ネトフリにもYouTubeにもこれはできない…「テレビ離れ」の大逆風の中でテレビ局に残された最後の武器
ただし本業であるリアルタイムの放送を圧迫する可能性
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テレビはもう“オワコン”になのか。元NHKアナウンサーでウェブ小論文塾代表の今道琢也さんは「さまざまな産業で『マス型』から『パーソナル型』の移行が進む中で、テレビ産業はその移行が難しく、限界を迎えつつある」という――。(第3回) ※本稿は、今道琢也『テレビが終わる日』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
テレビ番組よりもYouTubeが人気のワケ
個人個人が動画を制作し、その中から個人個人が自分の好みに合った動画を選んで見る──。
今起きていることは、言うなれば「メディアのパーソナル化」です。「数社のテレビ局が、何百万人、何千万人に向けて番組を一斉に流す」、という時代から、「何百万、何千万の個人が番組を発信し、その中から自分に合ったものを選ぶ」、という時代への転換です。
かつて動画の制作と配信は、テレビ局だけが可能でしたが、スマホやパソコンを使って誰でも気軽にできるようになりました。そして、テレビ局が制作した番組よりも、個人が制作した動画を、人々は好んで見るようになっています。
一般の人だけでなく、歌手、お笑い芸人、文化人など、これまでマスメディアで活躍してきた人たちも次々と個人のチャンネルを立ちあげています。これは、メディアのあり方が、「マスメディア」から、「パーソナルメディア」へと変わりつつあることを示しています。
このような、「マスからパーソナルへの移行」は、テレビ業界に限った話ではありません。人々の生活が向上し、社会が成熟してくると、嗜好やニーズは多様化していきますから、どのような業界でも起こりうることです。
マス型→パーソナル型への移行
学習塾を例に取ってみると、昔は教室に生徒を集め、みんなが同じ授業を受けるという形式が主流でした。しかし、最近では「個別指導」が大はやりです。
「個別指導」では、教室を細かいブースで仕切り、それぞれのブースで子どもが自分の課題に取り組みます。先生は巡回しながら、一人一人に指導をしていきます。学習塾というビジネスモデルが成熟し、少子化によってむしろ飽和気味になってくると、よりきめの細かい指導としてこのような「個別指導」が人気を集めるようになりました。
10人子どもがいれば、10人とも学習進度や苦手分野が違うのですから、保護者が、個別に手厚い指導を受けさせたいと考えるのは当然のことでしょう。みんなが同じ授業を受ける「マス型」の指導から、個々人の特性を見極めて指導する「パーソナル型」の指導への転換です。