子どもに愛を伝えたければ「全脳」を満足させなさい【高濱正伸】
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これまで以上に不確実な時代を生きる子どもたち。長年教育現場に携わり、多くの親子を見続けてきた花まる学習会代表・高濱正伸先生に、親子が直面するさまざまな課題に対し、親としてどう考え、どのように子どもと関わっていくべきか語っていただきます!ラストとなる今回のテーマは「最高の愛情」です。
高濱先生:
愛情の形はそれぞれなのでたくさんありますが、今回は二種類ご紹介します。
ひとつは「全脳満足」です。
人間の脳はかなりざっくりとですが、感情や記憶、自律神経など、 生命維持や本能行動に関与している中心の大脳辺縁系と、考えたり決めたりする外側の大脳皮質に分かれます。
AIを作る、ロケットを飛ばす、膨大な知識を記憶する、論理的思考などはすべて外側の大脳皮質がつかさどり、ここが発達しているほど「優秀」「頭がいい」といわれています。
一方、中心部分は「頭では理解できるけれど腹立たしい」「許せない」といった感情をつかさどっています。
この「原始的な部分も含めて人間である」と理解しなければ、一面的な子育てをしてしまう可能性があります。
たとえば、お子さんに「ほしいものは全部買ってあげたでしょ!」という言い方をする方がいますよね。
この言葉ほどすべてを台無しにする言葉はありません。
「金に糸目をつけずに買ってあげた」というのは、外側の大脳皮質では「高いものを買ってもらった」と理解しますが、脳の中心の大脳辺縁系は温まっていない状態です。
乳幼児がむずかっているのを「言葉で言って聞かせよう」とするのも完全に同じ考え方で、その子は本当は、ただギューっと抱擁してほしいだけなのです。
子どもって理由などなくても、スリスリしたり、よじのぼってきたりしますよね。くっついて体温を感じ合うことでほっとして、脳の中心部を満たしているのです。
もちろん、勉強もしなければいけませんが、知識だけではなく、愛やぬくもりを与えて脳全体をハッピーにしてあげなければいけない。
これは何歳になっても同じで、大人だって誰かに抱きしめられたい時はありますよね。
高いお金をかけたり、ブランド品を与えたりすることは、あくまで脳の外側の満足にしかつながらない。
子どもを育てるときには、肝心要の愛し合うことで全脳を満足させることがなにより重要です。
次に、いつも講演会でもお話ししているのが、「愛はひいき」だということ。
人間は究極的には「誰よりもいちばんに好かれている」ということを欲しています。
「誰よりもあなたが好き」という人が世界にひとりでもいることで、人は自信を持って生きていけるもの。
親というのは、たとえわが子が勉強ができなくても、いろいろと至らなくても、レベル違いに愛しいものですよね。
とはいえ、きょうだいがいると「弟にだけ甘い」「私がいちばんじゃない」といったきょうだい間格差もおきがちです。
「いちばん愛されている」と思って生きていたいのは人間の根源的な部分だと理解し、親として1日5分でいいので、お子さんひとりずつの時間をつくってあげてくださいね。
2022.03.24