東京23区なのに最寄り駅まで徒歩40分…大江戸線「1600億かけて4km延伸」が"無駄"と言えない練馬の特殊事情
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東京都は都営大江戸線を練馬区北西部まで4km延伸する計画を発表した。事業費は1600億円にのぼり、「わずか3駅にそこまで必要なのか」と疑問の声もある。延伸は本当に必要なのか。フリーライターの宮武和多哉さんが、現地を取材した――。
「たった4kmに約1600億」は妥当か
都内を「6の字」状に結ぶ都営地下鉄・大江戸線(以下:大江戸線)の延伸計画が、東京都から公表された。たった3駅・約4kmの延伸に、約1600億円が投じられるという。

練馬区の北西部にある「大泉学園町」への地下鉄建設は、約50年前の資料にも明記されていた。にもかかわらず、たった4kmの地下鉄延伸は、なぜ今まで叶わなかったのか。いま事業費を投じる必要があるのか? 妥当性を探るべく、現地を10kmほど歩いて検証したところ……。
感想は「条件付きながら、地下鉄は必要だろう」。23区内なのに最寄り駅まで徒歩約40分かかる場所すらある「陸の孤島」エリアの実態を歩いて探りつつ、延伸における今後の課題も探ってみた。
まずは、「大江戸線延伸」の歴史を振り返ってみよう。練馬区北西部への地下鉄延伸の検討が明らかになったのは、1972年のこと。当時の運輸省が直轄する「都市交通審議会」の答申第15号に「12号線・大泉方面に延伸検討」と記されている。
この答申書で妥当性を認められた鉄道路線は、予算の見込みがつき次第、着工される。審議会はいわば「鉄道建設のお墨付き」を出す機関であり、おなじ答申書に記載された「1号線」(のちの北総鉄道など)「7号線」(のちの東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道)などは、その後数年~十数年で開業に漕ぎつけている。
念願の鉄道も、漂う「今更感」
12号線は、石原慎太郎・東京都知事(当時)の推薦で「大江戸線」と名称が付与され、1991年から順次開業していった。しかし、光が丘駅から大泉学園町間までの建設は、はさっぱり話が進まず……。

後から答申に追加された路線が続々と開業を果たす中、光が丘駅~大泉学園町駅間は、2025年になってようやく、都から計画が公表された。予定ルート周辺では「間もなく地下鉄が開通しますから!」といった不動産屋の甘言で、家を建ててしまった方も多く、若干の「今更感」が漂っているという。
大江戸線の延伸ルートである練馬区北西部は、最寄り駅である西武池袋線・大泉学園駅、東武東上線・朝霞駅がいずれも3km程度離れており、23区内随一の「鉄道空白地帯」だ。ここに大江戸線が延伸されると、どうなるのか? 生活は便利になるのか? ……そんな街の歴史と現状を知るため、サクっと数kmウォーキングしながら、街を観察してみよう。
大泉学園町をはじめとする一帯のエリアは、経営者・堤康次郎の先導で、氏が社長を務める「武蔵野鉄道」(現在の西武鉄道の源流)によって、1923(大正14)年から開発が行われた。





























