絵本専門士がおすすめ! 子どもの想像力を広げる世界の絵本10冊

絵本専門士がおすすめ! 子どもの想像力を広げる世界の絵本10冊

子どもに絵本を選ぶ際に、「定番ばかりじゃなく、ちょっと変わった絵本や隠れた名作なんかも読み聞かせてあげたい」「でもじっくり絵本を選ぶ時間がない」と悩んでいるママ・パパも多いでしょう。 そこで、絵本専門士として活躍する西 小百合さんに、世界の絵本からおすすめ作品を紹介してもらいました。

絵本専門士とは、絵本についての豊富な「知識」「技術」「感性」を身に着けた、いわば “絵本のスペシャリスト” です。
国立青少年教育振興機構が認定する資格で、これを取得した人は全国各地で読み聞かせやおはなし会、ワークショップなどを開くなど、子どもたちが絵本に親しむ場を広げています。

 参考:国立青少年教育振興機構「絵本専門士」

そこで今回、絵本専門士の方に「KIDSNA STYLEの読者と子どもたちにおすすめしたい世界の絵本」を10冊ご紹介してもらいました!
子どもの好奇心を刺激する絵本、学びのある絵本、感性を育む絵本など幅広いものをピックアップしてくれたのは、富山県・射水市大島絵本館に勤務する絵本専門士、西 小百合さん。
ご自身の絵本体験も交えて、それぞれの作品の魅力や見どころを教えていただきましょう。


絶対に読んでほしい! 絵本専門士・西さんの “世界の推し絵本” 3冊

1冊目 『あおい よるの ゆめ』

『あおい よるの ゆめ』表紙
作・絵:ガブリエーレ・クリーマ/訳:さとう ななこ/ワールドライブラリー/1,980円(税込)

【内容】イタリアの作家ガブリエーレ・クリーマによるしかけ絵本。「ちいさなゆびで」と副題があるように、子どもが絵を指でスライドさせるとあら不思議、夜空に星がきらめいたり、窓にあかりが灯ったり……0歳から親子で楽しめる1冊。

西さん これは、今回ご紹介する中ではいちばん小さい子向けで、ページの穴に指をはめて動かすと、絵が変わるという絵本です。チューリップを育てたり、街にあかりを灯したり、船を動かして南の島に行ったり ── 小さな指でもいろんなことができるね、ということを親子で楽しめます。視覚の変化があるので、小さなお子さんにも大人の方にもよろこんでもらえます。実際に読み聞かせすると、お空に虹がかかるページでみなさんがいちばん「わあっ!」と言うんです。自分の指で虹を描いたように感じるみたい。絵もすごくきれいで、イタリアの絵本のせいか色合いが日本のものとは少し違います。それと、日本では一般的な飛び出すタイプのしかけ絵本だと、小さいお子さんが触るのはちょっとはばかられるかもしれませんが、これはページに厚みのあるボードブックで丈夫だし、角が丸くなっていたりして、その点も小さいお子さん向けにやさしく作られているなと感じます。

おすすめポイント:0歳から楽しめて、指を使って視覚的な刺激を得られる

2冊目 『どうぶつにふくをきせてはいけません』

『どうぶつにふくをきせてはいけません』表紙
文:ジュディ・バレット/画:ロン・バレット/訳:ふしみ みさを/朔北社/1,320円(税込)※この絵本は現在品切れ重版未定となっております。

【内容】アメリカで人気の絵本。ヤマアラシ、ラクダ、ヘビ、ブタ、ニワトリ、キリン、ゾウ……普段は裸のままの動物たちに、服を着せたらとんでもないことになっちゃった! 子どもはもちろん大人も一緒に声を出して笑ってしまう、ユーモラスな1冊。

西さん ちょっとナンセンスな絵本で、表紙から笑えます。内容は、タイトルと同じ「どうぶつに ふくを きせては いけません なぜなら…」から始まって、ヤマアラシはとんでもないことになり、ラクダは帽子を乗せる場所を間違え、ブタはひどく食べこぼし、ニワトリはややこしいことになります。ストーリーより絵を楽しむ本で、お子さんは「次は何が出てくるのかな」という想像力を刺激されるようです。読み聞かせると、「なんか、へーん!」とか「こんがらがってる!」と笑いが起きますね。動物の絵本って、日本だとイヌ・ネコ・クマなどが王道だと思うんですが、この絵本ではセイウチやフクロネズミなど、日本とはチョイスが違うところも面白いと思いませんか? 動物がキャラクター化・擬人化されていなくて、それが余計にシュールでおかしさを増します。

おすすめポイント:ページをめくる前には想像力が、めくった後には驚きと笑いが広がる

3冊目 『すいかのたね』

『すいかのたね』表紙
作:グレッグ・ピゾーリ/訳:みやさかひろみ/こぐま社/1,210円(税込)

【内容】スイカが大好きなワニが、うっかり種を飲み込んでしまった! おなかの中でどうなっちゃうのか、いろいろ想像してパニックに ──「たすけてー」と叫んだら、さあどうなる⁉ セオドア・スース・ガイゼル賞(ドクター・スース賞)受賞のアメリカの人気絵本。

西さん 私はスイカが大好きで、個人的にスイカの絵本をチェックしているんですけど(笑)、これもその1冊です。スイカの種を飲み込んじゃった経験、みなさんありますよね? このワニもうっかり飲み込んでしまうんですが、おなかの中で育っちゃうかも、体がスイカ色になっちゃうかも、といろいろ考えるんです。大人は「種の1個や2個、飲み込んじゃっても大丈夫」となりますけど、お子さんは「どうなるんだろう」って悩むんですよね。中には「頭から生えてくるよ!」なんて声をかけてくれる子もいたりします。ワニが「だれかたすけてー」と叫ぶところで、子どもたちは一瞬シーンと静まってしまうんですけど、結末で「よかったー!」というほっとした空気になるんです。まるで自分が種を飲み込んだワニになった気持ちで、一生懸命想像をめぐらせているんですよね。シンプルな絵本ですが、ワニの顔もかわいくて表情が豊かなので、小さいお子さんにもおすすめします。

おすすめポイント:誰しも経験があるハプニングについて考えることで、脳を刺激する

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『シナの五にんきょうだい』

『シナの五にんきょうだい』表紙
作:C・H・ビショップ/絵:クルト・ヴィーゼ/訳:川本 三郎/瑞雲舎/1,388円(税込)

【内容】むかしシナの国に、それぞれの特技を持つ5人兄弟がいた。海の水を飲みほせる者、どこまでも足をのばせる者、いつまでも息をとめられる者 ── その力で窮地を切り抜ける! 中国を舞台にしたアメリカ発の絵本。

西さん そっくりな顔をした5人兄弟のいちばん上の兄さんが、ひょんなことから罰を受けることになりました。兄さんを助けるために、兄弟たちは自分の特技を使って役人を翻弄します。お子さんは「くりかえし」が盛り込まれた絵本が大好き! 「もう1回」とリクエストされることが多い1冊です。

おすすめポイント:「くりかえし」が好きな子どもの欲求を満足させる

『実物大!世界のどうぶつ絵本』

『実物大!世界のどうぶつ絵本』表紙
作:ソフィー・ヘン/訳:藤田千枝/あすなろ書房/1,980円(税込)

【内容】ベンガルトラの口、ゾウの爪、ダイオウイカの目、キリンの舌など、22種類の動物のある部分を実物大の絵で紹介する。表紙のパンダも実物大で、「こんなに大きい(小さい)んだ!」と驚きと発見いっぱいのイギリス発の大判絵本。

西さん 写真の図鑑はたくさんありますが、これは実物大をページからはみ出る大きさの絵で描いているのが面白い。ホッキョクグマの手とハイタッチできたり、ベンガルトラの大きく開いた口に身をすくめたりして、読むことが好きではないお子さんもこれには食いついてくれます。

おすすめポイント:本好きではない子も、興味や意欲を刺激される

『せかいでさいしょのポテトチップス』

『せかいでさいしょのポテトチップス』表紙
文:アン・ルノー/絵:フェリシタ・サラ/訳:千葉茂樹/BL出版/1,650円(税込)

【内容】いつもお客さんいっぱいのクラムさんのレストランで、ある日ひとりの紳士がポテトを注文する。出されたポテト料理に次々とダメ出しをするお客さん。困ったクラムさんはどうする? アメリカの実話をもとに描く、カナダ発の絵本。

西さん クラムさんが最初に出した自慢のくし切りポテトを、お客さんの紳士は分厚くて味がしないと突き返します。そこで塩をたっぷり振って出したら、また突き返されて…。子どもも大人も大好きなポテトチップスの誕生の経緯に、へえ~と思います。クラムさんと紳士のやりとりが面白いです。

おすすめポイント:子どもが大好きな食べものに関する実話で興味をかきたてる

『あめだま』

『あめだま』表紙
作:ペク・ヒナ/訳:長谷川義史/ブロンズ新社/1,650円(税込)

【内容】ひとりぼっちの男の子・ドンドンが手に入れたのは、なめるとソファや犬の声が聞こえる不思議な6つのあめだま。その声を聴くうちに、彼は自分が一人ではないことに気づいていく ──。韓国の人気絵本作家による心温まる物語。

西さん これは絵じゃなくて、紙粘土で細かく作った立体の人形を丹念に撮影していて、絵本としてとても凝っています。お話は「ぼくは ひとりで あそぶ」という始まりだけれど、「ひとり」じゃなくなる結末にほっとします。そんなドンドンと自分を重ねちゃうお子さんもいるかもしれませんね。

おすすめポイント:自分はひとりじゃない、さまざまな愛に囲まれていると気づかせてくれる

『夜をあるく』

『夜をあるく』表紙
作:マリー・ドルレアン/訳:よしいかずみ/BL出版/1,760円(税込)

【内容】真夜中に母親から「やくそく、おぼえてる?」と起こされた姉弟は、家族で夜の中へ歩き出す。町を出て山に入ると、静けさの中で聞こえる虫の声、木々のざわめき……その先にある「やくそく」とは? フランスのエスプリ漂う1冊。

西さん 道に残っている昼間のあたたかさ、夜の暗さに目が慣れて少しずつ見えてくるもの、コオロギやカエルの鳴き声、草花のにおいなど、五感を刺激する要素がいっぱいの絵本です。真夜中を表現する青一色の絵が、最後に一変する構成が心憎く、印象に残ります。

おすすめポイント:夜の外出という非日常のドキドキワクワクの中で、五感が研ぎ澄まされる

『ぼくは川のように話す』

『ぼくは川のように話す』表紙
文:ジョーダン・スコット/絵:シドニー・スミス/訳:原田勝/偕成社/1,760円(税込)

【内容】吃音をもつ男の子は、クラス発表でもうまくしゃべれない。そんな息子を、父は放課後に川へ連れていく。泡立ち波打ち、渦を巻き砕ける川の水を指して父が言った言葉とは? 同じく吃音をもつカナダの詩人・スコットの実体験をもとにした物語。

西さん 障がいを抱えて悩んでいる男の子のお話です。彼の吃音を、「あわだって、なみをうち、うずをまいて、くだけていた」川になぞらえています。写実的な絵がすごくきれいで、特に見開きで描かれた川の音を聴いている男の子の表情から、自分なりに感じたことを大事にしたいです。

おすすめポイント:障がいに悩む心とそれに寄り添う気持ちをやさしく伝えてくれる

『おしえてくれる? わたしのなまえ』

『おしえてくれる? わたしのなまえ』表紙
文:ナイジェル・グレイ/絵:ベサン・ウェルビー/訳:もりうちすみこ/ゴブリン書房/1,760円(税込)

【内容】認知症のフィリスおばあさんと、おとなりの少女・グレースの間に育まれる友情の物語。フィリスはどんどんものごとを忘れていくが、グレースはやさしく寄り添う。子どもが「認知症とは何か」を知るきっかけにもなるイギリス発の1冊。

西さん 絵本の内容もどんどん多様化していて、これは認知症の女性が登場する絵本です。記憶をなくしかけていて、行動もちぐはぐしているフィリスと、そんなフィリスにさりげなく接するグレースの様子を、道徳の教科書っぽくなく、自然に描いているところがすてきだと思います。

おすすめポイント:多様性の中で、認知症、年の差を超えて相手にやさしく寄り添う姿を見せてくれる

2024.02.26

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