【小児科医監修】サイレントベビーの医学的根拠は?対応の工夫などを紹介

【小児科医監修】サイレントベビーの医学的根拠は?対応の工夫などを紹介

泣いている赤ちゃんを構ってあげないと、泣かない、笑わないなどの特徴があるサイレントベビーになるといわれることがあるようです。保護者は、我が子がサイレントベビーではないかと心配になるかもしれません。赤ちゃんとどのように接したらよいのか、また保護者の心の持ち方など、対応の工夫を紹介します。

サイレントベビーとは

「サイレントベビー」とは、1990年に小児科医の柳沢慧氏が著書で提唱した言葉で、「無表情」「泣かない」「笑わない」などといった特徴を持つ赤ちゃんのことを指します。

「泣いている赤ちゃんを放っておくと、表情が乏しくなったり主張をしなくなる」「サイレントベビーのまま成長すると、コミュニケーション能力が低くなる」とテレビなどのメディアでも取り上げられることがあり、一般的にも知られるようになったようです。

※写真はイメージ(iStock.com/RichLegg)
※写真はイメージ(iStock.com/RichLegg)

しかしながら、サイレントベビーとは日本だけで使われている言葉で、正式な病名や医療用語ではありません。医学的な根拠はなく、専門家や医師の中には、信憑性を疑問視する声もあります。保護者の不安を煽るような論調やメディアの伝え方に、危機感を持っている専門家も多いようです。

サイレントベビーかもしれないと感じたきっかけ

このような情報があふれるなかで、「うちの子はサイレントベビーかもしれない」と悩む保護者もいるでしょう。どのようなときに感じるのか、話を聞きました。

30代/1児のママ
30代/1児のママ

5カ月の娘は、あまり笑いません。機嫌がいいときはニコニコしているように見えることもありますが、同じくらいの月齢の子はケラケラと声を出して笑ったり、ママの顔を見て嬉しそうにしていることもあるので、比べると不安になってしまいます。

夕方の忙しい時間は、娘が泣いていてもすぐに構ってあげないこともあるので、そのせいなのかなと思ってしまいます

20代/1児のママ
20代/1児のママ

我が家の4カ月の赤ちゃんは泣くことが少なく、自分の手を舐めたり、ボーっとしながらメリーを見ている時間が長いです。

ママ友からは「手のかからない子でうらやましい」と言われることが多いですが、もしかしてサイレントベビーなのかなと心配に感じています。手がかからないため、あまり抱っこなどをしていないのが問題なのでしょうか

泣くことや笑うことが少なかったり反応が薄いと、サイレントベビーを懸念してしまう保護者が多いようです。

※写真はイメージ(iStock.com/kazuma seki)
※写真はイメージ(iStock.com/kazuma seki)

赤ちゃんがあまり泣かない・笑わない原因は?

赤ちゃんがあまり泣かない、笑わないことの原因はなんでしょうか。多くの場合、それは単純に個性です。赤ちゃんの性格がおとなしいこともありますし、細かいことが気にならない性格なのかもしれません。また、お兄ちゃんお姉ちゃんがいる場合などは、保護者が近くにいなくても、にぎやかな気配を感じて安心しているのかもしれません。

赤ちゃんの性格は、成長につれて変わっていくことも珍しくありません。深刻に受け止めずに、まずは赤ちゃんを見守るのがよいでしょう。

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病気や障がいの可能性はある?

赤ちゃんがおとなしいタイプで何をしても反応が薄いと、サイレントベビーだけではなく、病気や障がいの心配をする保護者もいるでしょう。心配があれば小児科医にご相談ください。一般的に自閉症や発達障害の赤ちゃんには、下記のような特徴があるといわれています。


  • 感情表現が少ない
  • 目が合わない
  • 周りのことに興味がないように見える

しかし大人同様、赤ちゃんにはそれぞれ個性があります。仮に障がいがあっても、はっきりと特性が現れるのは3~5歳頃が多いとされています。そのため、生後まもない赤ちゃんに発達障害があるかどうかは、現在の医学では確定できません。ですが、不安があればひとりで悩まずに、かかりつけ医や健診のときなどに相談をするとよいでしょう。

赤ちゃんとの関わりで工夫できること

※写真はイメージ(iStock.com/nmaxfield)
※写真はイメージ(iStock.com/nmaxfield)

産後のママは、体力的にも精神的にも余裕がありません。赤ちゃんの気持ちを汲み取りたいと思ってはいても、なかなか難しいこともあるでしょう。そんななかで、赤ちゃんが泣くことや笑うことが少ないからといって、サイレントベビーかもしれないと過度に心配して、自分に責任があるのではと思い悩む必要はありません。

もしサイレントベビーかもしれないと不安になったら、下記のように赤ちゃんとの関わり方を工夫しながら、保護者自身のストレス軽減にも重きをおくとよいかもしれません。


赤ちゃんとのコミュニケーションを工夫する

育児本などでは、赤ちゃんにたくさん話しかけることがよいとされていますが、何を話したらいいのか分からない保護者も少なくないかもしれません。

おすすめの方法は、実況中継をすることです。「おっぱいたくさん飲んでるね。おいしい?」「メリーをじーっと見ているね。何を考えているのかな?」といったように、目の前で起きていることをそのまま話してみてください。

また、お世話をしながら鼻歌を歌うことで、保護者の声を赤ちゃんに聞かせてあげるのもよいでしょう。決して難しく捉える必要はありません。


泣いたときはひとまず声だけかける

保護者が忙しいときは、赤ちゃんが泣いていてもすぐに駆けつけることが難しいこともあります。そのようなときは、ひとまず声だけでもかけてみてください。赤ちゃんに、反応してくれていることが伝わるはずです。


赤ちゃんの笑顔や喃語に大きく反応する

赤ちゃんが笑ったときや、「あー」「うー」と喃語を話しているときは、少し大げさなくらいに反応をするとよいでしょう。自分の行動に保護者が反応してくれる、喜んでくれると分かると、笑顔や喃語などの行動が増えてくるかもしれません。

※写真はイメージ(iStock.com/dragana991)
※写真はイメージ(iStock.com/dragana991)

家事の負担を軽減する

家事の負担を軽減することで、赤ちゃんと向き合う時間や気持ちの余裕が作れることもあるでしょう。家事の負担が重いと感じたら、完璧を目指すことはやめて、時短家電や宅配サービスを利用するなどして、負担を減らしましょう。また、夫婦での役割分担を見直すタイミングも必要かもしれません。


ひとり時間を確保し気分転換をする

赤ちゃんが生まれてから四六時中いっしょに過ごしていると、緊張感がある状態が続いてしまいます。ひとりの時間を作り気分転換することで、気持ちに余裕ができて、前向きに育児に取り組めるようになるかもしれません。周囲にサポートしてもらう体制をつくっていけるとよいでしょう。

ゆとりある気持ちで愛情を伝えよう

※写真はイメージ(iStock.com/Yagi-Studio)
※写真はイメージ(iStock.com/Yagi-Studio)

赤ちゃんの心の発達において、親子の関わりはとても大切です。しかし、保護者が一生懸命に頑張りすぎてストレスが溜まった状態でお世話をしていると、赤ちゃんにも不安が伝わるかもしれません。

よく泣く子、あまり泣かない子は、単に個人差があるだけということを覚えておきましょう。そして、サイレントベビーなどの言葉に過敏に反応せずに、ゆとりある気持ちで赤ちゃんに寄り添い、たくさんの愛情を伝えてあげられるとよいでしょう。


監修:保科しほ

Profile

保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)

保科しほ(医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック)

日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

2022.06.15

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