苦手なママ友との付き合いをラクにするマインドセット【藤野智哉】

苦手なママ友との付き合いをラクにするマインドセット【藤野智哉】

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は「自分を幸せにする「いい加減」の処方せん」が話題の精神科医・藤野智哉先生が、ママ友づきあいに関するお悩みに答えます。

藤野智哉
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【お悩み】同じマンションのママ友が苦手。この先どう付き合っていけばよいですか?

5歳女子のママ
子どもが生まれ、夫婦で新築マンションを購入。わが家と同じような家族構成の方が多く入居しています。

似たような境遇であることから、始めは娘にも友だちができやすくていいと思っていたのですが、いいことばかりではありませんでした。

同じマンションに住む娘と同じ保育園のある女の子は、1歳から同じクラスで娘と仲が良かったのですが、年中、年長になるにつれ、娘がほかの子と仲良くすることを許さなくなりました。

娘は気が弱く、その子の言うことを断れず、家ではよく泣いています。その子のママに、そのことをやんわり伝えても、「子ども同士のことだから」と相手にしてくれず、私も親同士の関係を悪くすることが怖く、それ以上強く言うことはできません。

保育園だけでなく、この先小学校も、受験しなければ中学も、もしかすると高校までずっとこの親子と一緒と考えると、マンションを買ったことを後悔してしまうほどです。

夫に話しても「ずっとは続かない」とか「そんなことがあるたびに引っ越すわけにいかない」と真剣にとりあってくれません。

私が気にし過ぎかもしれませんが、環境を変えられない場合、どのように気持ちをもてばよいでしょうか。

【藤野先生の回答】同じ関係が10年、20年と続くということはありません。

ご相談のように、ご近所さんとの関係で悩まれている方は少なくありません。

ただ、果たして今のママ友とそのお子さんと、この先10年、20年と同じ関係が続いているでしょうか。

たしかに今現在、娘さんの問題はありますが、先のことに関してはどこまでいっても予測でしかありません。

そして、人はえてして未来のことや未知のことを悪い方に考えてしまうものです。

認知行動療法では、人はなにかの事象を捉える際、瞬間的に自分で勝手な意味づけをする「自動思考」を持っているといわれています。

たとえば、話しかけて返事が返ってこなかったときに「無視された」と思うのは、すでに自分のイメージがプラスされていて、事実を事実として捉えられていない証拠です。

「返事が返ってこなかった」という事実はそれ以上でも以下でもなく、そこに意味づけをしているのは自分です。

自分の自動思考をきちんと意識しておくと、「今悪い方向に向かっているな」と気が付くことが可能です。

「現実をあるがままに捉える」こととはつまり、「今確定している事実を事実として捉える」ことです。

仮に保育園の間は一緒だとしても、小学校か中学校でどちらかが受験をすれば違う学校になる可能性もあります。高校ともなると、全然違う学校に行く可能性のほうが高いでしょう。

相談者さんが同じ場所に住んでいたとしても、相手が引っ越すかもしれませんし、お互い健康であるかすらも分かりません。

今確定しているのは娘さんとその子の現在の関係だけで、今より先の悪いことはあなたの想像でしかないんです。

「ずっとは続かない」というご主人の言い方は、少し突き放しているように感じるかもしれませんが、割と的を得ています。

たとえば、同じような家族構成の方が多く入居しているなら、今後、お互いほかに友だちができる可能性は多いにあります。

自分の立場で考えてみてほしいのですが、「ほかの子と仲良くしないで」と言ってくる子がいたとして、その関係が10年先も変わらず、保育園から高校時代まで友だちがひとりだけなんていうことはほぼないでしょう。

ありもしない未来を悲観するよりも、冷静に、現実に目を向けて、今、何ができるかを考えたほうがよほど有意義です。

ですから、今現在、どう気持ちを持てばよいかという質問に対するアンサーは、マインドフルネスのように、今この瞬間に目を向け、「事実を事実として捉える練習をすること」でしょうか。それは「俯瞰して現実を見ること」ともいえます。

もちろん、すぐに身につくものではありませんが、根本から変えていくためには習慣として身に着けていくしかないんです。

精神科のカウンセリングも一度ですべてがうまくいくものではありません。

まずは「こういう考え方がある」と、頭の片隅で知っておくだけでも、まったく違いますから、「あるがままを」「俯瞰して見る」ことの大切さを知っておいてください。

とはいえ、嫌なことと向き合うには体力がいるため、タイミングが重要です。

調子が悪いとき悪いことを考えると、さらに悪いほうに思考がとらわれてしまうもの。

私の著書の中でも、嫌なことを受け入れ、受け流すさまざまな方法を提案していますが、これらも「練習しなければ」と思うと、途端にまたしんどくなります。

自分の調子が悪いときは、いったん見ないふりをしてフタをしておくのも自分を守るための手段の一つです。そうこうしているうちに環境に変化が出るかもしれません。

また、少しエネルギーが溜まり考えることができるようになったときに目を向けるべきことは、不確定な未来ではなく、今実際に困っている娘さんを、どうケアしていくか、ということではないでしょうか。
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藤野智哉

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精神科医。1991年7月8日生まれ。 秋田大学医学部卒業。 精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は大学病院勤務の傍ら医療刑務所の医師や看護学校の非常勤講師などとしても務める。

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