昨日までは普通に働いていたのに…真面目な部下が「言ってもムダだ」と会社に愛想を尽かした決定的瞬間
社員が去っていく会社の共通点
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なぜ最近の若者は突然会社を辞めるのか。特定社会保険労務士の濱本志帆さんは「会社が人事評価をする一方で、社員も会社を評価している。根拠に乏しい配置転換や、ギスギスした人間関係の放置は、離職のきっかけになる」という――。(第2回) ※本稿は、濱本志帆『リーダーの傾聴』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
人事評価の裏で社員は会社を評価している
会社は、社員の勤務態度やパフォーマンスを評価して待遇を決定します。
ただ、「待遇」と一言で言っても、それは給与手当の金額に留まらず、労働条件や配置転換、注意指導や業務命令まで、その他のさまざまな人事や処遇の決定が使用者の評価に基づいて行われています。
明確に人事評価制度として導入されていない会社においても、社長の頭のなかでは社員の評価が行われているはずです。
しかし、そうして決定された労働条件などを社員はただ黙って受け入れているわけではありません。
言葉には出さずとも、社員のほうもまた、会社を評価しているのです。
雇用保険料を財源とする国の助成金制度には、職場の労務管理の改善や、社員のスキルアップを後押しすることを目的とした支援があります。
しかし、制度上の要件を満たすために現場の理解が得られないまま取り組みを導入した結果、社員にとってはやることが増えて負担感が先に立ってしまうようなケースも見られます。
このようなとき、社員の会社を見る目は厳しくなります。かえって社員のモチベーションを落とすことになったら、何のための助成金か分かりません。
賃金カットで始まる社長への不信
また、ある会社で給与体系に出来高制が導入されたときのことです。
社員Aさんは、使用者から「仕事量が増えるので、実際の手取りは増えることになる」と説明されていました。ところが、実際にそのようなことはなく、Aさんの手取りは減少しました。
納得できないAさんは、退職して会社を訴えました。
「退職」と「提訴」という手段は、Aさんの会社に対する評価の結果です。
評価はときに不満という形で表れる。そんな事例もご紹介します。
ある日の朝礼で、業績悪化を理由に社員全員の給料を一定額カットするとの発表が社長からなされたときのことです。
全員が肩を落としながら朝礼の部屋から出てきたところで、一人の社員がぼそっとつぶやきました。
「社長の外車売ればいいのに」
この一言からは、「社長は痛みを引き受けていない」「率先して責任を負わずに社員の賃金カットを先にするなんて納得できない」、そんな気持ちが読み取れます。
このとき、社長が自身の役員報酬をどれだけ減額したかは不明です。
そのようなところまで財務諸表をオープンにするべきといっているのではありませんが、社員は納得して会社の決定を受け入れるかどうか、会社や社長のどのようなところを見て判断しているのかを痛切に感じさせる一例です。





























