【ノルウェーの子育て】男女平等文化が生んだ世界初の男性育休制度

【ノルウェーの子育て】男女平等文化が生んだ世界初の男性育休制度

さまざまな歴史や風土をもつ世界の国々では、子どもはどんなふうに育つのでしょうか。この連載では、各国の教育や子育てで大切にされている価値観を、現地から紹介。今回は、ノルウェー語の翻訳者として活躍している佐脇千晴さんに話を聞きました。

<連載企画>世界の教育と子育て

“イクメン”は存在しない。育児も男女平等に

今年2020年、世界経済フォーラム(World Economic Forum)による153カ国の「ジェンダー・ギャップ指数」調査で、日本が歴代最低の121位に対し、2位だったのがノルウェー。

男女平等先進国として注目されるこの国は、1978年に施行された男女平等法や、1981年の女性の初首相誕生を経て、現在のアーナ・ソールバルグ首相まで、女性の社会進出が進められてきました。

日本とノルウェーの公立小中学校に勤務したのち、現在は翻訳家として活動している佐脇千晴さんは、今日のノルウェーがあるのは、男性の育児参加の制度にあると話します。

「ノルウェーに“イクメン”という概念はありません。父親の育休取得が義務付けられているため、母親が仕事に行っている間に父親と赤ちゃんが2人だけで過ごす期間もあるほど。

父親たちは、保育園と幼稚園が一体化した『バーネハーゲ』と呼ばれる施設や小学校、習い事などの送り迎えもしますし、ベビーカーを押して散歩している光景もよく目にします。育児だけでなく、家事も男女平等のノルウェーでは、男性がキッチンに立つ姿も珍しくありません」
佐脇千晴ノルウェー語翻訳者。2008年よりノルウェー在住の3児の母。大学卒業後、中学教諭を経てノルウェー国立オスロ大学ノルウェー語コース全課程単位取得、学部単位取得退学。日本語非常勤講師を務める傍らノルウェーのドキュメンタリー映像翻訳や民話や絵本の翻訳に携わる。『3びきのヤギのブルーセ プールでおおさわぎ』(三元社)  『あかちゃんはどうやってつくられるの?』(河出書房新社)などがある。
佐脇千晴/ノルウェー語翻訳者。2008年よりノルウェー在住の3児の母。大学卒業後、中学教諭を経てノルウェー国立オスロ大学ノルウェー語コース全課程単位取得、学部単位取得退学。日本語非常勤講師を務める傍らノルウェーのドキュメンタリー映像翻訳や民話や絵本の翻訳に携わる。『3びきのヤギのブルーセ プールでおおさわぎ』(三元社) 『あかちゃんはどうやってつくられるの?』(河出書房新社)などがある。

世界初のパパ・クォータ制

ノルウェーでは1977年から男性の育児休暇制度が導入されましたが、1990年代の取得率は4%と低く、皆無に等しいものでした。そのような状況を見かねた政府は、1993年に父親の育児休暇を4週に定めた世界初のパパ・クォータ制を導入します。
※写真はイメージです(LightField Studios/Shutterstock.com)
※写真はイメージです(LightField Studios/Shutterstock.com)
「パパ・クォータ制とは、父親の育児休暇を、母親と同様に割り当てる制度。割り当てられた休暇をとらなければその期間の権利は消滅するということから、誰もが積極的に休暇を取るようになり、2019年の男性の育児休暇取得率はノルウェー全体で71%、一番高い取得率だったのはソグン・オ・フィヨラーネ県で76%でした。

現在は15週間パパが育児休暇を取得できるようになっていて、両親の育児休暇を合わせると、最大でトータルで59週、およそ1年ほどが育児にかけられる時間となります」

ノルウェーの育児休暇制度は、出産3週間前から取得でき、期間については、49週と59週から選択することができます。育休期間の給与は、選択した期間によって異なり、49週では100%支給で、59週を選択すると80%が支給されるというしくみ。

「休暇中の給料は国から出ますし、育児休暇後の仕事復帰に関しても保障されていることが、父親の育休取得を後押ししています。出産や育児休暇を理由とした解雇や役職失職は法律で禁じられているため、男性が育児休暇を取りにくいということは起こりません」

育児休暇は父親、母親ともに、一度にまとめて取得する必要はないそう。子どもが3歳になるまでは、好きな時に好きな割合で分散して休暇をとることも可能なため、選択の自由があると佐脇さんはいいます。

育児に限らず職場でも男女平等

ノルウェーでは、パパ・クォータ制が始まる前の1988年、男女平等法が改訂されたタイミングでクォータ制が導入されました。

クォータ制とは、公的委員会・審議会が4名以上で構成される場合に、一方の性が全体の40%を下回ってはならないというもの。ノルウェーでは、性の割合を定めたクォータ制をベースに、社会全体に男女参画が広がっていきました。
※写真はイメージです(iStock.com/Jovanmandic)
※写真はイメージです(iStock.com/Jovanmandic)
「子育てに限らず、政治の世界も職場においても男女平等が浸透しています。職場の雇用は、男女比率が同率になるように採用しているほど。

子育て世帯は、共働きが一般的で、ほとんどのママパパが働いていますし、女性の社会進出率もとても高いんですよ。

一方で、家族優先のノルウェー社会では、幼い子どもを持つ親は時短勤務している人も多くいます。バーネハーゲも学童保育も遅くても17時には閉園してしまいますので、送り迎えを祖父母等に頼む場合以外は、仕事を早めに切り上げて帰宅する家庭も。

私自身も、生後1カ月の赤ちゃんのお世話をしながら働いていますが、育児が仕事に影響するということはあまり感じたことがありません。
※写真はイメージです(iStock.com/ferrantraite)
※写真はイメージです(iStock.com/ferrantraite)
オスロ在住の頃は小学校に勤務していましたが、バーネハーゲの送り迎えに支障がないように上司に勤務時間を考慮していただいていました。子どもが熱を出して急に仕事を休まなければならないときにも、文句を言われた経験はただの一度もありません」

また、ノルウェーでは、社会面のサポートも手厚く、妊娠から出産までの費用は分娩方法に限らず国が負担していると佐脇さん。待機児童はゼロ。選ぶことさえしなければ、入れないということは起こり得ないと言います。

自然の中に身を置く子育て方針

「絶景を眺めるフィヨルドをはじめ、森、湖、海に囲まれたダイナミックな自然に恵まれたノルウェーでは、1年の半分以上が冬のため、特にクロスカントリースキーなどのウィンタースポーツが盛ん。

逆に短い夏には湖や海で泳いだり、ハイキングやキャンプなど、涼しい夏と太陽の光を満喫しています。

また、人口が約500万人と少なく、娯楽施設も多くないため、ノルウェーの人々には自然の中で楽しく過ごす習慣が。1年を通して、天気が良ければ短い時間でも太陽の光を浴びたい、外で過ごしたいと思うのがノルウェー人の特徴です。

こういった背景から、多くの家族は、子どもも自然の中に身を置くことが大切だと考えています。
※写真はイメージです(iStock.com/SbytovaMN)
※写真はイメージです(iStock.com/SbytovaMN)
ノルウェーの子どもは、赤ちゃんの頃から、季節問わず冬でもお昼寝は屋外でするという習慣があります。マイナス15℃以下になると屋内に連れていきますが、基本的には、一年中、外で大型ベビーカーの中に眠っている赤ちゃんを目にします。

ノルウェーの保育施設『バーネハーゲ』でも、雨でも雪でも外遊びの時間をたっぷりと取るのが特徴です。

施設によっては1日中外で過ごす日を設けていたり、屋外バーネハーゲというものも存在しており保護者からも人気です。
※写真はイメージです(iStock.com/Nadezhda1906)
※写真はイメージです(iStock.com/Nadezhda1906)
また、ノルウェーの人々は、7月になると2週間~1カ月のサマーホリデーを取得して家族や友人と過ごすのが一般的。海外に旅行する人もいますが、サマーハウスやキャビンで家族や友人と過ごすのを楽しみにしている人が多くいます。親世代から代々受け継がれていくように、自然を愛する精神が子どもたちに育まれていくのです」 

<取材・執筆>KIDSNA編集部

2020年06月15日

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