【子どもの腰痛】重たいランドセルの負担を軽減するには?
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ネット環境が整った時代に生まれ、スマホやタブレットなどのデジタルデバイスの進化とともに成長してきた現代の子どもたち。親世代の子ども時代とは、社会環境や生活の仕方が変化した今、子どもたちの心身には新たな問題が起きている。後編では、子どもの腰痛予防と痛みを緩和する方法について、上高田ちば整形外科・小児科 院長の千葉直樹先生にインタビュー。
腰に集中しないよう重さを分散させる
前編では、子どもが腰痛を訴える理由が増えている背景を上高田ちば整形外科・小児科の院長、千葉直樹先生(以下、千葉先生)に聞いてきた。
子どもの腰痛が増えている要因は主にふたつあると千葉先生。ランドセルの重量化と、子どもたちの二極化する運動習慣が関係していることがわかった。運動習慣がない子どもは腰を守るための筋力が低下が腰の痛みを招き、反対に激しい運動をする子どもは繰り返しの動作により腰痛のリスクを抱えている。
ランドセルやリュックの負担のない背負い方
「体重の15%ほど(小学校低学年であれば2~3kg)が子どもが背負える適正重量ではあるものの、授業の内容や持ち物により調整できない現実があるでしょう。
ランドセルやリュックが背中から離れていると、体感として同じ重量でも重く感じる。これは実際に腰と肩に重さが集中している状態にあります。背骨に沿うように肩ベルトを調節し、フィットさせると重さを背中全体で受け止められます。また、登山リュックなどに付属しているフロントストラップを使うと、重心が中央に集まり負担が軽減します。
荷物が重いと前かがみになりがちですが、前傾姿勢は腰痛につながります。胸を張り背骨を伸ばして背負うことを心がけましょう」
荷物の重心は体から近いとバランスが取りやすい。厚い教科書は背中側に入れるなどの工夫も取り入れるとよいだろう。
子どもの腰のストレスを軽減する方法
「痛みによっては早い段階で治療しないと、骨が離れたままになり慢性的に腰痛と付き合っていかなければならない。小学生から中学生のお子さんで腰痛を訴えた場合、早期治療がポイントになるため早めに整形外科に相談しましょう」と話す千葉先生。
腰痛を予防するために自宅でできることを教えてもらった。
椅子の座り方
まずは、椅子に座る際のポイントだ。背もたれのある椅子に深く腰掛けること、そして椅子と腰の間にスペースが余る場合はクッションを置くことが大切だと千葉先生。
「立っているよりも、座っているときのほうが腰への負担は大きい。姿勢にもよりますが座位のほうが直立よりも40%ほど腰に負担がかかっています。
立っている状態だと、上半身の重さを下半身全体に分散させることができますが、座っていると腰と骨盤で上半身の重みを全て受け止めることになる。そのため腰に負担を与えない座り方は重要なのです。
腰痛を未然に防ぐためには骨盤を立てるようにして座れるといいですね。足が地面にしっかりとついた状態で深く腰掛けることができているか、椅子の高さも調節しましょう」
就寝時は負担を軽減するストレッチと寝姿勢を
「寝る前や起きたときに腰や股関節周りのストレッチをして、柔軟性を高めて血流を改善することで腰痛を緩和できます。仰向けになった状態で片足を抱え、もう一方は伸ばすストレッチや、両膝を抱えて前後左右に軽く揺れるストレッチを行ってみてください」
また、就寝時には寝姿勢に気を付けると、腰に負担がかかりにくくなる。
「膝の下にタオルケットを敷いて仰向けになったときに膝が軽く曲がるようにしたり、抱き枕を抱くなどして、横向きに寝かせてみてください。
腰痛を感じる場合、腰骨やその下にある仙骨が反っている傾向があるため、仰向けがつらいときは横向きに寝ると痛みが緩和され腰のストレスが軽減します」
“脱ゆとり教育”によるランドセルの重量化、そして運動不足による筋力の低下と、反対に激しいスポーツによる腰への強い圧力。成長期にある子どもの腰の痛みが慢性化しないよう、日頃から無理のない範囲で腰に負担をかけないようにすることが第一だ。
「間違った姿勢や対処が、腰痛の慢性化の原因になることも。子どもの体重や体の大きさに適した量の荷物を持たせたり、無理をしすぎた動きをしていないか見守ることが大切です」
KIDSNA編集部