子どもの力を伸ばすには「夫婦」の相互理解が重要【高濱正伸】

子どもの力を伸ばすには「夫婦」の相互理解が重要【高濱正伸】

2022.03.10

Profile

高濱正伸

高濱正伸

花まる学習会代表

1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

これまで以上に不確実な時代を生きる子どもたち。長年教育現場に携わり、多くの親子を見続けてきた花まる学習会代表・高濱正伸先生に、親子が直面するさまざまな課題に対し、親としてどう考え、どのように子どもと関わっていくべきか語っていただきます!今回のテーマは「子育てと夫婦問題」についてです。

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高濱先生:

子どもの教育について深く考えていくと、結局は夫婦問題に行きつきます。避けては通れません。

私が花まるをつくったのは、学力はもちろん、子どもが持つ本来の力を伸ばしたいと思ったからです。

そのためにさまざまな野外体験や教材を考えてきましたが、かつての私は「こうすれば子どもは伸びると分かっているのに、なんでこんなにうまくいかないのだろう」と典型的な男性的考え方をしていました。

しかし、全国各地で講演会を重ね「お母さんたちは追い込まれている。それは夫婦関係がうまくいっていないからだ」ということに気が付いたのです。

子どもを伸ばすには、いちばんは「親という関数を変えなければ意味がない」ということが分かりました。

まず、子どもにとって母親は太陽のような存在です。

子どもはお父さんもきょうだいももちろん大好きですが、母親はレベルが違う偉大な存在。お母さんの笑顔が子どもの安心感につながるので、子どもがすこやかに育つためには母の笑顔が何より重要です。

ところが、世のお母さんたちは、子どものことだけでも手一杯なのに、話が通じない「夫」という存在が目の前にいて、「夫は子どものことも私のこともちっとも分かってくれない」といらだっていますよね。

一方の夫は「仕事もちゃんとしているのに、なぜ妻からこんなに不満ばかり言われなければいけないのか」と妻に嫌気がさし、家に帰ることすら憂鬱に感じている人もいます。

可憐な女性だった恋人から、母親となり、たくましくならなければいけなくなった妻たちに対し、世の夫たちは無理解ですし、逆も真で「男は分かっていない」と夫のこと切って捨てる女性も多いですよね。

夫婦に限らず、同性、同級生、同じ部活同士であっても、価値観の相違はあるもので、言葉で理解し合うのは簡単ではありません。

むしろ、はじめから「相手が悪い」と責めている状態で議論を始めても、いよいよどつぼにハマり、平行線をたどるのはみなさんご存じのとおりではないでしょうか。

結婚生活は恋愛関係の頃の「ラブ」だけでやっていくのは困難で、「家族として一緒にやっていこう」と決意し、相手のことをちゃんと理解しなければいけません。

この状態を打破するのが、「パートナーを笑顔にするための自由研究」です。

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具体的な方法ですが、どういうときに妻が心の底から笑顔になっているかを些細なことでもチェックする。そしてそれはなぜかを自分なりに研究する。これをひたすら続けます。

うちの妻の場合、3、4才歳下の双子の弟たちを母親代わりにお世話していた経験から、実の母親のような気持ちで彼らに接しています。

その愛しい弟たちのことを私が話題にすると実にいい笑顔になります。妻が心から愛してかわいがっているものを自分も愛してかわいがるのです。

ほかにも、高級品ではなく、彼女の好きなあんみつをお土産にしたときのほうがいい笑顔になるのはなぜか?

「あんみつが好きだから」「妻というのはお土産を喜ぶもの」では浅い。

これに関しては、ほかのお母さんに聞いて納得したのが、「仕事人間の高濱先生が「仕事の合間に「これは妻が好きだったな」と奥さんのことを思い出した、その心の動きが好きなんですよ」というもの。

妻にとっては「パートナーが自分のことを考えて思ってくれた時間が存在した」ということが重要だったのです。

こういうことが分かると、「相手のことを思うことが大切なんだな」と、応用も利くようになります。日々「これは妻が喜ぶかな」という思いがあるだけで随分違います。これは男性にはなかなか理解できないかもしれません。

もちろん、妻側も夫の自由研究をすべきです。応援しているサッカーチームがあるなら「今日勝ったね」と言ってあげるだけで喜ぶかもしれません。

パートナーでい続けたいのであれば、相手が「なぜそう考えるのか」を研究し続けなければいけません。

研究をかさね、お互いがお互いの心が震える部分、反応している部分、大切にしている部分をきちんと理解すれば、折り合いがつくようになります。

「どちらが先にするの?」と思う方もいるかもしれませんが、相手を変えたければまず自分から。率先してやれば心理的にもとても有利になります。

私は長年この研究を続けているからこそ、今でも妻とは出がけにハグをするほど仲良しです。

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1959年熊本県人吉市生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年「花まる学習会」を設立。「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、現在も現場に立ち続ける。2020年から無人島プロジェクト開始。ニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー/日本棋院理事/算数オリンピック作問委員/「情熱大陸」などTV出演多数

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