「社員から不満が聞こえてこない」は危険のサイン…「SNSに批判投稿→会社炎上」の前に上司がやるべきこと
問題は「文句を言わない部下」ではなく職場環境
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職場の雰囲気を良くするにはどうすればよいか。特定社会保険労務士の濱本志帆さんは「社員間に不公平があると、不満や不信感が募って雰囲気が悪くなる。上司や経営者は社内の公平感に敏感になって、部下が過ごしやすい環境を作るべきだ」という――。(第1回) ※本稿は、濱本志帆『リーダーの傾聴』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
有休を取っただけで嫌がらせを受けることに…
社長や上司の皆さんは、社員に対して分け隔てなく接することを意識されていることと思います。
ただ、「等しく対応」とは、単に全員を横並びで同じ処遇にすることではありません。
優秀な社員に高い報酬を与えることや、成果に応じた待遇の差が生じるのは理に適ったことであり、むしろモチベーションを高めることにもつながります。
しかし、そこに「恣意的な判断」や「個人的な好みによる特別扱い」が混ざってくると、社員は不満を抱きやすく、トラブルの原因となります。
全員に等しくとは、「特別扱いを極力なくすこと」を意味します。
もちろん、人間である以上、バイアスを完全に排除することは難しいでしょう。だからこそ、「極力」という表現になります。
特別扱いせざるを得なくなったことが原因でいじめに発展したケースがあります。
その会社では、有給休暇を冠婚葬祭などの特別な場合のみ認めており、社員も有休を申し出ることはほとんどありませんでした。
ところが、ある社員が入院したときに限っては、やむを得ず有休の使用を認めました。
しかしその後、当該社員が通院のために有休を申請してきた際、会社側は「欠勤扱いにしたい」と考えていました。
ただ、その社員が労働基準監督署に相談したことで、会社は有休の使用を認めざるを得なくなりました。
この対応をきっかけに、ほかの社員からは「特別扱いだ」と反感が広がり、当該社員は職場で嫌がらせを受けるようになったと主張します。
そして会社側は、協調性に欠けるとして最終的にその社員を解雇するに至りました。
「特別扱い」が会社を崩壊させる
もしかすると、ほかの社員たちは、自分も有休を使いたいと思いながらも、空気を読んで我慢していたのかもしれません。
そもそも有休の利用目的は社員の自由であるところ、冠婚葬祭のみとする会社独自のルールのもとで、法定通りの権利行使をした社員が「特別扱い」と周囲に受け取られていじめに遭ったものと思われます。
解雇された社員による法的手段は、「法が認めた権利行使をしただけの自分」をいじめた社員と、そうした状況に何もせず、自分を解雇した会社への抗議とみられます。
このケースでは、いじめを行った側の社員が懲戒処分の対象となる可能性もあるため、会社は二重のトラブルリスクを抱えることになります。
あるいは、特別扱いを知ったほかの社員が不公平感から態度を悪化させて問題社員化する可能性も考えられます。
全員に等しく対応することは、単に合法か違法かといった法律上の正しさだけでなく、「職場の安定」と「信頼関係」を守るうえでのリスク管理の観点からも影響が強いといえそうです。
全員に一律に適用するなら、違法な労務管理でもよいといっているのではありません。重要なのは「一貫性」です。
就業規則が定められていて、規定に基づいた労務管理が行われていること、さらにその事実が社員に認知されていることが公平感の基盤となります。
そして、一貫性を維持するためには必然的に「法に適合したルール」に基づくことになります。





























