泣いている赤ちゃんを構ってあげないと、泣かない、笑わないなどの特徴があるサイレントベビーになるといわれることがあるようです。保護者は、我が子がサイレントベビーではないかと心配になるかもしれません。赤ちゃんとどのように接したらよいのか、また保護者の心の持ち方など、対応の工夫を紹介します。
「サイレントベビー」とは、1990年に小児科医の柳沢慧氏が著書で提唱した言葉で、「無表情」「泣かない」「笑わない」などといった特徴を持つ赤ちゃんのことを指します。
「泣いている赤ちゃんを放っておくと、表情が乏しくなったり主張をしなくなる」「サイレントベビーのまま成長すると、コミュニケーション能力が低くなる」とテレビなどのメディアでも取り上げられることがあり、一般的にも知られるようになったようです。
しかしながら、サイレントベビーとは日本だけで使われている言葉で、正式な病名や医療用語ではありません。医学的な根拠はなく、専門家や医師の中には、信憑性を疑問視する声もあります。保護者の不安を煽るような論調やメディアの伝え方に、危機感を持っている専門家も多いようです。
このような情報があふれるなかで、「うちの子はサイレントベビーかもしれない」と悩む保護者もいるでしょう。どのようなときに感じるのか、話を聞きました。
泣くことや笑うことが少なかったり反応が薄いと、サイレントベビーを懸念してしまう保護者が多いようです。
赤ちゃんがあまり泣かない、笑わないことの原因はなんでしょうか。多くの場合、それは単純に個性です。赤ちゃんの性格がおとなしいこともありますし、細かいことが気にならない性格なのかもしれません。また、お兄ちゃんお姉ちゃんがいる場合などは、保護者が近くにいなくても、にぎやかな気配を感じて安心しているのかもしれません。
赤ちゃんの性格は、成長につれて変わっていくことも珍しくありません。深刻に受け止めずに、まずは赤ちゃんを見守るのがよいでしょう。
赤ちゃんがおとなしいタイプで何をしても反応が薄いと、サイレントベビーだけではなく、病気や障がいの心配をする保護者もいるでしょう。心配があれば小児科医にご相談ください。一般的に自閉症や発達障害の赤ちゃんには、下記のような特徴があるといわれています。
しかし大人同様、赤ちゃんにはそれぞれ個性があります。仮に障がいがあっても、はっきりと特性が現れるのは3~5歳頃が多いとされています。そのため、生後まもない赤ちゃんに発達障害があるかどうかは、現在の医学では確定できません。ですが、不安があればひとりで悩まずに、かかりつけ医や健診のときなどに相談をするとよいでしょう。
産後のママは、体力的にも精神的にも余裕がありません。赤ちゃんの気持ちを汲み取りたいと思ってはいても、なかなか難しいこともあるでしょう。そんななかで、赤ちゃんが泣くことや笑うことが少ないからといって、サイレントベビーかもしれないと過度に心配して、自分に責任があるのではと思い悩む必要はありません。
もしサイレントベビーかもしれないと不安になったら、下記のように赤ちゃんとの関わり方を工夫しながら、保護者自身のストレス軽減にも重きをおくとよいかもしれません。
育児本などでは、赤ちゃんにたくさん話しかけることがよいとされていますが、何を話したらいいのか分からない保護者も少なくないかもしれません。
おすすめの方法は、実況中継をすることです。「おっぱいたくさん飲んでるね。おいしい?」「メリーをじーっと見ているね。何を考えているのかな?」といったように、目の前で起きていることをそのまま話してみてください。
また、お世話をしながら鼻歌を歌うことで、保護者の声を赤ちゃんに聞かせてあげるのもよいでしょう。決して難しく捉える必要はありません。
保護者が忙しいときは、赤ちゃんが泣いていてもすぐに駆けつけることが難しいこともあります。そのようなときは、ひとまず声だけでもかけてみてください。赤ちゃんに、反応してくれていることが伝わるはずです。
赤ちゃんが笑ったときや、「あー」「うー」と喃語を話しているときは、少し大げさなくらいに反応をするとよいでしょう。自分の行動に保護者が反応してくれる、喜んでくれると分かると、笑顔や喃語などの行動が増えてくるかもしれません。
家事の負担を軽減することで、赤ちゃんと向き合う時間や気持ちの余裕が作れることもあるでしょう。家事の負担が重いと感じたら、完璧を目指すことはやめて、時短家電や宅配サービスを利用するなどして、負担を減らしましょう。また、夫婦での役割分担を見直すタイミングも必要かもしれません。
赤ちゃんが生まれてから四六時中いっしょに過ごしていると、緊張感がある状態が続いてしまいます。ひとりの時間を作り気分転換することで、気持ちに余裕ができて、前向きに育児に取り組めるようになるかもしれません。周囲にサポートしてもらう体制をつくっていけるとよいでしょう。
赤ちゃんの心の発達において、親子の関わりはとても大切です。しかし、保護者が一生懸命に頑張りすぎてストレスが溜まった状態でお世話をしていると、赤ちゃんにも不安が伝わるかもしれません。
よく泣く子、あまり泣かない子は、単に個人差があるだけということを覚えておきましょう。そして、サイレントベビーなどの言葉に過敏に反応せずに、ゆとりある気持ちで赤ちゃんに寄り添い、たくさんの愛情を伝えてあげられるとよいでしょう。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。
2022年06月15日
子どもの栄養摂取について悩むママ・パパも多いのではないでしょうか。今回の記事では、日本の子どもの栄養不足について小児科医に話を伺いました。栄養が与える影響とご家庭でも気軽に楽しく栄養摂取できる方法をお伝えします。
株式会社明治
PR
目が合うとにっこりしてくれたり、声を出して笑ってくれる赤ちゃんは、見ているだけでも癒やされますよね。そこで今回は、赤ちゃんが声を出して笑う時期や、赤ちゃんの笑顔を引き出すコツを、ママたちの体験談を交えながらご紹介いたします。
保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)
妊娠中はどのような食べ物を食べてもよいのか、心配になることが多いですよね。妊娠中に蟹を食べてもよいのか、気になったことがある人もいるかもしれません。今回は蟹を食べるときの注意点や気をつけたいことをまとめました。また、妊娠中に蟹を食べたことがあるママのエピソードも紹介します。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
親として子どもの歯の健康が気になるのは当然のことですが、子どもの成長とともに気がかりや苦労も増えるのではないでしょうか。今回の記事では、子どもの歯の健康を守るために家庭でできることについて、歯科医の児玉先生と現役保育士のてぃ先生に話を聞きました。
丹平製薬株式会社
PR
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの人が生活の変更を余儀なくされました。以前よりもストレスが増えた生活の中、生理前に頭痛や眠気を感じるほか、イライラしたり、悲しくなったりすることはありませんか?田園調布オリーブレディースクリニック院長の杉山太朗先生に、女性特有の症状「PMS」について聞きました。
杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
コロナウィルス感染拡大の長期化や度重なる緊急事態宣言などニューノーマルの生活様式では、マスク着用は必須な状況が続く。一方で夏日が観測されることも増え、マスクの着用による熱中症の危険も指摘されている。第一三共ヘルスケアは感染症対策と熱中症に関する調査を発表、医師によるコロナ禍での熱中症対策も紹介する。
0歳からはじめる「歯育」。まだ歯が生えていない乳児期や、永久歯に生え変わっていない幼児期になぜ歯医者に通うべきなのか?子どもが歯医者嫌いにならないクリニックの選び方や、小児歯科で行う具体的な歯と口の治療・予防法など、清水歯科クリニックの清水清恵先生が徹底解説。
0歳からはじめる「歯育」。まだ歯が生えていない乳児期や、永久歯に生え変わっていない幼児期になぜ歯医者に通うべきなのか?子どもが歯医者嫌いにならないクリニックの選び方や、小児歯科で行う具体的な歯と口の治療・予防法など、清水歯科クリニックの清水清恵先生が徹底解説。
0歳からはじめる「歯育」。まだ歯が生えていない乳児期や、永久歯に生え変わっていない幼児期になぜ歯医者に通うべきなのか?子どもが歯医者嫌いにならないクリニックの選び方や、小児歯科で行う具体的な歯と口の治療・予防法など、清水歯科クリニックの清水清恵先生が徹底解説。
0歳からはじめる「歯育」。まだ歯が生えていない乳児期や、永久歯に生え変わっていない幼児期になぜ歯医者に通うべきなのか?子どもが歯医者嫌いにならないクリニックの選び方や、小児歯科で行う具体的な歯と口の治療・予防法など、清水歯科クリニックの清水清恵先生が徹底解説。
コロナ禍で自身や家族の健康について考え直したという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、からだにやさしい素材にとことんこだわった食品から、手軽に栄養不足の改善をサポートするサービスなどを紹介した記事を総まとめ。毎日の食卓やおうち時間のお供に、からだにやさしい食品を取り入れてみては。