どうやってトランプと「ディール」すればいいのか…ハーバード式交渉術が「正解」を世界に示す要注目の展開

どうやってトランプと「ディール」すればいいのか…ハーバード式交渉術が「正解」を世界に示す要注目の展開

約3200億円の助成金をカタに取られても…基金7兆円の強さ

【前編】トヨタでもサントリーでもない…ハーバード大学経営大学院が教材にする社員850人の日本の同族経営企業 トランプ大統領とハーバード大学の対立は新たな局面へ。7月21日には、ハーバード大学が助成金差し止めを巡りトランプ政権を訴えた裁判の口頭弁論が予定されている。『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか』(中公新書ラクレ)の著者・佐藤智恵さんは「ハーバードには確立した交渉術があり、双方が納得する形で早期に妥結するのではないか」という――。〈前編〉から続く。

なぜハーバード大をターゲットにしたのか

――2025年3月から現在までのトランプ大統領とハーバード大学の対立をどのように見ていますか

【佐藤智恵、以下・佐藤】助成金の凍結については、十分ありうる政策だと思っていましたが、留学生受け入れ資格停止措置が発表されたときは、本当に驚きました。まさか日本人留学生に直接、影響が出るような措置に踏み切るとは思ってもいませんでしたから。この措置が発表されたのは5月22日(米国時間)。ちょうどハーバード大学経営大学院の学生たちが研修旅行で来日している最中だったので、「無事に帰国できるだろうか」と心配になりました。

トランプ大統領とハーバード大学の対立は、「トランプ大統領が極端な措置を発表する→ハーバード大学が裁判所に訴える→措置が一時差し止めになる」といったことが続いていますが、法廷闘争と平行して、水面下で交渉も続けていると思います。長々と法廷闘争を続けても、双方にとってメリットがないので、早期に妥結するのではないでしょうか。

――トランプ大統領はなぜハーバード大学をターゲットにしたのでしょうか。

【佐藤】トランプ大統領がハーバード大学をターゲットにする理由について、メディアでは「エリート」対「反知性主義」といったイデオロギーの観点から分析されていることが多いですが、私は交渉学の観点からもっと単純に考えていて、「ハーバード大学とディールをするとトランプ大統領の得になるから」だと思っています。

ではどういう得になるのか。主に3つあります。まず1つめは、「ハーバード」を叩くとニュースで大きく取り上げられることです。日本でもハーバードを冠した記事はよく読まれますが、アメリカでも同じです。トランプ大統領が日々、気にしているのは、自分のニュースがいかにメディアで大きく取り上げられるか。それが支持者へのアピールになるからです。しかも、大統領選挙でCMを流せば、巨額の広告費がかかりますが、ニュースに取り上げられれば、「無料」。これほど費用対効果の大きな広告はありません。

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写真提供=中央公論新社 『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか』(中公新書ラクレ)を刊行した佐藤智恵さん

主要国との関税交渉であえて極端な要求をしているのも、極端な数字を出せば出すほど、大きなニュースとして取り上げられるからです。ハーバード大学に対して極端な要求をするのも同じ論理です。つまり、自らが発表した施策が大きなニュースになればなるほど、無料の宣伝ができて、支持者は喜ぶ。それで目的の半分は達成したことになります。あとは、1対1の交渉に持ち込んで、自分の望むものをもらえればよいわけです。

2つめは、他の大学への影響力です。ハーバード大学は最も潤沢な資金を持つ大学ですから、ここがどう対応するかを全米の大学が注視しています。全部の大学をターゲットにせず、最初にピンポイントでハーバード大学とディールをすれば、他の大学も追随する可能性が高いので、効率がよいのです。

3つめは、ハーバード大学に圧力をかけて、交渉に持ち込めば、自分にメリットのあるものを得られること。ハーバード大学には莫大な資金力と人脈があります。ディールをするときは、さまざまな交渉材料を遡上そじょうにのせます。何がのっているかはわかりませんが、留学生の情報だけではないのは確かです。ハーバード側が提示する交渉材料の中にトランプ大統領がほしいものが必ずあるはずなのです。

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2025.07.11

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