしょう。今回は、妊娠糖尿病とはどのような病気なのか、診断基準や母体や赤ちゃんへの影響、治療法について解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
肩が重い、肩や首が張る、痛いなどと感じる肩こりは、妊娠中の数あるマイナートラブルのうちのひとつ。悪化すると、頭痛や吐き気まで感じることもあるため注意が必要です。今回は、妊娠中の肩こりの原因や対策、注意点について解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中は体にさまざまな変化が起こりますが、なかには頭痛に悩む方も。片頭痛などのよくある頭痛と、妊娠中に起こる頭痛はどのような違いがあるのでしょうか。今回は、妊娠中に起こる頭痛の原因や対処法、受診の目安について解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中につわりを経験する妊婦さんの中には、胸焼けを起こす場合があるかもしれません。つわりで胸焼けを起こした場合はどのような対策をとるとよいのでしょうか。つわりの症状と似ている逆流性食道炎との違いや、つわりで胸焼けが起こったときに食べてもよい食べ物について、産婦人科医監修のもと解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中にくしゃみをするとお腹が痛いと感じることもあるでしょう。激痛が走ったり、下腹部痛があると、赤ちゃんのことが心配になる妊婦さんもいるかもしれません。今回は、くしゃみによる腹痛の原因や赤ちゃんへの影響、痛みを軽減する方法、くしゃみの予防方法について解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中の発熱や出血が赤ちゃんに影響しないのか不安になることもありますよね。妊娠初期に高熱がでたとき、ママはどのような対処をしたらよいのでしょうか。妊娠中に熱が出る原因や39度以上の高熱がでたときの風邪薬の服用や対処法、高熱がもたらす流産のリスクはあるのかについて解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中は胃痛の症状に悩まされる妊婦さんも少なくないかもしれません。妊娠中に胃痛が起こる原因を初期、中期、後期の時期別に詳しく解説します。妊娠中の胃の痛みにはどのような対処をしたらよいのでしょうか。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
妊娠中、副鼻腔炎になる妊婦さんは少なくないようです。胎児への影響を考えて、妊娠中は抗生物質や痛み止めなどの薬の服用ができない場合にどのような治療を行うのでしょうか。大人の副鼻腔炎の症状と、自然治癒するのかや妊娠中に副鼻腔炎になったときのホームケアについて解説します。
金髙清佳(おひさまクリニック)
妊娠中、疲れやすいと感じる妊婦さんは多いのではないでしょうか。妊娠初期から6カ月、7カ月頃、後期に渡り疲労感の種類が異なるかもしれません。妊娠するとなぜ疲れやすくなるのかを時期別にご紹介します。また、疲れを感じたときの対処法について産婦人科医監修の元、解説します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)